19.6
「そりゃあ・・・そうだよね」
彼女は窓ガラス越しに見える二人を眺めながら呟く。分かっていたこと、と。自分と彼との過去は結局、昔話であって、すでに二人の喜劇は終演している。きっとこれから先も物語が進展することなんてないことぐらい分かっていたはずなのに、どこかで期待してしまっていた。二人でカフェに行ったり映画に行ったり遊園地に行ったり・・・色々な願望が胸の奥から顔を出していた。ぎゅっと自分の腕を握り奥歯を無意識に強く噛んでしまう。どうしてそんな叶うことのない願いを抱いてしまったのだろう。諦めにも似た乾いた笑みが冷たいコンクリートの廊下に映る。彼女は車椅子を漕ぎ病室へ向かおうとする。と、悲鳴ほどではないが驚愕した声が耳に入って来たと思えば微量の衝撃が襲ってくる。体が少し揺れるほどの振動だったためただ、驚いていた。が、悲鳴を上げた女性はそうではなかった。車椅子に乗った女性にぶつかってしまった。と、言う現状に戸惑ってしまっているのかオロオロとしつつもすぐに口を開いてくる。
「ご、ごめんなさい!私、廊下を走ってて・・・お怪我はないですか?本当にごめんなさい」
深々と頭を下げてくる女性は今にも泣きだしてしまいそうな表情だった。いや、きっと目の前の彼女は泣いている。私とぶつかってしまったことで泣いているのではなくきっと何か違う気持ちで。なんとなく、ただ本当になんとなく分かってしまった。
「そんなに謝らないでください。私の方こそごめんなさい。お怪我はないですか?」
かなでの言葉に深々と下げていた頭を上げこちらに顔を向けてくる。目が合うとなんとなく分かっていた気持ちが確信へと変わっていく。
「本当にすみませんでした。本当にお怪我はないですか?なにか私にできることありますか?」
あぁ・・・どこかしら彼に似ているな。なんて思ってしまいつい、笑みがこぼれてしまう。不思議に思ったのか彼女は首を傾げこちらを見つめてくる。つい、数秒前までは落ち込んでいたのに彼のことを考えると幸せな気持ちになってしまう。なんだかな。なんて自分の気持ちのあやふやさに嫌気が差してしまう。変な感情がぐるぐると頭の中を駆け巡り訳が分からなくなったのかつい、いつの間にか消極的な彼女が口を開いていた。
「怪我は全然ないので気にしないでください。それと・・・ちょっとだけお話に付き合ってくれませんか?」
「えっ?」
初めて会った人物に話に付き合ってくれ。と、言われれば誰だって驚愕し戸惑いの表情を浮かべるだろう。彼女だって数秒は戸惑った表情を浮かべたけれど、すぐに微笑みに変わり控えめに頷く。
「私でよければお話させてください。私も誰かと話がしたくて。むしろ、私こそお話をさせてください」
そう口を開くと小さく頭を下げてくる。慌て頭をさげつつ
「きゅ、急に言ったのにありがとうございます」
更新が遅くなってすみません。




