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black ogre  作者: zephy1024
第一章 美小鬼王編
22/68

022.アンギム村での出会い①

 ここにいる事にさして違和感を感じてない。

 たぶんこの世界に、順応し始めているのかな?

 まぁ非日常には前から関わっていたせいもあるんだろうけど。

 来る事が出来たんだし、戻る方法もあるのかしれない。

 けど、絶対あると言い切れるわけでもないしな。


 順応出来るなら早い方がいいだろうし問題ないか。

 とりあえずは、リラの事が解決してから今後どうするか考えればいいや。

 まずはここの世界が何処なのか、情報集めないと駄目だろうしな。

 その為の選択肢は、人間の領土にいくか魔族の領土にいくかのどちらかだろうけど。


 とりあえずの最優先はドウナ国とリリラさんか。

 リリラさんを探して見つけたとして、どうすればいいのか?

 さっぱりわからない。

 リラの説得に期待するしかないんだろうなぁ。


「アキトさーん、むにゃむにゃ」


 微かに聞こえたリラの寝言に苦笑した俺。

 今後どうするべきかについて、一人交代時間まで考えていた。


-----------------------------------------


 俺達は焚き火の側で焼いた魚を頬張っている。

 朝、薪を拾いにいったアラル。

 彼が見つけた川で獲ってきた魚だ。

 自給自足する生活。

 今までの俺の世界では有り得ないな。


 リラもアムもうまそうに食べている。

 魚の名前はわからないが、中々にうまい。

 食事が終わった俺達は、今後の予定を話す事にした。


「予定では明日昼頃にはアンギムって村に到着する予定だ」


 アラルの言葉から始まった会合。

 アムに説明する意味も込めて、彼は話しを続ける。


「事情があって俺達はドウラ国と半ば敵対している。村人の一人が、目的は不明だがドウラ国へ向った。俺達は彼女を探し出して、無茶な事をしでかす前に止める為、彼女を追っている」


 アムを見ると首肯している。

 それを見たアラルは更に話しを続けた。


「彼女の名前はリリラ、リラの姉貴分みたいなもんだな。彼女がどの道を通ってドウラ国に向ったかのかは不明だ。だからアンギムに着いたら情報収集するつもりだが、そのついでにアムネシア、お嬢ちゃんの事も聞くつもりだ」


 そこでアラルは、一旦言葉を切った。


「アンギムまではちゃんと送り届ける。だがその後どうするかは考えといてくれ。だが俺達と一緒にいれば、間違いなくやっかいな事。最悪命に関わる事に巻き込まれる可能性が高い事だけは覚えとけ」


「ウン、わかった」


 特に躊躇する事も何か悩む事もない。

 彼女は理解した旨を答えるだけだった。


「アンギムにはドウラ国の駐留部隊いるはずだ。そこだけは覚えとけ」


 アラルは立ち上がり焚き火を消した。


「リリラに追いつかないといけねぇし、行くぞ」


 俺達も彼の言葉に立ち上がり、寝袋を片付けて進む準備をする。

 そうして昨日と同じように歩き旅が始まった。

 昨日と違うのはアムが増えた事だ。


-----------------------------------------


 道中で疲れ切ったリラを俺が背負って歩く。

 その事に、羨ましそうな視線を向けるアム。

 そんな出来事はあった。

 しかし、小さな問題を除けば、大きな問題もなく進んでいった。


 本当に竜族なのかもしれないと思ったのは、アムの体力。

 小柄な体躯からは考えられなかった。

 しかし、俺達の決して遅くはない歩行速度に、平然と合わせてい歩く。


 そして二日後の昼前に、アンギムの近くまで辿り着いた。

 直ぐに村に向わないのはドウラ国の駐留軍がいる為だ。

 アラルが様子を見に行っている。


 無表情に座っているアムと、若干疲労気味のリラ。

 やはりアムは本当に竜族なのかもしれないな。

 そんな事を思っているとアラルが戻ってきた。

 しかしその表情は優れない。

 何かやっかいな事になっているのかと思いながら聞いてみる。


「どうだった?」


「あぁ、村の出入りは駐留軍にチェックされてやがる。そして最悪な事にチェック係の一人は俺の顔見知りだ」


「まじかよ?」


「アキトは黒髪で黒眼だから目立つし、リラも顔ばれしてるだろう。アムネシアも珍しい容姿だし、どうするか?」


「塀を越えて入っても容姿が目立つから、ばれる危険があるか?」


「そうだな。顔見知りがいる以上、俺の事もばれてない保障はねぇだろうし」


「力付くで突破は出来るだろうけど、それじゃ情報収集は出来ないしな」


「それなら姿を変えればいいと思うんだ」


 突然のリラの提案。


「姿を変えるってどうやって?」


 俺の問いに自信満々な顔のリラ。


「こうやって」


 リラは杖を構えた。

 しかし俺は、彼女が何をするつもりなのかさっぱりわからない。


偽映像(フェイクビジョン)


 その言葉を唱えたリラの姿が一瞬で変わった。

 空色の髪はくすんだ緑に変化。

 白い肌も少し浅黒くなり、顔にはそばかすが出来ていた。

 顔の輪郭とかはそのままだが大分印象が変わる。

 言葉にも出来ずに俺達三人は唖然としてしまった。


 俺達の反応を待つ事もなく、更に魔術を行使するリラ。

 こうして俺達の姿は、実際の姿とは違う映像に置き換えられた。

 あくまでも見た目を変えているだけなのだそうだ。

 それなりに魔術の心得があれば見抜かれる可能性もあるらしい。


 俺達三人も、緑髪に浅黒い肌になっている。

 鏡とかがないので自分の顔の形状はわからない。

 俺は背丈の都合上で鬼小鬼(オーガゴブリン)

 アラル、リラ、アムは闇小鬼(ダークゴブリン)という設定だ。


 闇小鬼(ダークゴブリン)の兄に双子の二人の妹。

 護衛兼兄の友人である鬼小鬼(オーガゴブリン)の俺。


 双子という事で、アムにも微妙に異なるそばかすが出来ている。

 表に見えてる武器に関しても、偽装されて刀が無骨な棍棒になっていた。

 服装もどちらかと言えば旅装束のような物になっている。


 他にもいろいろと細かい設定を打ち合わせた俺達。

 チェックの為の列の最後尾に俺達は並んだ。


 道中ではローブで顔を隠していたが、今はあえて顔を出している。

 正直ばれるんじゃないかとドキドキしたが、案外ばれないんだな。

 途中で、左顔に大きく傷がある少女っぽい戦士に見られたが、特に何も言われなかった。

 無事村に入る事が出来た俺達はまずは宿屋に向う。


 リラ曰く効果は精々もって二時間。

 正確には測ったことがないそうだ。

 その為、途中で魔術が解けるとばれる可能性がある。


 そして見つけた宿屋。

 交渉したのはアラルの為、詳しい事はわからない。

 食事は朝夜は料金に含まれており、昼だけ別料金だそうだ。

 取った部屋は四人部屋を一つ。

 リラとアムの危険回避も兼ねている。


 情報収集はアラルとリラ。

 リラは魔術が解けた時の為の保険。

 俺とアムは表向きは荷物番。

 だが、常識の欠如しているアムのお目付け役でもある。


 俺と一緒なら勝手に出歩いたりしないだろう。

 というアラルの考えかもしれない。

 方針が決まり、念の為に姿の偽装がどの程度持つ確認。

 今はリラに掛けなおしてもらって時間を計っている。


「一人だけ気付いてたかもしれんな」


 突然のアラルの言葉だが、俺も思い当たる節はある。

 一度こちらを見ていた顔に傷がある少女。


「顔の左に傷のあった戦士か?」


「そうだ。そして彼女が俺の顔見知りでもある。名前はシェリアナだ」


「見逃したって事か?」


「たぶんな。向こうも俺には気付いたと考えるべきだろうよ。何でこんな所にいるのかわからんけどよ」


 後半の呟きの意味はよくわからない。

 しかし、聞く前にリラの声に遮られた。


「もしそうならシェリアナさんは魔術にも精通している可能性が高いって事ですよね?」


 そうか、そうだよな。

 もし見抜かれていたのなら、魔術の心得があるという事になる。


「それでアラル、どうするつもりだ?」


 素直に沸いた疑問をぶつけてみた。


「夜にでも直接会ってみるつもりだ」


「アラルさん、危険ですよ!?」


「リラよ、危険は覚悟の上だ。だが見逃してくれたなら理由があるはずだ。協力は取り付けれないにしても情報が手に入る可能性があるぜ。賭ける価値はあると思うが?」


 確かにアラルの言う事にも一理あるけど。


「アラル、捕まるなよ。捕まったら俺は駐留軍を全滅させてでも助けにいくぞ」


「うえ? 勘弁してくれよ。そんな事したら全面戦争に成りかねねぇぞ?」


「だから捕まるな」


「わ・・わかったよ」


 俺の言葉にリラも渋々納得したようだ。

 アムは相変わらず無表情で何を考えているのかわからない。

 その後は、アラルとリラが宿屋の一階で別料金を払い、購入してきたランチを食べた。

 食べ終わった後、装備の点検をしたり、荷物のチェックも済ませる。


 結局姿偽装の魔術は、二時間と十三分で解けた。

 リラの予想よりも少しだけ長かったわけだ。

 再びリラとアラルは姿を偽装した上で出て行く。

 俺とアムは睡眠中という事にしてある。

 部屋には誰も入らないように厳命して行くとの事だ。


 アムにも会話をする場合は、小声でひそひそ話しでするように説明してある。

 それでもやっぱり二人を心配してしまうのはしょうがないのかな。


「アキト、二人心配?」


「そりゃな。敵のど真ん中にいるようなものだし」


「ウン、リラ気になる」


「それが心配するって気持ちだと思うぞ」


「ン!? これが心配するキモチなんだ」

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