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ガールズトーク。

相変わらず、綺麗な人。


テオさんは部屋に入ると窓辺に歩み寄る。


そこも同じくバルコニーになっている。なんとなく私もその横に並ぶ。


「………謝らないわ。」


「!何を、ですか?」まだ、警戒は解けていなかった。けれど、いくらか柔らかく見えるのは彼女が女性と知ったからだろうか。


「あなたを襲ったこと。私はこの世界を継ぐ者として、『黒の術師』を見てみなければならなかった。私自身で。」


「声……少し低くしていたんですね。」心地よい今の声は、女性ではアルトだけど、それほど深くなく。


「リオは動じないのもの、面白くない。私に落ちない奴は居なかったのになァ…そんなに魅力が無い?」そう言ってこちらを見る顔は相変わらずお美しい。


「いいえ。動じない…というわけでは…ないですけど…」うん。今も現に言葉につまるくらいにはその美形さ加減にショックを受けています。


「……あの出来損ないと同じことを言う。」テオさんはくるくると表情を変える。こっちが本来の彼女の姿なんだろう。ポーカーフェイスの彼女は綺麗だけど、人とかけはなれた感じがした。


「出来損ないって、ウリセスのことですか?」


「他に何が?」


「あまり、気分が良くありません。その言い方は。」本当はそんな言葉尻、聞き流せれば良いのだ。こんな相手は特に。けれど、やっぱりできなかった。


「へぇ。リオでも怒るのか。……あいつが好きなの?」


「そういう以前の問題です。彼は出来損ないなんかじゃありません。」


「出来損ないは出来損ないだよ。そもそも、自分の能力をわざわざ低くしている奴のどこが優れているというんだ?リオ、あいつはな。本来なら私などよりも上なのさ。なのに、混血だからと理由をつけて次代をこっちに押しつけやがって。…めんどくさい男だよ。」


「………?どういう意味なんでしょうか。」出来損ないというのは、劣っている者に使う表現ではないのか。


「力は命、命は力。我等は須くそう出来ている。ならば、その力をわざと封じているというのは、生きることを諦めているのとどう違うんだ?だから私はあいつが嫌いだよ。そして出来損ないだと言うのはな。リオ、自分の命すら真剣に生きることのできない輩のことを言ったまでだ。」


「何故………?」ウリセスは、力を封じているのか。


「自分の立場では力は必要ないと、そう判断したのだそうだ。その方が波風立たないからと。………愚かな男だ。あの方は……先代はこの身すら惜しくないほどの王であったよ。だからこそ私はあいつをどうにかしたいんだ。……そのために、お前に協力してもらおうと思っていた。」


「先代…ウリセスのお母さん…先の水の精霊王。」


「そうだ。あいつがここにいる間に、あいつの封じている力を解放する。少々荒療治だが、お前には手伝ってもらう。否は無いな?」


「……わかりました。」


「ところで、お前、やっぱりあいつが好きなんだろう?」


は?


「何…で、そうなるんですか。」いけない、言葉に詰まった。


「いや、だだ漏れだからな。だいたいそんな匂いをまとわりつかせていて、襲われたりしたらどうするつもりだ!?」


「匂い?……ああ、これはウリセスが『誓い』を……」


「受け入れたんだな?なら、夫婦も同然じゃないか。何で否定するんだ?」


「い、いえ。だか、ち、違います。」嫌だ何この展開。不味いですよ。何さっきまでのシリアス。誰か巻き戻して。


「どういう事だ!?事と次第によってはお前とまた戦わなくてはならないが?」


「何でそうなる!!」


「人間は面倒だな。スキならスキと言ってしまえばいいものを。こ狡い『嘘』ばかりつく。」


「違いますっ!だから、そういうわけではなくて、………とりあえず、中へ。説明します。」どういう事だ。何これ何なのこれ。


もう、とりあえず、疲れたので普通に会話をさせてください。


『黒の総本』から笑い声が聞こえた気がしました。









時は少し前に遡り。


「すっごい雨ね〜」栗色の髪についた水滴を払い、輝く緑の瞳がきょろり、と店内を見渡す。

「いらっしゃい。」店主はこの雨の中の珍妙な客を見て驚く。

少女の連れは、銀色の髪に緑の瞳を持つ美丈夫と灰色の髪に橙色の瞳を持つ大男だった。どんな関係かは知らないが、どう見ても彼女が戦うとは思えない。なら、この集団は何なのか。


「待ち合わせをしているので、何泊かしたいのですが空いています?」少女は店主に気づくとカウンターに近寄って聞く。

「そうさな、休日は1部屋になってもらうかもしれねぇな。聖誕祭のおかげで、こんなさびれた街でもこの時期だけは人が入るからな。」


「それでかまいません。できるかぎり長く。」少女はそして後ろを振り返る。


「支払いは彼等がします。」そう言って笑った顔はとても楽しそうで。


「え!?」話をふられた方は、一瞬何を言われたかわからなかったようだ。

「は!?」


「よろしくお願いしますね。」少女はまた、一つ笑った。




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