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後手後手です。

次の日、朝一でウリセスの屋敷を出て王都へ向かう。

日の出より前に出たので街の店が開く時間には、たどり着けるだろう。

ヨアキムからいくつかの本を借りて載せた。その中にマナー本も入れてみた。


馬車で眠りながら、夜明けを迎え戦場に戻って来た。


王都のお膝元、アルバスの街。


どうやら店が開いてまもないようで、どの店も客はまばらだ。


「こんなもんかしら…」馬車を降りる前に手袋をして、ぐるりと指輪を覆う。


「まぁ、こちらでは違うみたいだけど。」恥ずかしいので。


何故、左手の薬指に嵌めてしまったんでしょう、私。

恥ずかしすぎる。これは初代には絶対言えない。というか、言わない。


そんな無駄なあがきをしてから、馬車を降りる。

「よし。」




店の名は覚えてないけど、確かここだったはず………



あれ?



「何か。」強面のお兄さんがいらっしゃいます。


「あの、ここって。」見覚え、ありますよ、その制服、刑部の人だ。


「違法な取引をしていたため、差し押さえになりました。申し訳ないが、他をあたってくれ。」口調は強くはなかったが、手を出せる状態じゃない。


「え〜!!」とりあえず、女の子らしい声を出して、がっかりして、路地まで歩く。


『黒の総本』を開く。


『何があった。』


駄目でしたよ、まさかまさか刑部が先に行ってるなんて。


『そりゃ連中も顔に泥塗られたようなもんだ、必死だろ。仕方ないな、夜に忍び込むか?』


「どうやって?」


『不本意だがお前一人でそんなことはできないだろう。あのキメラを治すぞ。』


「!わかった。」いずれこの店は跡形もなく片付けられてしまう。今見た限りでは室内は未だ調査中のようだった。物的証拠はすべて持ち出されているかもしれないが、入ってみる価値はある。


私は王宮へ向かった。




夜に動くなら仮眠を取った方がいい。その前に調べられることは調べて、ウリセスの怪我を治さなくては。

エセルバードに白の術師を借りたい旨を伝えるとその足で調理場へ向かった。


「え?イオウ?」そこで働く若い男性に声をかけ、聞く。


「はい、通常調理場に動物は入れないのですよね?」


「ああ、そうそう。困ってたんだよね、窓までとはいえ、問題あるから。だけど窓を開けないと換気が悪いんで。……イオウはエディアルにやたら懐いてたな。まるであいつが飼ってるみたいだったよ。」男は懐かしそうに、悲しそうに言う。


「いつ頃からその鳥は来るようになったんですか?」


「エディが来てからすぐのことだ。珍しい南の島にしか生息してない鳥なんでね、最初は皆驚いたよ。そのうち、一羽だけ帰り損ねたんだろってことになって。」


「南の島?」


「ああ、オルパディルさ。」



繋がった。




『そいつは、その男が密偵の可能性があるか、鳥が操られていたか、どちらにせよ今となってはもうわからんが…鳥の死体でもあればな…』


「死体?」部屋に戻ってきて、初代に報告。


『死体に魂がまだ残っていれば、それを使って痕跡をたどることが可能だ。まぁ、これもひとえに俺がグレートだからだな…』


「ホント!?」何でそんなグレートな技を黙ってるんですか、初代!


『難しいんだよ。人間なんか複雑だからな、思考が混ざって判別しにくい。動物ならどうにかなりそうだったから言ってみただけだ。』


「…どうにか、するわ。」彼等が死んで、遺体は未だ遺族に返していないはずだ。刑部の預かりとなっているはず。




「できたぁーーー!!」かん高い声がする。アリッサ、そういえば居なかった。何して…聞くだけ野暮ね。


「リオ様ぁ!でっきまっしたぁー!」びらっ、と衣装を持って来た。持って来ましたよ。


「…何コレ?」黒のマントと、黒のワンピースミニ。膝上。いや短すぎるでしょうこれは。あ、タイツついてる。ほっ。いや、でも何このブーツ。ブーツも長い。おまけに、


「何で魔女っ子の帽子?」黒いとんがり帽子が。


「それは標準装備でお願いしま…」


「却下。だいたい、こんなの着てどうするつもり?」


「『黒の術師』のコスチュームです!セラフィナ様のアイデアで!」うわ。来た。


そういえばそんなことも言ってたわね。


「リオ様ぁ〜着てくださいよ〜!」アリッサ。あなた私が断らないと思っているでしょう。


「着るわ。でも帽子は無理。目立ちすぎるわ。」たかがコスチュームと思うなかれ。アリッサの腕のほどは知っている。だからこれも着てみると最高に着心地は良いのだろう。


「え〜!」



そこで白の術師が来たと連絡が入った。

私は簡易の服に着替え、『黒の総本』を開く。

『ここでやるのか?』

「うん。白の術師に警戒させてはいけないし。私はあくまで普通に怪我したことに。」

『お前、あの傷口でそりゃ無理だろうよ。』

「これ以上疑う人が増えても大変だから。」できるだけ私が何者であるかは伏せておくのが良い。


『いいけど。隣でよかったな。お前、こっから歩いていけるか?』

「這ってでも行くわ。」ウリセスには話していない。隣の部屋に白の術師はいるはずだ。


『仕方ないな。はーい、それでは良い子の皆さんは真似しないように。135Pを開いて〜』いきなりテンション高いんですけど。

開いた先には沢山の数式と図形が。けれど私が読むのは…その下の術名。

「杉崎璃桜が命ず。『逆転』!」





その瞬間、激痛が私を貫いた。

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