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狂おしい。

「な、何これ!?」



リオです。どうして、息つく間もないほど次から次へやっかい事が降ってくるのでしょうか?



『リオ、ここの部屋を切り離せ』


「!?わかった。」目の前にいるのは、あの私を襲ってきた水の精霊、テオだ。


しかも、全身が半透明になりながら、狂うように床をのたうちまわっている。息を切らせ、叫びをあげ、物にぶつかり、ウリセスが押えているがどうにもならない。


「『遮断』『独立』『隔離』!」


一瞬にして部屋がすべて切り離された。


世界から。


これによって、この部屋には望まれた者しか入れないはず。


結界とはまた違うみたい。初代によると、全く違う世界を形成するらしい。


「あ…」テオがウリセスに押さえつけられているのだけど、どうやら発作のようなものは納まったらしく、肩で息をしている。


「……どけ。出来損ない。」その言葉に押されるようにウリセスがテオの上から退く。


ゆっくり起き上がると、彼は私をじっと見た。


「……大丈夫ですか?」


「問題ない……それより、出来損ないの心配をしたらどうだ。」思わずウリセスを見ると、彼も随分と顔色が悪かった。


「……どういう事……?」


「……問題ない。リオ…」そう言うわりにウリセスも苦しそうだ。


『誰かが無理やり精霊の力を使ったな。こいつらはダイレクトにその被害を受けたってわけだ。』


初代の言葉と、初代の知識の引き出しを引っ張り出すと、外の雨に気づく。


「人間め…愚かなことを…!」テオは立ち上がろうとするができないのだろう、手を床に着く。


しかしその姿は壮絶に美しい。純粋な力の塊である精霊ほど美しいというのは本当のことであった。リオは、一瞬その顔に見惚れると、『黒の総本』を見る。


『そんでな、リオ、ものは相談だが、少し精霊界へ行くか?』


「…………は?」



話しが、見えないんですが。








「行ったようだ。」ロミは庭を見つめながら言う。


「…、昨晩は酷かった。」月卿は屋敷内に居た人間で、水の属性が受けた被害をロミに話す。


「いいのか、月卿、『黒の術師』を自由にして?私だけしか残らないぞ。」ロミは昨晩の騒動を思い出す。


突然、リオの部屋に入れなくなったと思ったら、『黒の術』で置手紙。


曰く、精霊界へ行って来る、三日後には戻る。


どう考えてもヒロキの差し金としか思えないような愛想のない文章だったが、月卿から聞いていた被害を考えても仕方のないことだった。


昨晩降り続けた雨は、水の精霊を誰かが故意に利用して降らせているものだった。とても大きく繊細な術なので、気づける人間は少ないが、少なくとも、水の精霊と契約している人間はその被害は計り知れない。


彼らの悲鳴が精霊たちに降りかかるのだから。


おかげで、リオはでかける前にこの砦だけは雨が降らぬよう結界のようなものを敷いていかなくてはならなくなった。


そして目の前の池から水の精霊世界へと旅立ったのだった。



「……またあなたは…ベル、とかいったな、あの娘。」月卿は少しふてくされたような顔をした後、ロミに言う。


「!」ロミは顔には出さず月卿を振り返る。


「【魔法使い】だな。」やはりこの男にはわかるか。ロミは一瞬で警戒を解くと月卿を部屋へ促した。


「……私は長くない。あれを頼めるか。」ロミのその言葉に月卿は目を見開き、身体を硬くした。


「…あと…どのくらい…」消え入りそうな声はいつものそれではなかったが、ロミは唐突すぎたかと肩の力を抜く。


「あれが一人前になるくらいまでには、まだ居るだろう。だが、その先はわからん。あれの次の子も見てみたかったが……、いかに【魔法使い】といえど、寿命には勝てぬ。」


「………側に。」ロミは珍しいものを見た。まるでこの男が今にも泣き出すのではないかと思ったのだ。


「…いや、それはお前の自由だろう。こんな老婆の側に居たいなどと、物好きなことではあるが。」


「…っ。…」月卿は、顔をあげて一度ロミをにらみつけた。だが、それだけで、一度呼吸を整えると、すでにいつもの顔に戻っていた。


「娘は必ず私が守ろう。それが、あなたの望みなら。」月卿は静かに震えるような声で言った。


「それを聞いて安心した。」ロミは笑ったが、月卿は静かに部屋を退出した。

それを見送っていたロミが、ふと気づいた。



「ああ。……そういう事か。」くつり、とまた笑い、苦笑した。


「お前の願い…かなえてやりたいが…この身ではな。」ロミは笑った。今頃になって少女のような想いに身を浸すわが身の幸せを。


けれど、時は残酷であった。だから、笑うしかなかった。

ちょっと短いですが。

月卿ロミが萌える。次はちゃんと主役頑張ります。

※月卿口調変えました。(8/5)

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