落ちた男。
………本当に、お久しぶりです。すみません。
布が水を吸って重い。
「うぅ……気持悪い………。」後で絶対黒の術をかけようと心に決める。
「だから特性の靴を作るまで待って欲しいって…。」後ろからアリッサの声。
じゃぼじゃぼと水を吸って気持悪い靴を上げ、前へ進む。
ここは、城の地下へ続く水路で。
目下潜入中です。
今日の私のコーデは、アリッサ特性の、忍スーツ(黒を貴重としたパンツ姿)である。
「で?その物騒な二人組も行くわけね。」
私が逃げて来たレジールが何故か私に会いたがっているらしい。
宿にアリッサがいることはウリセスの力でわかっていた。水界で時間を割かれたため、予定よりアリッサに会うことが遅くなってしまったのだった。当然、アリッサはウリセスがどこにいるかくらいはわかるのでー精霊同士はそういう繋がりもあるらしいーまちぼうけをくらったアリッサの、
衣装攻撃がどれほどだったかは、また平和になってから述べたいと思う。
『世界領域』この言葉をアリッサが発した瞬間、『黒の総本』が光り瞬時に部屋が隔離された。
そして、初代のいいつけによりこの話しは後回しになったのだった。
何しろ、
「時間が無いのよ、時間が!!」ばしゃばしゃと歩いていると、ひょいと、腰を抱かれる。
見れば、狂戦士の男が私を抱き上げていた。その隣の【魔法使い】はアリッサを。
「時間が無いのだろ?」【魔法使い】がにしゃと笑う。
そう、黒の術はここでは使えない。何故なら、宮殿にある黒の術を使う媒体がすべての水路を管理する大本の水源に直結した所にあるからだ。というのは、初代の記憶と月卿によりわかったのだけど。
ここで魔術を使っても感知されるので、歩くしか手段が無いのである。
下水だか何だか知らないが、吐き気のする水路を歩くのはかなり辛かった。
「いや、でも、でもね?」ここで問題です。
水路をものすごいスピードで走ったら、水はどこへ舞い上がるのでしょうか。
後で絶対ウリセスに綺麗にしてもらおうと、切実に思いました。
長い水路を越えると、そこは。
一面、真っ白な世界。………ではなく、
ドーム上になった石作りの庭園でした。
「………何ここ………」今は『黒の総本』も開いてません。初代の言葉は私の中に響くけれど、念のため回線を切断しているような状態です。
「うわぁ………リオ様……酷いです……エラ・キュリア!」アリッサが汚泥を浴びて酷い私の状態を見て、風の精霊術を使う。
ひとまず、汚れは吹き飛び、乾いたけど、本当の意味での殺菌はできていない。でもありがとうアリッサ。気分の問題としてこれは重要だわ。
「……魔法、使っちゃいましたけど…」
「いいよ、何かこれ、罠っぽいし。」鼓動が早くなる。7つの水路は中心から伸びていて、それぞれに水が流れている。水は地下から湧き出ているようだ。
その一つの水路から、懐かしい気配。
「リオ!」
ウリセスと、月卿たちだ。
計画では、ウリセスたちの水路は宮殿の中へ続くはずだった。ここは水路とはいえ、宮殿よりさらに地下に存在する場所で、普段は使われていないはず。
「初代モード発令」力を解放する。
『膜包。』
「リオ様!」アリッサの声を聞く。水路が一瞬にして黒色に変わる。
つまり、この水路こそが『黒の術』
「初代、後で言い訳は聞いてあげる。」瞬間に、降り注ぐ黒い雨が床に生えていた植物を一瞬にして溶かしていく。
「酸の雨…!」月卿が呟く。
あらかじめ、全員に内側からの防御幕を黒の術でかけておいてよかった。姿すら見せずに、こんなことをする奴が敵。
私は水路の中心、7つの水路が交差している場所へ進む。そこは水路からの水が流れ込んでいて、水底は全く見えなかった。
そして、当初の予定通り、私たちは二手に分かれる。
銀髪の【魔法使い】が天井にむかって手をあげる。それに応えるかのように月卿たちも浮遊する。
それを確認した後、ウリセスを一度見て、足元の水源に飛び込んだ。
酸の雨は街中に降るだろう。月卿たちの力と水の精霊王の協力で、6時間ほど持ちこたえられるそうだが、それをすぎれば街の人間はすべて、あの植物のようになるのだ。
『目的が、わからんな。』初代が呟く。彼にとってはこの程度は日常茶飯事のようで、まるで動揺が見られない。
落ちて行く黒い世界の中、私を占めていたのは怒りよりも悲しみの方が近かった。
こんなことも、当たり前に悲しく思えなくなってしまった初代を思って。
そして、それが黒の術師であるということに。
つづく。
あと2回くらいで決着つく予定。次は少し行間を書いていきます。




