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満たされた。

思わず待たされた、と変換しそうになりました。(汗)

次の日、テオさんに叩き起こされました。


「忘れ物!」ぼふっと頭にヒットしたそれは『黒の総本』。


「あ、ありがと。」恥ずかしい。非常に恥ずかしい。まるで少女のように逃げ出した昨日の自分。でも朝は来るのね。当たり前よね。


「…いいけど、早くあいつ持ち帰った方がいいんじゃない?」テオさんはじとり、と私を見る。


「え?」


「聖生祭、今日じゃないの?」




あああ!




思いっきり、後まわしになってましたよ!


『黒の総本』ひっぱりだして初代を呼び出す。


『あーそういやそうだな。』



あんたもか!



それより早くウリセスを回収しないと。あのまま放置とかあり得ない。


っていうか、私かなり酷いことしたんじゃ?


トイレとかどうしたのかな……。いやそこはもう考えない。


とにかく走って走って。昨日の部屋まで着ましたよ。途中かなり迷ったけど。転移は使えない部屋だった(と初代が言った)から自力で。


「ウリセス!」もう、本当何やってるんだろう私。とにかく『束縛』を解いて、連れて行かないと…って、このまま連れていけばいいのじゃ?


『いや、そこは解いてやれ。』初代から心を読んだかのような突っ込みが。


『それから、俺はしばらく寝る。あっちについたら起こせ。』


はいはい、人使い荒いですね。


ウリセスの目が私を捕らえる。いやもう、本当すみませんでしたってば。もう。


『束縛』を解除する。どこかほっとしたように身体を動かすウリセス。そうよね、一昼夜縛られてたようなものだものね。


「リオ……」


「き、昨日のことはノーコメントで。とりあえず帰りましょう!」結局ここへ何をしに来たのかしら。はぁ、とため息をついた私におおいかぶさる陰が。


「リオ、すまなかった……」あああああ、まずい、まずいよ。何これ逃げられない。

「そ、それは。」何に対しての謝罪。肩からがっしりと腕を回されているので、動けません。何この体制。

「リオに殺せなどと。本当にすまなかった。そして、ありがとう。」

「あ、あの私も…なぐってごめんなさい。」うん。これは言わないと。言っとかないと。そこで腕をどかそうとすると、さらに力が入って、ぎゅっと、何これ、すっぽり腕の中なんですが。

「母の最期を、看取ってくれてありがとう。」

「!」

「引き延ばしにしていてもいつか受け取らなくてはならない時がくるのはわかっていた。それがリオで良かったと思っている。」

「………」そんなこと、言わないで欲しい。

「あれは、精霊の核で本来は消滅するものだが、まれに受け継げることもある。母があのような状態であったためいつかは受け取らなくてはならなかったのだが……なかなか、躊躇われた。」そりゃ、そうでしょう。私だって嫌だったよ。

「受け取ってわかったことだが、私は力も心も飢えていたらしい。ようやく身体が満ち足りたようだ。……リオ、」そこで、ウリセスは私を反転させる。

「昨日のあの謝罪は、どういう意味で?」いやもう、何真顔で聞くんですか。嗚呼もう、何かっこいい事しちゃったんでしょう昨日の私!戻せるものなら戻りたいあの時間へ。初代の力ください今。

「べつに、その意味は。私の、所為でアセンブラさんが…。それに……赤くなってたから……。」何子供のような言い訳になってるの私。これでもいっぱしの大人なんです。本当です。この程度のことさらっとかわせずどうするの。

「だから母のことはリオの所為ではない。赤くなっていたから、それだけ…?」ウリセスの笑顔がまるで私の心を見透かすようだ。何いきなり強気になってるの、何このSキャラ。ウリセス、そんなキャラじゃなかったでしょう!


「私は心も飢えている。それを満たせるのはリオだけだ。」そう言って、彼は私の額に口づけました。


「ありがとう。」そう言って彼は私を抱きしめた。



親愛なる友情のキスにドキドキしてしまったなんて、誰にも言えない。






「リオ、帰る前に言っとくけど、そのアザどうにかした方がいいわよ。」テオさんが首筋を指差した。

「え!?」そういえば、うっすら赤くなってるけれど。

「で?何かあった?」テオさんがやれやれという顔でこちらを見る。何でだろう。

「い、いや別に何も。」そう、あれは親愛に親愛をお返しのキス。別に意識することじゃないし。飢えてるっていうのも、多分母親を無くした心境からのことだろうし。

「…………あっそう。」その目は信用してないですね。

「ほんとですよ。」そう言って私は事情を説明した。

その後、さらにため息をつかれたけれど、それより新しい情報が入ってきた。

「ウリセスがパワーアップしたから、できること?」


どうやら、中立で管理職であった(皆忘れがちだけど)ウリセスの権限で一時的に水の精霊たちの被害を最小にすることはできるらしい。それは無くすことではなかったけれど、少なくとも聖生祭の間はどうにかなるようだ。


後で水の精霊王(現在の)と別れの挨拶をした時に知った。


「リオ!」テオさんが走ってくる。もうすぐ水門に入るのでぎりぎりだ。

「********・******」

「え?」耳元で言われた言葉。

「それ、本当の名前だから。リオには呼び出されてもいいわ。というか、呼び出さなかったら怒る。」そう言って私を見送ってくれたテオさんは、私を襲った時とは随分違う優しい顔をしていた。


「ありがとうございました。」


こうして、私は三日間という間だったけれど水の世界を後にした。





リオを見送った後テオは隠れていた男ににやりと笑う。

「何、そんなところで。」呼ばれたファネルは同じようににやりと笑いながら出て来る。

「いんや、あのアホの誓いをやった相手を見たかっただけだ。」

「あ〜、前途多難のようよ。リオ全く気づいていないし。」

「何だそれ。あれだけあいつが匂い出してるのにか。」

「うーん、まぁ人間だから我等の状態は見えないし、仕方ないといえば仕方ないけど…」テオは振り返る。リオの首筋の痕はどう見てもキスマークなのだが、本人がいつつけられたかも覚えていないようだ。

「仕方ねぇな。あんたがあいつに真名を告げたんだろ。なら俺は俺のすることをするまでさ。」

「ファネル、頼む。」そこでテオの口調が変わる。

「はいはい、お姫様は人使いが荒いってね。」もともとファネル自体もウリセスのことが気になってはいたのだが、テオから依頼されて正式に彼等に関わることができるようになった。

「仕方ないだろう、あの人の子供なのだから。」テオはそれほどにアセンブラを敬愛していた。だからこそ彼には幸せになってもらいたいのだが………。


「リオにはもう少し女性らしさを学ばせる必要があるな。」


その言葉を聞いたファネルが、あんたが言うか、と呟いていた。








進まないですな……。ようやく次で陰謀編に山場?

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