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もう一人いる!?

『そりゃお前、挑発だろ。』


実体が無いので殴れません。なんてこと。


翌朝、『黒の総本』を開くと初代は待っていたかのように、語りました。文字だけど。


昨日の襲撃は単に四代目―ユウスケさんによる、初代復活のお祝いなんだそうです。いや、どんな関係ですかアナタタチ。


『あいつしつこいからな。正面切ったような単純な攻撃なんかしてくるか。お前をからかってるんじゃないか。それに、今なら弱いからな。本を奪うチャンスだ。まぁ、俺がいる以上、それは不可能だが。……グレートな自分が憎い。』


……どこを突っ込めばいいんでしょうか。とりあえず、そのユウスケさんは結構腹黒いえげつない攻撃をするタイプで、昨日のような単純な攻撃はしてこない、と初代は言うわけですが。では防がれる前提で用意していたということでしょうか?グレートでエクセレントな初代の力を知った上で。(って本人が言うので。)


『俺がお前と正式契約したら、発動するようにしてあったんだろう。あの娘の身上を調べれば少しは何かわかるんじゃないのか。』


「色々疑問があるんですが。」ベットに起き上がった状態で聞く。


『面倒。』


「燃やしますか。」


『悪かった。昨日の術は本当はもっと鍛えないと使えないんだ。急だったからな。』


そうでしょうとも。でなければ、二日酔いのような見事な頭痛が今も鎮座ましてるわけがない。


『おかげで、あいつの居場所もわかったからな、そう怒るな。』


何だって。


『『開放』した瞬間、術は術者に返る。それを受けないよう人を立てて犠牲にするわけだ。ああ、リオは相殺できるぞ。で、その時どうやっても『媒体』と術者の間の糸は残る。こちらが切れても、術者側の糸はすぐに燃やしたとしても、位置くらいわかるもんだ。まぁ、ひとえにこのグレートな俺の能力故だが。…聞いてるか?』一瞬、本を閉じようとしたのは出来心です。


『あいつは、オルパディルに居る。』


確かそれって、海を越えた島の名前。


『そこと何らかの関わりがある人間が、この王宮にいるってことだ。』


じゃあ、その人物を探せば…


『だが、それは今回の件だけだぞ。キメラの妹は別口だ。』


え?何で。


『リオは馬鹿だなぁ。ま、そこがいいんだけど。キメラの妹の術を『吸収』したろ?糸はここを指していた。ということは、犯人は別にもう一人存在するってことだ。』


ややこしい。初代の大変そうな因縁対決はひとまず置いておこう。馬鹿って言うな。

挨拶で人を殺す人が敵なのかと思うと気が滅入るけど。


セラフィナさんを襲った犯人は確実にここにいた。そもそも動機がわからない。よくある大奥の戦いほど、価値のあるポジションとは思えないのよね、妃候補って。


この国の政治は議会によるものだし、王族といっても、象徴に近い。軍部は法で定められているから、議会や王族、軍部のどれかひとつが特出して独裁に陥ることはまず無い。


で、何の権力争いなのかしらと。


そもそも、セラフィナさんが候補になったのはその光の属性からで、精霊が言質に弱いなら、最初から彼女は王宮のものとも言える。ウリセスが王宮に逆らうはずはないから、彼女に何かあっても無くても、彼の家と家族がどうにかなるわけでもないし。


彼女を殺すメリットが見つからない。


とりあえず初代への疑問と問題は後にして、妃候補に会ってみようと思った。


頭痛が治ってからね。





その日、午前中休んで―ウリセスが心配して見にきてくれた。やっぱり保護者ポジション?―昼食が終わって少しうとうとしていると、キラキラが現れた。


「事件は聞いている。大変だったな、リオ。」エセルバードは言う。

いや、そんな、ぜんぜん心こもってない口調で言われても、嬉しくないんですが。


「頭痛がすると聞いてな。…失礼。」そう言ってエセルバードはこつん、と額を合わせました。


え、えええええ!?

視界が全部キラキラで覆われてます!!ギャー!!


「ルーク・イクス。」キラキラな髪が一瞬ぼやけたと思ったら―ああ、光ったのか―すっとエセルバードの顔が離れていく。


「な、何…」頭の奥の鈍痛が、綺麗さっぱりなくなっていた。


「これで良いな。あまり無理はするな。」そう言って、キラキラは立ち去っていきました。


どうやら、警備体制の会議があるそうで。そんな忙しい中訪れてくれたのかと思うと、ドSと呼ぶのはやめようかな、と思った。


後でこの話をアリッサにしたら、光の精霊術らしい。そういえば、王族は光属性だった。

でも、アリッサはこうも言った。


「わざと額をつけるなんて、リオ様の反応を見たかったに違いありませんよ。手をかざすだけで十分に術は使えるんですから。」



前言撤回。やっぱりドSで。





その日は、図書館に出入りした人をチエックすることで終わった。

これといって何か糸口があるようにも思えない。

あと、8日。


タイムリミットは迫ってきているのに、一向にわからない。


暇潰しに『黒の総本』を開く。


「トリップ体質を利用した術って何なの?」


『有体に言えば、指定した時と場所へ移動できる技。世界を越えてね。』


うわ、色々反則だ。


『顔に出てる。…でも、俺にしか使えないから意味無いぞ。』


へ?そうなんですか。


『そんなもんがゴロゴロ転がっててたまるかよ。俺の特殊能力だって言ったろ?』


いやいや聞いてない。


『だが、お前が凡庸なら、あいつは天才だからな。迂闊に渡すわけにはいかない。だから王宮に…』


字が途切れた。


「何?」


『いや。他に聞きたいことは?』


何か誤魔化されたけど今はよしとしよう。


「四代目はどんな状態なの?初代と同じように本なの?」


『わからん。あいつが俺を刺した後に王宮から消えたと記録にあった。当時のことを知る人間は既に…ああ、一人いるか』


え?誰か居るんですか。


『ウリセスだ。あいつ、ユウスケと何度か会ってるぞ。最も、あいつがまだ子供の頃の話しだからあてにはならんが。あと、精霊で言うなら、炎の精霊王』


「え?」


『ユウスケは精霊術も使えた。というか精霊に気に入られるんだ。歴代の『黒の術師』は。とりわけ、炎の精霊とは相性が良くて―攻撃的だから―よく使っていたな。』


いや、なんかとんでもない人みたいに聞こえますけど。そんな人を相手にしろって言うんだろうか。


すごく不思議なのは、この世界では精霊の力がベースにあるので、その上で、魔力を持つ人間は魔法使いとして魔法を使えるわけで、『黒の術師』とはいえ普通の人間―日本人だった私たちが、いきなり精霊術を使えるものだろうか?


そんな疑問をぶつけてみた。


『あー。まぁ、仕様だ。』初代は私を見て、とても長い溜息をついた後に言いました。


何だそれ!(しかもかなりなげやり。)


『ウリセスはミオとも何度か会ってるはずだから、日本文化には詳しいぞ。そろそろ白米恋しいだろう?』


誰かツッコミ入れてくれませんか。


ウリセスはそんなこと一言も言わなかった。…まぁ隠し事をしているという点では私も同じだから、責められないか。


彼ともう少し話す必要はあるかも。




アリッサから妃候補と会う日程の調整を聞くと、やはり1日に全員と会うことは難しいようだった。


仕方ない。調整と合わせて調べていくしかないか。それから、アリッサに食事を自分で用意したいと話した。初代の話ではないけれど、確かにそろそろ日本食が恋しかったし、食材を買いに街へ息抜きをしたかった。それに毒殺を恐れる必要はないかもしれないけれど、防止にはなるだろう。


あとは、その間にセラフィナさんと、亡くなったミリィさんと、昨日亡くなった方の身辺調査。


やること山積みだなぁ…。


エリスさんが付き添うことで街へいける許可が出たのは次の日の朝。この手の処理が早いのは良いことだと思う。



ベットにもぐりこみながら、考える。


トリップ先で主人公はたいてい戦うのだけど、私は未だ怖くて仕方が無い。


いきなり人が死ぬなんて、日常生活上では体験したことがなかった。命が無くなると人は物のようになってしまうのね。


どうして主人公たちは戦えたのだろう。私にはそんな気力も体力も精神力(ここが一番足りない気はする。)も持ち合わせていない。


なのに、戦うのだろうか。戦えるのだろうか。



「怖いよ…」それに答える声はなくて。



一人なのがいけないんだ。一人では戦えない。戦うための仲間が欲しい。


「口説くか。」ウリセスはそんなこと必要ないと言うかもしれないけれど。私が納得していないのだ。あれだ、いきなり来た新人をぽっとあてがわれ、『よろしくね』と上司に言われたら微妙な気分になるだろう。アレに似てる。

せめてクライアントとぶつかっても防波堤になってくれるように育てるのが基本。今の私は戦力的に彼の足手まとい。新人にすらなり得ない。それがもどかしいのかもしれない。


どうあがいても戦うしかないのなら、自分のパートナーとなる人とはコミュニケーションをとる必要がある。明日は街で美味しい酒でも買ってウリセスと飲んでみよう。彼には助けられてばかりなのに、満足にお礼も言えていなかった。


「明日はちゃんと向き合おう。」


自棄酒するサラリーマンの心境が今なんとなくわかった気がした。酒でも飲んでなければやっていられない。


与えられた知識だけが空回りしているような気がして、情けなかった。

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