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なんだかヘビーな家庭事情。

※ちょいシリアスです。

「私の属性は何だと思う?」ウリセスは切り出した。


「水ですか?他にもありそうだけど。」


「そうだ。主な属性は水になる。私の母は四大の水の精霊王であったから。」




はい?



今、とってもさらっと、重要なことを言われませんでしたか?


「精霊、王?」はい、整理しよう。



精霊の王様、つまり長。とてつもない力のある精霊。つまり、人でない。



人でなし。



ひとでなし?



「正確には、ハーフだ。人と精霊の。80年前に誕生したらしいから80歳ということになる。」



は、は、80歳ですか!?おじーちゃんじゃないですか!!!


こんな、見目麗しいのに、おじーちゃん・・・。


「ええと、それで、続きどうぞ。」私はまだカルチャーショックが抜けず、呆然とウリセスを見る。


「父は人間だったが、魔法使いだったから、魔力もある。」


「・・・・素朴な疑問は沢山ありますが、後でまとめて聞きます。」色んな意味で規格外ってことで。


「父が研究のために臨月の母に『魔石』を埋め込んだおかげで、私が生まれたはいいが母は眠りに入ることになった。眠りというのは、人間で言うところの死に近い。」


「『魔石』を埋め込む?」なんだか嫌な話しになってきた。


「様々な属性の魔力を蓄積した『魔石』を埋め込むことで子供にその属性を持たせようとした、という実験だ。」


「母体に影響は?」


「あるから、死ぬ。名だたる魔法使いであっても四大を死に至らしめたのは極刑に近く、危うく人間世界との戦争になりそうだったが、当時の殿下ー今は引退された院が尽力くださり、私は生きながらえた。」


「それで、結局ウリセスさんは何の属性なんでしょう。」


「主属性は水。その他に四大と、恐らく僅かながらに闇も。」


闇、それは初めて聞いた。


「黒と闇は違うからリオとは異なるが。闇というのは水の先の属性だから、性質がとても近い。殿下とセラフィナは光の属性だ。王家は代々光の属性を受け継いでいる。」


「・・・・そうですか。」何だかとても軽く話されたが、とっても重い。


「リオ、その母の記憶を受け継いだ私が言えるのは、黒というのはこの世界に無い。限りなく黒に近い灰は作れても、黒は作れない、というのが精霊の間での常識のようなものだ。」


「この世界に、無い?」とても、とても嫌な予感がする。



ウリセスは庭から視線を外し、私を見つめた。



「リオ、君は何処から来たんだ?」




言えるわけ、無いだろう。






「はあぁぁぁぁぁぁっ・・・」

特大の、溜息が零れる。


「リオ様、大丈夫ですか?」ヨアキムが言う。


ここは私の心のオアシス、図書館ー基、図書室。


ヨアキムに紅茶を入れさせることに成功して、机につっぷした。


「・・・重い。」


「?」


「ここのご主人の家庭事情を見たくもないのに垣間見てしまったので、とってもブルーな気持ちです。」


「・・・旦那様が・・・そうですか、お話になられたのですね。」お?ヨアキムも知っているのか。


「はい。私がお仕えして早40年、旦那様はこの家に縛られております。」私の目線を性格に察知して応える。


ヨアキム、だんだん人間離れした技を出してくるな。以心伝心、心が読めるのか?エスパー?そしてヨアキムの年齢が不詳です。


ヨアキムによれば、問題の戦争勃発の原因の父親は既にこの世にいないらしい。ウリセスを見ることなく死んだらしい。


なんてはた迷惑、なんて無責任。


四大を失った水属性は一時とても酷い状況で世界に影響を及ぼしたそうだが、新しい四大が立ってからは持ち直したそう。


そして両親の罪を背負ったウリセスは、人間と精霊の属性管理をするため王宮に永劫仕えることとなり、その中間に立っているらしい。


基本的にはこの屋敷から出ることは許されていないそうな。


軟禁、ですか。


おかげで暇をもてあましたからこのような図書館に相成りました、ということらしいのだが、


「重い・・・・」また、はぁ、と溜息をつく。



結局ウリセスは中庭で私の返事を待つことなく庭から退出して行った。いっくらこの屋敷が広大な敷地にあるといっても、ここから一生出れないというのは、どういう気分なんだろうか。それとも半分人ではないから平気なんだろうか。


「だから、属性に何かあればわかる、と最初に言ったのね。」馬車の中で『私が知る限り』というのは、文字通り、ウリセスが知らなければ誰も知らない、ということなのだ。


属性は生まれついた時から精霊に祝福された証、人間世界での戸籍に登録が無くても、精霊の世界では本人に関係なく誰がどの属性かわかるのだという。


そこに無い私、というイレギュラー。


そりゃ、疑うわけだ。


では、最初からウリセスには私がこの世界に属していないことはわかっていたのだ。まぁ、だからといって、素直に話すかといえば頷けない自分もいて。


「全ては明日、ということで。」もう、ちょっと許容量を越えました。美形の悲劇なんて私の生活範疇には存在しえません。ウリセス、陰険だぞ。闇属性を持ってるだけに暗いのだろうか。じわじわと周りから攻められているような気がしてならない。


ヨアキムにもう一杯紅茶をもらい、その日は終了。





どうにも一緒に食事をする気分ではなかったので、部屋で取ることをお願いした。何逃げてるんでしょうね、私。


そろそろ和食が恋しいです。ご飯とお味噌汁が食べたい。粗食が恋しい。


そろそろ私も捜索願が出されているのではないかな、あちらの世界で、とふと思って泣きたくなった。


ウリセスの馬鹿。


両親の話しなんかするから、少しだけ恋しくなってしまったではないか。


私の故郷。私の両親。私の仕事。私の友達。私の世界。



帰りたい。本当にそう思った。

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