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夏になる頃へ  作者: masaya
二章 from sky
92/112

19.7

どこか懐かしい彼女の後姿はどこか活気がなかった。今更ながら自分が口にしてしまった申し出に戸惑ってしまう。見ず知らずの女の人に「話しに付き合ってくれないか?」と、以前の自分ならありえない言葉である。きっと、少しばかり自暴自棄になってしまっていたのだろう。好きになりかけの人と彼女が楽しそうに話をしている場面を見てしまえば普段、口にしないようなことも言ってしまうことは仕方のないことだろう。うんうん。と、誰に言い聞かせるわけもなく自己解決していると視線を感じたため顔を上げる。と、彼女と目が合い彼女も驚いたのかつい、口を開く。

「わっと!ご、ごめんなさい。なんだか私が知ってる友達も突然、頷いたりする人がいて・・・なんか、似てるなって思っちゃって」

あはは。と彼女は気まずそうな笑みを浮かべる。何となくだけど、友達という言葉にどこか寂しさを感じてしまう。なんとなく、本当になんとなくだけれど本心じゃあない言葉に感じた。分からないけれど。彼女の笑みにかなでも薄っすらと笑みを浮かべる。どこか同じ感情(ふんいき)を感じてしまう。

「あの、ここでお話しましょうか?ちょうどベンチもあるし自動販売機もあるし。私、飲み物買ってきますね。何がいいですか?」

「あ、私・・・お財布持ってきてないので・・・遠慮しま」

「ここは私の奢りってことで!」

かなでの言葉を遮るように彼女は先ほどとは違い明るい笑顔を浮かべる。優しい笑みなのに有無を言わせないような威圧感も感じてしまう。けれど、かなでは彼女のそんな言葉づかいが懐かしくも感じていた。全然、会ったこともなければ話したこともない女の人。きっと年齢は同い年か一つぐらい上だろう。本当は年齢も聞きたかったがそこまで親しくもなかったためぐっと出てきそうだった言葉を飲み込み、

「じ、じゃあ・・・ミルクティーをお願いします。」

「分かった。ミルクティーだね!すぐに戻ってくるから」

「あ、はい・・・ありがとう」

かなでの言葉(おれい)を聞くと再度、にっこりと微笑み小走りで向かったかと思えばすぐにこちらに戻ってくる。あまりの早業につい、笑いがこぼれてしまう。

「ん?何か面白いことでもあったの?」

「あ、いや。えっと・・・」

かなでが言葉に詰まると彼女は何に対して言葉が詰まっているのかすぐに感じ取ったのかああ。と、頷き軽い会釈とともに

「私は平木紫穂って言います。紫穂って呼んでくださいね」

「あ、えっと・・・私は江宮かなでって言います。友達とかにはかなって呼ばれてます」

ぺこりと頭を下げる。すると紫穂は笑いながら口を開く。

「なんだか私たちって不思議な出会いですよね。名前も知らないのにお話をしようって言われて」

「ご、ごめんなさい」

「いやいや!謝らないでくださいよ。なんだか不思議だなって思って。確かに最初、かなでさんに声を掛けられた時は戸惑いもあったけど、でも、なんだろうな・・・」

少し眉間にしわを寄せ考えぴったりと当てはまる単語を思いついたのだろう。笑わないでね。と、前置きをした後、

「私となんとなく似ている気がしたんだ。外見とかじゃあなくて心?気持ち?って言えばいいのかな?あはは・・・私何言ってるんだろうね。まとまらないや・・・ははは」

苦笑する彼女にかなでは首を振り、

「そ、そんなことないです。実は・・・私も紫穂さんと同じような感覚だったんです」

かなでの言葉に紫穂も驚きながらも照れくさそうに笑う。

「なんだか不思議ですね。かなでさんとは昔どこかで会ったことがあるような懐かしい感じがします」

「私もそう思います。人の出会いって不思議ですね」

お互いに笑いあう。さてさて、本題の話しでも始めましょうか。と、言うときにテーブルに置いていた紫穂の携帯が震える。液晶に映し出されたのは秋鹿尋と言う名前であった。紫穂は無視をして話を始めようとしたが、かなではどうぞ。と、手を差し出すと頭を下げ椅子から立ち上がり窓際へと移動する。珍しい苗字もあるものだ。そんな風に思いながら紫穂を待っていると電話はすぐに終わったのかこちらへ戻ってくるなり、

「かなでちゃん。ごめん。」

「あ、用事ですか?それだったら、どうぞ行ってあげてください」

話をしたいことがある。と言いつつも何を話していいのか全く分からなかったかなではこのぐらいの距離感が丁度よかったのかもしれない。と、話し切り上げようとした。けれど、平木紫穂は一味違った。

「かなでさんも今から野球の見学に行かない?」

「へ?や、野球?」

唐突な申し出に思考回路はついていけなく、ついつい頭の上から声が出てしまう。

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