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極星から零れた少女  作者: 七沢またり


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第三十二話 動乱

 ――三ヶ月が過ぎた時、偽りの平穏は終わりを告げた。ホルシード帝国軍による領土拡張計画『第二次暁光作戦』が開始されたのだ。

 帝国本土であるリベリカ大陸から皇帝直々の指揮の下、大量の兵員がヴェルダン州へと送り込まれ、南東部の支配圏の拡大を目指す。膠着状態にあった戦況が、一気に帝国側に傾いた。

 更に、今まで手付かずであった北東へも船団が派遣、速度を重んじる進撃により、旧新生王国領が次々と攻め落とされていった。

 収穫を終えた後のこの時期、後三ヶ月もすれば厳しい冬が訪れる。だが、短期間の内に勝勢を見込めると判断すると、一斉に進撃を開始したのだ。帝国皇帝の強い自信が窺える。

 

 一方、年内の侵攻はないと予測していた星教会連合は不意をつかれた形となったが、攻勢のために用意していた兵を展開。怒涛の進撃を数の力で抑えるべく、侵攻路に防衛線を構築する。両軍は大陸南北で再び雌雄を決する事となった。

 両陣営の誘いをのらりくらりとかわしていたピーベリーも、今回は日和見を決め込むことはできない。情勢がそれを許さない。グレッグスには両軍から脅迫紛いの誘いを受け続けており、敵に回れば必ず報いを与えると警告されていた。グレッグスは悩みに悩みぬいた結果、答えを出した。


 ピーベリー領主、グレッグス・ジョージアが下した決断は――。


「ピーベリーは星教会連合に参加する。我らには元都市連合としての誇りと歴史がある。それを余所者に好き勝手にさせてなるものか! 後方には星教会の増援が控えている上、地の利は我らにある。諸君らの奮闘に期待する!」


 グレッグスは星教会連合に参加すると表明、旗色を明確に現した。グレッグスが判断材料としたのは、総兵力の差、地の利、そして戦後の地位の確約である。

 寄せ集めといえども、星教会連合には各地から続々と兵が集まってきている。一方の帝国軍は兵を送り込んできているとはいえ、数の上では劣勢だ。しかも長い船旅で疲弊している。地の利は言うまでもない。勢いがあるのは今だけというのがグレッグスの予測である。

 さらに、ことが上手くがいった暁には、現在帝国領の都市を支配してもよいという“約束手形”まで教皇から与えられた。条件は帝国のものを完全に上回っている。

 自分が利用されているということは分かっていたが、決断した以上は徹底的に星教会に味方し、貢献しなければならない。ステラのいう破滅をさけるためには、これしか方法がなかったのだ。

 グレッグスはピーベリー衛兵、私兵団を兵員として招集。更に各組織にも協力を要請。なりふりかまわず3千人の兵力を集める事に成功した。ストック商会からはガルド連隊が、オーソン一家は頭のバニアスが参戦している。

 



――そして、ベリーズ平原の戦い。


 ピーベリーに迫る帝国軍を迎え撃つため、星教会連合5千、ピーベリー兵3千の合わせて8千人が出撃。横陣で槍を構え、敵を待ち受ける。数で上回っているため、その表情には余裕が窺える。

 対する帝国軍は黒装束で統一された騎兵が1千、歩兵が2千、後方に攻城兵器や食料を運ぶ輸送隊。合計四千人あまり。突撃隊形で合図を待つ。


 勇ましい突撃ラッパと共に、黒騎兵が突撃開始。戦いは始まった。優勢であることに奢る連合軍に、騎兵が鋭い牙を剥いた。

 当初の作戦では騎兵の衝突を横隊で受け止め、左右の陣が敵主力の背後を取って退路を遮断するというものだった。

 だが、最初の衝突を受け止めるどころか、たった一撃で呆気なく食い破られてしまったのだ。黒装束の騎兵は、帝国が誇る最精鋭『黒陽騎』と呼ばれる者たちだった。皇帝の親征に合わせて、元帥ファリド・アラインが前線での指揮を行っている。帝国が誇る、百戦錬磨の若き勇将である。統率の取れていない、寄せ集めの軍勢でなんとかなるような相手ではなかった。鎧袖一触で、騎兵に為すがままに蹂躙されていく。

 その大混乱の中、星教会指揮官が討ち取られると連合軍は雪崩を打つように潰走。グレッグスも、這う這うの体で街へと逃げ帰る羽目となった。





 雑貨店に顔を青褪めさせたメイスが現れると、以上のようなことを声を震わせながら説明された。現在の街の状況は、まさに蜂の巣をつついたような有様。この店の中まで人の騒ぐ声が届くほどだ。喧しくて仕方がない。


「なるほど。グレッグスの決断は裏目に出たってことね。可哀相に」


 全く感情の篭っていない声に自分で気付き、ステラは思わず面白くなったので笑みを浮かべる。メイスがその様子に脅えながらも口を開く。


「そ、そのグレッグスですが」

「どうかしたの?」

「全財産を持って、一族を連れて夜の間に逃亡したようです。屋敷は人っ子一人見当たりません。ジョージア家の幹部連中もです。更には、北区の有力貴族の連中も逃げ出したようで」

「ふふっ、支配者として最後に選んだのは、全てを投げ捨てての保身の道か。まぁ、人間らしくて良いんじゃない?」


 戦に敗北したのだから、民の命を救う為に命を張って交渉するのも一つの道ではあった。だが、それでは自分の命はない。なにせ帝国の誘いを蹴って星教会についたのだから。許される可能性はゼロに等しい。死にたくないならば、逃げるしか道は残っていない。

 残された方は堪ったものではないが。


「……纏める人間がいないので、街の方針を決めることすらできません。戦うのか、降伏するのか、誰が交渉するのか。それを決める会議をこれから行なうのですが」

「……ですが?」

「ステラ、貴方にも参加して欲しい。貴方の意見が必要だ。私だけではなく、オーソン一家まで手玉にとった君ならば、きっと名案が」

「馬鹿ね。そんな逆転の案が都合よく出てくる訳ないでしょう」

「……し、しかし」


 たった一人で劣勢を覆せるような力があれば、きっと英雄になれるだろう。だが残念なことに、自分は英雄ではなく人間だ。


「でも、面白そうだから参加してあげるわ。一つも希望のない会議って、なんだか趣がありそうだものね」


 ステラは楽しそうに笑うと、メイスを引き連れて早速出発することにした。


 会議の場所は中区、闘技場の酒場。各勢力のバランスを維持したかったとのことだが、今更だ。

 北区のジョージア家は逃走したため参加せず、南からはストック商会からの援助を受けて頭角を現し始めたロコグループ。東はいつものオーソン一家。西は言うまでもない。


 ちなみに、道中は街から逃げ出そうとする商人やら、食料を買い集めようとする住民でとても賑わっていた。見慣れぬ一家連れの人間たちも数多くいる。メイスの話によると、近隣の農村から避難してきたそうだ。わざわざ死地に飛び込んでくるとはご苦労なことである。だが外にいればそのまま略奪や殺戮の対象となる。彼らにとっての逃げ場はここしかなかったのだ。


「早速で悪いが、くだらねぇ挨拶をしている暇はねぇ。直ちに街の全ての入り口に障壁を築き、篭城戦の準備に取り掛かる。手を貸してもらうぞ」


 挨拶など一切なく、オーソン一家の頭、バニアス・オーソンが強い口調で告げた。顔にはついたばかりと思われる矢傷があり、非常に痛々しい。彼もベリーズ平原の戦いに参加した一人。グレッグスとは違い、街に残る事に決めたらしい。


「そんなこと言ってもよ、おっさん。八千人で迎え撃って滅茶苦茶にやられたんだろうが。今戦える人間なんて2千もいねぇよ。それをどうやって守るってんだ?」


 南を代表してやって来た、黒眼鏡のロコが半笑いを浮かべながら吐き捨てる。笑っているのは余裕ではなく、もう諦めているからだろう。逃げない理由は分からない。残念なことに、馬鹿の考えることはいまいち理解出来ない。


「何もせずに殺されろってのか? 若造はくだらねぇこと言ってねぇで、手を動かしゃいいんだ!」

「へへ、負けたくせにえらそうにしやがってよ。どうせ全員死ぬんだろ? なら酒でもくらってたほうがマシさ」

「なら今ぶち殺してやらぁ!」

「上等だ、糞爺ッ!」

「おい、やめないか! 帝国軍はもうそこまで来ているんだぞ! 今は補給を取っているようだが、いつ進撃が開始されてもおかしくないんだ!」


 メイスが声を荒らげ、机を乱暴に叩きつける。


「へへっ、金庫番が偉そうにしがやって!」

「ロコ、貴様誰に口を利いているんだ!」

「だから金庫番だよ。お前がそこにいられるのは、そこの小娘のおかげなんだろ? 噂は全部聞いてるぜ?」

「だ、黙れッ!」

「メイス、ちょっと煩いわ。私の耳元で怒鳴らないでくれるかしら」

「は、はい。す、すみません」


 ステラが厳しくにらみ付けると、メイスが口ごもりながら渋々と座る。


「ヒュー。噂は本当だったのかよ。男のくせに、情けねぇなあ!」

「情けないのは貴方もよ。……あー、ロコ、だったかしら? 誰か適当な人間に、援助してあげるように提案したのは私。南区を纏める為にただ代表が必要と思っただけ。貴方の代わりなんて、別に誰でもいいのよ」

「へっ、中々面白れぇな糞餓鬼が。俺は金庫番とは違うんだぜ? 舐めた口利きやがるとぶち殺すぞッ!」

「本当にうるさいわねぇ。メイス、馬鹿を黙らせるにはこうするのよ」


 ステラが指を鳴らすと、ロコの喉下にヴァレルの大剣が突きつけられる。ロコの黒眼鏡がずり落ちる。先ほどまでの余裕が完全に消えうせる。諦めているくせに命は惜しいらしい。結局は空元気だったということだ。


「――ううっ」

「どうしたの? 暴れてもいいのよ? 胴体とおさらばする必要があるけれど」

「ま、待て。や、やめ――」

「情けない男ね。口だけが達者なだけの、金庫番も出来ない屑。次に煩くしたら、私が直々に殺してあげる。理解できたかしら?」

「わ、分かった。分かったから」


 涙目のロコが両手を上げて降参の仕草をとる。ヴァレルに視線を送り、解放する。時間の無駄をしてしまった。


「バニアス、話を進めましょうか。屑に構っている時間はないでしょう」

「本当にとんでもねぇ餓鬼だな。アポールが入れ込むのも理解できたぜ」

「それはありがとう」

「とにかく、もう徹底抗戦しかねぇ。防御を固めてなんとか時間を稼げば、援軍が――」

「来ないでしょうねぇ。こんな街を救いに、教会が本腰を入れると思う? 領主や富裕層が逃げ出し、後は屑と貧民しかいないような街だもの」

「……見捨てられるってのか」

「助ける価値がないだけの話よ」

「……腹立たしいが、否定できねぇな」

「降伏を伝える使者は出していないの?」

「とっくに出してる。グレッグスの野郎が一回、それと、俺の部下に一回行かせた。結果は、両方とも首になって戻ってきやがったぜ。口に噛まされてた手紙には、罪の報いを受けろだとよ。俺だって降伏できるもんならしている」


 バニアスが乾いた血が付着した手紙を放り投げる。記されているのは降伏を許さないという内容だ。

 おそらく、帝国はこの街を見せしめとしたいのだ。抵抗した者がどういう末路を辿るかということを。多少の悪評は広がるかもしれないが、今後の攻略は容易になるだろう。脅しは嘘ではないと見せ付けることになるのだから。

 それに、今後の統治に影響する富裕層たちは逃げ出している。替えがいくらでもいる連中を撫で斬りにするくらい、どうということはない。それが戦争というものだ。


「次の攻撃開始までは、後少しだけ時間があるでしょう。最後にもう一度、使者を送りましょう」

「それこそ時間の無駄だ。第一、俺はもう部下を死なせるつもりはねぇ。こうなった以上、勝つのは無理でも一人でも多く道連れにしてやるだけだ。意地って奴を他所もんに見せてやらぁ!」

「貴方の戦いの準備を止めるつもりはないわ。ただ、使者が帰ってくるまで余計な挑発はしないで頂戴。水の泡になったら馬鹿馬鹿しいものね」

「だから、時間の無駄だと言ってるだろうが!」


 激昂するバニアス。ステラはそれを軽く受け流す。


「ふふっ、大丈夫よ。帝国軍は直ぐには攻撃をかけてはこれない。街の攻撃は投石機を用いてからみたいだし。その後で騎兵と歩兵をなだれ込ませるのかしら? いずれにせよ、それはできなくなるのだけれど」

「何を言っているんだ?」

「もうすぐ濃い霧が出る。投石機なんて使えないわ。騎兵も前を進むのに苦労するでしょうし。だから、少しだけ時間は稼げるはずよ」

「霧だぁ? お前、寝ぼけてんのか? 外は真昼間の見事な秋晴れだ! 霧どころか雨すら降りそうにねぇ!」

「それはそうでしょうねぇ。これから出すんだから」


 ステラが腰のポーチから水晶を取り出し、呪文を詠唱する。ステラの目が緑に光る。水晶から紫の光が発せられ、部屋の中を満たし、そのまま外へと散って行った。


「な、何をしやがった」

「誰か、外を見てきなさい。素敵な霧が出始めてるわよ」

「そ、そんな馬鹿なッ!」


 バニアスが部下を連れてカーテンを開き、窓を一気に開け放つ。今までの透き通った景色は曇り、数十歩先が完全に靄で閉ざされる白い空間が街とその周囲を包んでいた。


「ね、言ったでしょう? 使者には私が行くわ。貴方たちは篭城準備でも逃げ出す準備でも好きにやってなさい。いずれにせよ、同じことだしね。大人しく霧でも眺めているのをお勧めしておくけれど。ほら、幻想的でとっても綺麗でしょう?」






「いらない」

「そうはいきません!」


 ステラは供をつけるというメイス、バニアスの言葉を断り、一人で向かうと告げた。これにはヴァレル、ティピカが大いに反論したが、ステラは一蹴した。戦いにきたと勘違いされて、一言も言わずに処断されては無駄死にである。だが、ベックは絶対についていくと言って聞かなかった。


「必要ない」

「おねがいです、俺の連隊を、いや、俺だけでも連れて行ってください! 一番の家来としては、絶対についていかなくちゃいけない時でしょう!」

「私の言葉が聞こえなかったのかしら。同じことを二度言うのは大嫌いよ」

「嫌いでも構いません! 俺さえいれば、何かあっても時間を稼いで見せます! ステラ様はその間に逃げてくれれば!」

「騎兵相手に逃げられる訳ないでしょう。そして、貴方がいたところで死ぬまでの時間が3秒増えるだけ。何の意味もない。むしろ、交渉の邪魔になるだけ。少しは考えて物を言えといったはずよ。貴方は最後までベックねぇ」

「と、とにかく俺はッ!」

「……その忠誠心だけは受け取っておこうかしら。でも聞き訳がないのはいただけないわ」


 ステラは水晶の力を使い、ベックに呪縛をかける。さらに舌も回らないように麻痺させておく。


「とはいえ、少しは成長したということかしら。ふふっ、一番の家来という言葉は嬉しかったわ。それじゃあね、ベック」


 ステラはもがくベックの頬を優しく撫でた後、闘技場を出る。ヴァレルとティピカは、心配そうにこちらを窺っている。こいつらは言って聞くような人間ではない。恐らく隠れてついてくるのだろうが、問題ないだろう。交渉が決裂しても、混乱状態ならば生き延びるだけの実力はあるはずだ。敵兵を掻き乱すぐらいならば、今のステラにもできる。


 供はクレバーのみ。クレバーはこちらの覚悟を分かっているらしく、何も言ってはこない。これだけの魔力の行使は危険だと分かっているのにだ。最後にはステラの我が儘を聞いてくれる。本当に素敵な従者である。

 ――と、ベックと同じような表情をした人間が現れた。先ほど沈黙を保っていたライアである。泣きそうな顔で手を広げ、ここは通さないとばかりに道を塞いでいる。


「貴方は、通行の邪魔をする趣味でもあったのかしら?」

「……ごめん。でも、ここは通せない。行ったら殺されるかもしれないんだろ?」

「交渉に失敗すれば死ぬでしょうね。現に二人ほど首になって帰ってきているし」

「だったら、行く事はないよ。ほら、ステラはあんなに長生きしたいって言ってたじゃない。こんな霧を出したんだったら、丁度良いよ。今すぐ逃げよう!」

「長生きしたいというのは、今の私の願い。前の私の願いは、“あの場所がいつまでもあのままであるように”ということ。それを叶えるためには、この街を救う必要がある。だから私は行く。それだけよ」

「あの店を守る為に、行くの?」

「そういうこと。馬鹿みたいだろうけど、私にとっては重要なことなのよ」


 ステラも馬鹿馬鹿しいとは分かっている。だが、見捨てられない。あの場所だけは絶対に維持する。


「だ、駄目だって! わ、私の父様も、同じことを言って、街に残ってそれで!」

「…………」

「わ、私さ、実は貴族の出身だったんだよ。でも、帝国が攻めてきて、皆死んじゃって、私だけ逃がされて。それでこうなったんだ。だから、逃げられるときは皆で逃げないと駄目なんだ。ね、だから逃げようよ!」


 ライアが涙を流しながら語る。父は海岸の港湾都市の貴族の一人だったと。帝国の遠征に最後まで反抗して殺されたと。母は旧王国から逃げてきた貴族で、もう逃げるのは疲れたと言って、父とともに死んだ。使用人たちも、ライアを逃がそうとして死んでいった。だから自分は一人になってしまったのだと。


「だから、逃げよう? ね?」

「そんなに泣かないで、ライア。大丈夫、きっと上手く行くから」

「どうして? 店ならまた建てればいいじゃない。それに、こんな街の人間なんて、どうだって良いっていつも言ってたじゃない。なのに、なんで!?」

「私の父と母が残した店は、あそこだけなの。代わりなんてこの世のどこにもありはしない。不合理だとは分かっているけれど、人間だから仕方がないわ。こういう感情は、割り切れるものじゃないみたいだし」


 ステラはライアの金髪を優しく撫でてやった。


「…………ステラ」

「メイスには言っておいたのだけど。心配だから一応貴方にも伝えておくわ。……もしも霧が黒く変化を始めたら、店の人間を連れて直ぐに西の方に逃げなさい。街からできるだけ遠くへ逃げるように。東には絶対に行ってはいけないわ」

「ど、どういうこと?」

「説明している時間はないの。もし霧が晴れたら、熱い珈琲の準備をしておいて頂戴。ああ、ミルクはいれなくていいからね?」


 ステラは悪戯っぽく呟くと、ライアを軽く抱擁した後、踵を返した。引き止める声が聞こえたが、もう振り向く事はしなかった。

 

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