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第6話 森には意思がある

第6話です。この調子でどんどん行きますよ〜

断魂の森は、

生きるために存在していない。

空気は重く、

呼吸をするたびに瘴気が肺を撫でる。

それでも俺は、

歩き続けていた。

左目は見えない。

だが、不思議と恐怖はなかった。

——もう、知っているからだ。

この世界は、

弱いものを守らない。

価値がないと判断された存在は、

簡単に切り捨てる。

「……捨てられた、か」

クラスメイトも、

王国も、

俺を測り、値を付け、

不要だと判断した。

だったら。

「——生き残って、壊すだけだ」

怒鳴る必要はない。

叫ぶ必要もない。

復讐は、感情じゃない。

生き方だ。

最初に覚えたのは、

「逃げる」ことだった。

断魂の森では、

正面から戦えば死ぬ。

魔物は強く、

数も多い。

だから俺は、

確率を歪めた。

《DIECEROLL》

発動。

サイコロの目が、

赤黒い左眼の奥で、軋む。

「……来るな」

偶然、足を滑らせる魔物。

偶然、瘴気が濃くなる場所。

偶然、互いに争い始める群れ。

——全部、偶然だ。

だが、

その“偶然”だけが、

俺を生かした。

次に覚えたのは、

「触れずに倒す」こと。

《万糸》

視界には映らない。

だが、感じる。

魔物と魔物を繋ぐ因果。

岩と天井の重さ。

瘴気の流れ。

糸を、

ほんの少し引くだけでいい。

ガラガラ、と

洞窟が崩れ、

魔物が潰れる。

「……効率、悪くない」

戦闘じゃない。

処理だ。

夜。

森の中でも、比較的安全な岩陰で。

俺は、

水面に映る自分の顔を見つめた。

赤黒い左眼。

ひび割れた頬。

——化け物だ。

でも、

それでいい。

「……覚えておけよ」

誰に言うでもない。

「俺を捨てたこと」

「見下したこと」

「無価値だと笑ったこと」

一つ残らず。

《復讐対象を設定しますか?》

不意に、

そんなアナウンスが流れた。

俺は、

一瞬だけ迷ってから、答える。

「……今は、いい」

まだ早い。

復讐は、

確実でなければ意味がない。

今はただ、

強くなる。

森で。

孤独で。

誰にも頼らず。

——そして。

「次に会う時は」

左眼に刻まれたサイコロが、

鈍く回る。

「立場が逆だ」

数日後。

断魂の森の奥で、

魔物同士が争う音が響く。

だが、

そこに人の姿はない。

あるのは、

結果だけ。

瘴気に満ちた地面に、

無数の糸が張り巡らされ、

静かに消えていく。

《Lv.135》

《Lv.142》

《Lv.151》

レベルは、

もう意味を持たなくなりつつあった。

大事なのは、

殺し方を選べるかどうか。

俺は、

森のさらに奥へと歩き出す。

復讐のために。

生き残るために。

そして——

この世界に、

俺を捨てた代償を支払わせるために。

断魂の森には、

**“奥へ行ってはいけない理由”**がある。

それは地図でも、

王国の文書でも、

正確には語られていない。

ただ一つ、

冒険者の間で囁かれる言葉だけがあった。

——森には、意思がある。

「……静かすぎるな」

俺は足を止めた。

ここまで来ると、

魔物の足音すら聞こえない。

瘴気は濃い。

だが、荒れていない。

まるで——

誰かが管理しているみたいに。

《警告》

《高位存在の領域に侵入しています》

無機質な声が、

初めて“遅れて”警告を出した。

「今さら、かよ」

赤黒い左眼が、

じわりと熱を持つ。

見えないはずの視界に、

違和感が走った。

——糸が、絡まっている。

今まで感じてきた糸とは違う。

太く、重く、

森全体に張り巡らされた一本の巨大な因果。

その中心。

「……いるな」

言葉にした瞬間、

地面が、鳴った。

ズン、と

低い振動が森を揺らす。

木々が軋み、

枝が裂け、

瘴気が渦を巻く。

そして、

それは現れた。

人型に近い。

だが、人ではない。

樹皮のような皮膚。

絡み合う蔦と骨。

胸の中央には、

禍々しく脈打つ“核”。

——森の主。

断魂の森を生み、

守り、

侵入者を選別する存在。

《固有名詞:断魂樹王だんこんじゅおう

《脅威度:災厄級》

「……そりゃ、捨て場にされるわけだ」

俺は、

一歩も引かずに立っていた。

逃げれば、生き延びられるかもしれない。

だが、

ここで背を向けたら——

一生、この森に怯えることになる。

断魂樹王が、

ゆっくりと腕を上げる。

それだけで、

地面から無数の蔦が噴き出した。

速い。

広い。

逃げ場がない。

《DIECEROLL》

発動。

——転べ。

蔦の一本が、

根元から崩れる。

だが、

一本だけだ。

「……足りない!」

《万糸》

発動。

森全体に張られた糸に、

無理やり指をかける。

重い。

拒絶される。

——これは、“他人の縄張り”だ。

次の瞬間、

蔦が俺の足を絡め取った。

「っ——!」

空中に引きずり上げられ、

木の幹に叩きつけられる。

骨が、軋む。

《警告》

《外部因果への干渉が拒否されました》

「……クソ、主権者かよ……!」

断魂樹王は、

俺を“敵”としてではなく、

“異物”として処理しようとしていた。

叩き落とされ、

地面を転がる。

呼吸が、

追いつかない。

今までの魔物とは違う。

確率も、

糸も、

完全には通じない。

——格が違う。

断魂樹王の核が、

鈍く光る。

その瞬間、

森そのものが動いた。

《致命的干渉を検知》

逃げろ。

本能が、叫ぶ。

《DIECEROLL》

連続発動。

——当たるな。

——崩れろ。

——逸れろ。

結果は、

半分だけ成功した。

直撃は避けた。

だが、

衝撃波で吹き飛ばされる。

視界が回り、

左眼が、焼ける。

《代償警告》

《追加徴収の可能性あり》

「……まだ、足りねぇのかよ……」

俺は、

笑った。

——ああ、そうか。

こいつは、

今の俺じゃ倒せない。

だが。

「……分かった」

地面に手をつき、

俺は立ち上がる。

「お前が、この森の王なら」

赤黒い左眼が、

断魂樹王を捉える。

「俺は、ここで“狩り方”を覚える」

断魂樹王が、

初めて動きを止めた。

敵意ではない。

観察だ。

俺は、

血を拭いながら、後退する。

今日は、

生き延びただけでいい。

いかがだったでしょうか。面白いと思った方はこれからも応援をよろしくお願いします。

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