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第8話 森は選び、剣は理屈を拒む

第8話来ました。私も1度読み通してはいますが、たまに文脈がおかしいところがあります。その場合は報告をお願いします。

森が、悲鳴を上げていた。

断魂樹王の核に走った亀裂から、

瘴気が逆流するように噴き出している。

《断魂樹王・領域支配率 41%》

——もう、王ではない。

「……終わりだ」

俺は静かに息を吐いた。

黒糸が、

森に張り付いたまま脈動している。

地面は完全には動かない。

木々は命令を待つように揺れている。

森は今、

どちらに従うかを測っている。

断魂樹王が、

最後の力を振り絞るように腕を振り上げた。

空が割れる。

巨大な瘴気の奔流。

直撃すれば、肉体も精神も持たない。

だが——

《DIECEROLL》

——効かない。

確率が歪む。

瘴気は、

俺に届く直前で霧散した。

「……もう、王の攻撃じゃない」

俺は一歩、前へ出る。

《万糸》

血糸、最大出力。

赤い糸が、

空間そのものを縫い裂く。

蔦も、

樹皮も、

防御という概念すら意味を失う。

——ズバァン。

断魂樹王の身体が、

縦に裂けた。

核が、

むき出しになる。

それは、

森の中心であり、

王の心臓だった。

断魂樹王の意識が、

直接流れ込んでくる。

『……人よ……なぜ……』

声ではない。

感情の奔流。

——守ってきた。

——排除してきた。

——森を、循環させてきた。

「……知ってる」

俺は、

血糸を核へと伸ばす。

「でもな」

左眼のサイコロが、

静止した。

「俺は、捨てられた」

『……』

「この森にじゃない。

人に、だ」

だから。

「生きる場所は、

奪ってでも作る」

——斬る。

血糸が、

核を完全に断ち切った。

音はなかった。

ただ、

森が息を止めた。

断魂樹王の巨体が、

崩れ落ちる。

木が倒れる音でも、

魔物が死ぬ音でもない。

——王が、役目を終えた音。

《断魂樹王の討伐を確認》

《領域主権が空白状態になりました》

瘴気が、

ゆっくりと薄れていく。

森は、

俺を見ている。

敵か。

新たな主か。

それとも——

《領域判定を開始します》

一瞬、

緊張が走る。

だが次の言葉は、

意外なものだった。

《断魂の森は、あなたを「干渉者」ではなく「管理者候補」として認識しました》

「……候補、か」

完全な支配ではない。

だが、

拒絶もされていない。

それでいい。

今は。

断魂樹王が消滅した場所に、

一本の剣が残っていた。

《ドロップアイテムを確認》

《固有武装:【樹王の剣】》

「……剣?」

見た目は、

極めて素朴だ。

木のようにも見える刃。

だが、

触れた瞬間に分かる。

——おかしい。

俺が剣を握った瞬間、

世界が、静かになった。

《【樹王の剣】効果を確認》

《・切断対象を選ばない》

《・所有者に魔力を無限供給》

《・瘴気・状態異常 完全無効》

「……は?」

次の瞬間。

体の奥から、

魔力が溢れ出した。

今まで、

感じたことのない感覚。

ゼロだったはずの魔力が、

泉のように湧き続けている。

《警告》

《肉体が魔力適応を開始します》

「……っ」

視界が、

一瞬白く染まる。

髪が、

風もないのに揺れた。

——白い。

水面に映った自分の髪は、

完全に色を失っていた。

「……代償、か」

だが、

悪くない。

左目は赤黒いまま。

髪は真っ白。

もう、

どこからどう見ても普通じゃない。

それでいい。

俺は、

剣を地面に突き立てる。

《断魂の森は、あなたを「外来の主」として暫定登録しました》

森が、

静かに応えた。

敵意はない。

ただ、

試すような沈黙。

「……居場所は、確保だな」

復讐のための、

拠点。

力を蓄える、

巣。

俺は剣を抜き、

森の奥を見渡す。

「次は……王国だ」

白髪の青年が、

断魂の森を背に歩き出す。

捨てられた者は、

もう捨てられない存在になった。

断魂の森は、

まだ終わっていなかった。

王を失ったとはいえ、

森そのものが消えたわけじゃない。

魔物はいる。

瘴気も、完全には抜けていない。

「……試すには、ちょうどいい」

俺は、

手にした剣を見下ろした。

《樹王の剣》

握った感触は軽い。

だが、

刃の輪郭が、どうにも定まらない。

木のようにも、

金属のようにも見える。

——存在が、曖昧だ。

最初の獲物は、

森の中型魔物だった。

四足で、

外殻は岩のように硬い。

以前なら、

血糸でも手間取った相手。

「……じゃあ、いくぞ」

魔力を流そうとする。

——意識した瞬間、

勝手に流れ込んできた。

止まらない。

尽きない。

「……これが、無限供給か」

一歩踏み込む。

剣を、

振った。

——それだけ。

音はしなかった。

だが次の瞬間、

魔物は二つに分かれていた。

切断面は、

焼けても、凍ってもいない。

「……斬った、というより……」

“そうなった”。

そう表現するしかなかった。

次の魔物は、

瘴気を吐くタイプだった。

通常なら、

近づくだけで精神を侵される。

だが。

「……来ない?」

瘴気は、

剣を中心に霧散している。

《瘴気無効》

理解するより先に、

体が理解した。

黒糸を張る必要すらない。

剣を突き出す。

——終わり。

「……便利すぎるな」

いや、

便利という言葉では足りない。

世界のルールを一段飛ばしている。

試しに、

《万糸》を併用する。

血糸を剣に絡める。

——相性が、良すぎた。

剣の軌道に沿って、

血糸が空間を裂く。

一振りで、

複数の魔物が同時に崩れ落ちる。

「……なるほど」

剣は、

切る。

糸は、

切らせる範囲を決める。

黒糸を混ぜると、

倒さず、拘束だけも可能だった。

ON。

OFF。

剣を使わずとも、

運搬ができる。

「……戦争向きだな」

自分で言って、

少しだけ苦笑する。

だが、

違和感もあった。

戦いを重ねるほど、

体が軽くなる。

疲労がない。

消耗がない。

その代わり——

水面に映る自分の姿が、

少しずつ変わっていた。

白い髪が、

より白くなっていく。

艶を失い、

光を反射しなくなっていく。

「……代償、進行型か」

恐怖は、なかった。

覚悟は、

森でとっくに済ませている。

魔物の群れが、

遠くで動く気配がする。

断魂の森は、

まだ俺を試している。

だが。

「……悪くない」

剣を肩に担ぎ、

俺は歩き出す。

森を抜けるために。

復讐の舞台へ向かうために。

断魂の森はもう、

俺を閉じ込める檻じゃなかった。

いかがだったでしょうか。面白いと思った方はこれからも応援をよろしくお願いします。

次回は、第9話です。そろそろ森を出そうかも?

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