骨との遭遇
「君達はどうして滅びた研究所に、わざわざ来たんだい?
しかも、四人とも可愛らしい女の子じゃないか」
玉座に座る骨は、カタカタと揺れながら僕達を見定めているのか、不思議そうな顔で僕達を見ていた。
うん?
どうして、骨なのに表情が読み取れたんだ? まぁ、いいや。
しかし、この骨は自分のことを不老不死の成功例と言っていたが、見た目は死霊系の魔物であるスケルトンそのものだ。声はどうやって出しているのか、ただ、生前は女性だったのが声からわかる。
死霊系魔物が苦手なよいやみは、骨を睨みつけている。いや、まだ警戒しているのか?
「知能を持った魔物があし等を騙そうとしているんすかね?」
表向きは、知能を持つ魔物は今のところは確認されていない。でも、アリ姉が言うには突然変異で知能を持ってると思われる個体が発生することもあるそうだ。
ただし、言葉は使わないのでこの骨は魔物ではないだろう。僕と同じ答えなのか、骨は首を傾げながら答える。
「私が生身を持っている時代には、魔物は本能でしか動いていなかったけど、今の魔物は知能、言葉まで話すのが普通なのかな?」
500年前でも、魔物に関する考えは同じようだ。
僕はよいやみの肩に手を置き、「魔物は魔物のままだよ。知能はなく、本能のまま生きているよ。それで、あんたはなんなの?」と聞いてみる。
「さっきも言ったけど、不老不死の研究の唯一の成功例さ」
それはさっき聞いた。
しかし腑に落ちない。アルテミスが前に言っていたのは、不老と不死は両立出来ないそうなのに、骨の状態であるこいつは、風化が止まっている。なんで?
僕は骨をじっくり観察する。いつきさんも同じ疑問を持っているようで、骨を観察していた。
「私の体が気になるようだね」
「はい。
女神様がいうには、この世に不老不死は存在しません。もし、不死になったとしても、体の風化は抑えられないはずです。
それなのに、貴女は白骨状態のままです。
一応確認しますが、不死になって日が浅いのですか?」
確かに日が浅いのであれば、骨の状態でも納得できる。
もし、まだ不老不死の研究を続けている奴がいるのであれば、この骨も被害者なのかもしれない。
そう思っていたのだが、骨は首を横に振る。
「私が不死になったのは、もう何百年も前の話さ。
しかし、私は不老不死ではなかったのか……。確かに、今考えれば、不死になった後、気になっていたことも説明がつくな」
「気になったこと?」
「あぁ。
殺されるほどの怪我を負わされたのに、一向に治る気配がなかったんだ。だから、私は失敗だと思われていた
まぁ、そのおかげで研究所を滅ぼすことができたんだかな」
骨はそう言って笑うが、普通に死ぬほどの怪我を負ったということは、痛みは確実にあるはずだ。それを考えたら、笑えない。
そんなことを考えていると、いつきさんが手を少しあげて「質問してもいいですか?」と聞いた。
「構わないよ。私の答えれる範囲であれば、答えよう」
「まずは一つ目の質問です。なぜ最近になって島を解放し、他者の侵入を許したのですか?」
確かに気になる。
この骨は悪いやつじゃなさそうだけど、島を解放すれば死霊系の魔物が近くの街を襲うかもしれない。
もしかしたら、こんな姿に変えられたから復讐でも考えたんだろうか?
しかし、骨は首を傾げる。
「解放?
何を言っているんだい?
この島は封印なんてしてないし、私は定着魔法は使えるけど、島ごと隠すような大規模な隠蔽魔法は使えないよ?」
「定着魔法?」
定着魔法と聞いて、いつかさんの顔つきが変わった。お金の匂いでも感じたのかな?
「定着魔法といえば、習得難易度が高い魔法です。どうして貴女が使えるのですか?」
「それは、この研究所には古代魔法の研究もされてたからだよ」
「古代魔法!?」
いつきさんは骨の言葉に心底驚いているようだ。
古代魔法ってそんなに凄いものなのか? よいやみに古代魔法について聞くと「今は失われた魔法で、習得難易度もそうだけど、効果が禁術レベルとも言われてるそうっす」と教えてくれた。
なんでそんな魔法を、この骨が使えるんだ?
「それよりも島の解放ってどういうことだい?
この島はもしかして、今までは認識されてなかったのかい?」
骨としては、死霊系の魔物が蔓延っているので、被害者が出なかったのは良かったみたいなのだが、腑に落ちないといった表情をしていた。
僕としても気になることがある。
「そもそも、魔大陸の近くにこの研究所を作った理由がわかんない。
骨、当時の魔大陸はどう思われてたの?」
「ふむ。今は関係なさそうだが、どうとは、どういう意味で聞いてるんだい?」
魔大陸の結界内を重ねるように研究所があるのに、関係ないってどういうこと?
あれ?
僕は何か重大なことを忘れてる気がする。
まぁ、いいや。
「魔大陸は危険な魔物が蔓延ってたんでしょ? それなのに、一部結界内に干渉する場所に研究所を作るなんて、どうにかしてるよね?」
アルテミスの前の持ち主であるアインは、魔大陸を世界を滅ぼしかねない魔物が蔓延ると言っていた。
ということは、研究所を作った国もそう認識していた可能性はないとも言えない。
「さっきから何を言ってるのかな?
この島と魔大陸はかなり離れているはずだよ?
そもそも、魔大陸の結界には、侵入することができないじゃないか」
骨はそう言って、カタカタと笑っていた。
僕達は骨の言葉にただ驚くだけだった。




