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言いたい言葉はわかっている。
でも気持ちがまだ追いついてきてくれない。
「どうして、どうして、俺なんだ」
「何が?」
困惑する顔をしているあんずに俺はさらに話を続ける。
とりとめのない感情は胸の中から口へと吐き出され続け、それが言葉として練り上げられていく。
「あんずはいつも優しいし、かわいいし、事故に遭った俺でも飛び込んで助けてくれた。どうして、俺を選んだんだ?」
「なぁんだ、そんなこと考えたんだ」
変なことを言ったのかと思ってしまう俺に、あんずはホッとした表情で答える。
何がどう安心したのかはわからないが、あんずはさらに俺へと話をしてきた。
「それは、かなめくんだから、かな」
「どういうことだよ」
今度は俺が尋ねる番だ。
「ずっと一緒にいて、それこそ物心つく前からずっと一緒にいて、だから何を考えているか、どんなことを思っているのかがわかるんだよ。でも今の今までかなめくんがそんなこと思っているなんて、これっぽちも気づかなかった。だから私は今安心をしたの」
緊張をしているのはどうやらお互い様のようだ。
ここまで一気に話を続けていくあんずをみるのも、入試の時以来だ。




