第42話:困った
「何の変哲もない日でした。
第二王妃以降は第一王妃の居館とは別棟で、みんなサロンでお茶をしていました」
ディアナにソファーを勧められ、向かい合って座るとディアナが話し始めた。
「すると、突然…悲鳴が聞こえたのです」
控えの近衛から聞いた話では、出仕の財務局の貴族がいきなり、女官を斬りつけたとの事でした」
(女官といえば貴族令嬢だ。切り捨て御免で済む相手でも、文化でもない)
「陛下のいる宮中での、死傷事件です大事なのですが、斬りつけた貴族は他にも止めに入った者を斬りつけて、最後は自死したと聞きました」
「罪も問えず、理由もわからない?」
ディアナは頷いた。
「それが、始まりでした。翌日以降は、給仕が衛兵に、衛兵がメイドに、メイドが貴族に斬りかかる事件が多発しました」
「グロリアーナ王女から聞いた話と一致します」
(でも、自死とか、加害者は魔族ではないな、魔族なら潜み大物を狙うはずだ)
「城内はいつ誰に、斬りつけられるかわからない状況になって、出仕の者が登城しなくなり…」
「どうなりました?」
「今度は、軍務卿が勝手に近衛以外の騎士団を地方に派遣し始めました」
「はぁ?」
(なんだそれ?王都の戦力を減らす目的?よくわからん)
「陛下はこの件で、軍務卿を解任しようとしたのですが、財務卿を初め有力貴族の反対にあい保留となってしまい」
「国王の判断が覆されたということですか?」
「はい、陛下は近衛騎士団長と話され、反乱の恐れありと、グロリアーナ王女をラフィール王国に使者として…」
「なるほど…ハイライト王国の問題はラフィール王国にも大きく影響しますからね」
「グロリアーナ王女を、送り出した後になりますが…
王子や王女の姿が見えなくなりました」
「見えなく?」
「私の娘を含む、三人の王子と、五人の王女が消えました」
「どうなってしまったのか…誰もしらないのです」
気丈に見えたディアナが涙を見せる。
ここで一人、不安と心配に耐えていたのだろう。
「私はその時点で、陛下よりこの部屋に立てこもるように言われました」
「それで結界が…」
「貴方の力に比べれば些細ですが、気休めにはなります」
「いえ、第二位階魔族までなら、退けられる力の結界ですよ。上級聖女だったのですね」
「はい、一応ですが…」
「では、それ以降は…」
「ここに来て下さる。侍女や、近衛騎士くらいです。昨日は切羽詰まった面持ちの近衛騎士団長も来られました」
(先ほど侍女が言っていた人か…)
「何か言ってらしゃいましたか?」
「逃げてくださいと…」
俺は息をついた。
「逃げなかったのですか?」
「陛下や王妃、娘を置いて逃げるわけには…」
(困った、困った、困ったどうすればいい)
「ディアナ王妃は、軍務卿に会っていますか?」
「解任騒動以降ですよね?
王妃、側妃の居館の導線は人と会うことが少なく…」
「ですよね…」
「聖女から、陛下に嫁いでからは自由がありません。
貴方。王族はお止めなさいね」
(窘められた)
「あ、そう、ただ、ここから中庭を歩く軍務卿を見かけたことがあります。
人物を隠すような、黒いモヤが見えました」
(ふむ、上級聖女の目を信じるなら財務卿は、魔族のなり代わりか…)
「国王はここには?結界を張ってからは一度も…」
「王令で戦争準備がなされていることは?」
「近衛の方からそれとなく…」
「王子や王女の行方に心当たりは?」
「まったく、ですが財務卿のことを考えると…
大聖女シーフさん」
「はい」
クスリと笑われた、あ!
「ち、違います大聖女じゃないですよ。心を盗んでいく大泥棒ですよ」
「魔族の仕業ですよね」
「…間違いないでしょう」
***
俺はディアナ王妃との会見後、地下牢に向かった。
今回、人々は四系統に分かれていると思う。
1.魔族のなり代わり
2.洗脳などと思われる人
(寄生の可能性もあり)
3.普通の人
4.姿を消した人
魔族はなり代わるとき、その人物を殺すことが多い。
洗脳はその人自身だ、解除してあげられれば元に戻る可能性がある。寄生生物に脳が支配されてたら…おお怖。
普通の人は、早急な救出が必要だ、こんなのPTSD案件だ。
姿を消した人…
以前、俺が女官見習いのとき、魔族はシャルたち王女を、魔神への贈り物…ようは供物にしようとしたことがある。
それなら、即時に殺していない可能性もある。
それで、囚われているなら地下牢だろうと安易に考えたのだ。
(藁にもすがる気持だが…)
牢へ向かう通路だが…
見張りは誰もいなかった。
俺は階段を下に下に降りていく。
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