肆ノ話
祐一の暴露に、まず辰夫が口を尖らせた。
「さらっと言ってんじゃねぇよ祐。直前まで秘密にしといた方がぜってー面白かったのに。」
そっちかい。私は思わず脱力した。実際、面白い云々の前に突っ込まなければいけないところがあるはずだ。
「というか、私あっち側行けないんだけど。」
むしろ誰もそこに突っ込まないことにいやな予感しかしない。
案の定、三人は涼しい顔でさらっと言った。
「「「知ってる。」」」
ですよねー。
乾いた笑いが漏れるのを止められない。しかし、私はその後、そんな笑いさえ出せなくなった。
と、いうのも、皆が私はあちらに行けないことを分かっていたうえで私にこの話しをしたのだとしたら…。
「村の掟、破るつもり?」
私は咎めるような響きを持って三人に聞いた。そうすればあっさりと答えが返ってくる。
「違う違う。破ることにはならない。深影は他の奴とは違うって認めてもらうの。」
「特例ってやつだよ。」
それを世間一般ではルールを破るという。明るく言い放つ辰夫と志乃にむけて、私が再度口を開こうとすると、横から祐一が悲しそうに口をはさんできた。
「…深影は行きたくない?」
「うっ……。」
言葉に詰まった。私は、「いや…」とか「それは…」とか言いながら、明後日の方向へ視線が行くのを止められなかった。
正直に言えば……むっちゃ行きたいです。
自分が外の人間であることに対して、辰夫たちが怒られる度に悔しいようなやりきれなさがあった。自分が行けない所への好奇心もあった。なにより、皆との絶対的な壁に対しての寂しさがあった。
反論が出来ない私に、祐一は嬉しそうに追い打ちをかける。
「深影だって行きたいよね。」
それに便乗して左右から辰夫と志乃が勝ち誇って私に言ってくる。
「行こうよ~。」
「作戦もばっちりだから。な?」
私は大いに揺れた。子供ながらにある良識と、先への不安が私を「いかない」という選択肢に留めていた。これでも同年代の子たちよりは落ち着きがあると自負している。だからこそ、突っ走りそうな友人を引き留めてやるのが自分の役目だと思っていたし実行してきた。実際は、大人から怒られるのが怖かっただけなのかもしれないけれど、間違ってはいなかったと思う。
いま、私が自分が思うままに「いく」と言ったとして、果たしてそれは正しい選択と言えるのだろうか。
返事を待っている皆を渋い表情で見回して、私は考え続けた。
皆は、どういうつもりで私を誘ったのだろうか。見つかれば怒られるのは当然だし、怒られる以前に、とても恐ろしいことが起こると言うではないか。
「絶対怒られるよ。それに、私があっちに行ったら、すっごく怖いことが起こるんでしょ。」
確かめるように皆に聞くと、皆は互いに目を見合わせた。
「まあ、見つからないようにするし。」
「怒られたら謝ればいいし?そんで、深影が良い奴だって教えてやる。」
祐一と辰夫は強気に言って見せる。その言葉にあまりにも迷いがなくて、
「大丈夫だよ!みんな一緒なら!」
志乃が決まり!みたいに言うから、
「何その『赤信号皆で渡れば怖くない』理論…。」
私は思わず返事をしてしまったのだ。
「わかったよ。もぉぉぉぉっ。行くよ!行きたい!」
それを聞いたとたん満足そうに頷いた三人は、やけになった私を連れて走り出した。




