第2話:勇者達
女は、女子高生くらいで制服を着ている。黒髪でロングボブ。綺麗な顔立ちの娘だ。
男は、一人は大学生風で茶髪で長身痩せ型、アイドルのような風貌だ。
もう一人は…高校生くらいで…中肉中背。特に特徴がないのが特徴のような男。
(間違いない…この男は、俺だ)
いや、正確には「かつての俺」だ。
「おお、召喚に成功したか。良くやってくれた、聖女と聖人たちよ。ステラフィールも良くやってくれた」
王は感動したのか腰を浮かせていた。
「どこだここは!」
茶髪が大声をあげると、こちらに向かってくる。俺に手が届くまで近づいたところで槍を持った騎士に止められる。
「何すだよ。巫山戯るなよてめえら」
「ここは何処ですか?説明をお願いします」
男子高校生が説明を求める。
女子高生は男子高生の陰に身を隠すようにして縋り付いていた。
ああ、そうそうこんな感じだったっけ。
王を見ると、俺を見ていて、お前が説明しろと目で訴えていた…
ふう…
と心のなかで溜息をつくと、召喚された者たちを見る。
「選ばれし、勇者よ。召喚に応じて頂き感謝いたします」
俺は、持ち前の美貌と、営業スマイルで勇者たちに語りかける。
「どういうこと…私応じてなんかないよ」
女子高生が震える声を漏らす。
そりゃそうだ、俺が選んで、有無を言わさず神が引き込んだのだから。
「勇者とか召喚ときたか。おもしろい。魔王でも倒してくださいってか?」
「はい、この世界は魔王の軍勢により苦しめられております。どうか、勇者様のお力でお助け頂けないでしょうか?」
「僕は戦う力なんてありません」
「大丈夫です、心で感じてみてください。神から授かった、能力が見えるはずです」
俺がそう言うと、三人は目を瞑り確認を始める。
「おおお、根源の炎で全てを燃やし尽くす。炎の勇者だってよ。ステータスまで数値で確認できやがる」
茶髪が、大声で叫ぶと、俺に顔を近づけ挑発するような仕草をする。
「そのお力でどうかお助けください」
俺は、笑顔を貼り付けたまま、前で重ねた手が怒りで震える。
「何、震えてんだよ可愛いー」
(勘違いするんじゃねえ!)
「私は、渡る風は、全てを無に帰す暴風。風の勇者だそうです…」
「素晴らしいです。どうかお助けください」
「僕は、星を統べる覇者。至高の勇者とあります」
室内に歓声が上がる。
「なんと素晴らしい。過去に聞いたこともないお力を得られていらっしゃるようです」
俺は男子高生の手をとり、喜ぶ振りをした。
「でも、戦うとか無理です」
(うんうん気持ちはわかるよ)
「そうそう、俺は戦ってもいいけど。なんか特典がないとねえ…」
茶髪は俺を睨めつけるようにして、足先から頭まで見る。体中に鳥肌が立つ。
「わ、私は、神に仕える身ですので…」
「こっちは、いきなり呼ばれて、この世界を苦しめる魔王を倒せって言われてるんだ。神とか言ってないで誠意を見せるのが筋じゃないの?」
肩に手を回すな、気持ち悪い。
騎士は何やってんだ。俺を守れよ。
「帰してください。家に帰らせてください」
「申し訳ありません。それは叶ません。星並びを見て、神に願いの届く日でないと送還の儀もできないのです」
帰すくらいなら召喚したりしない、召喚は一方的に、負担を押し付ける破綻したシステムなのだから…
「ですが、帰る方法はあります。また、来られた世界では、時間は経っていなので安心してください」
これは嘘ではない。実際帰ると時間はほぼ経っていない。
「先ずは宴を用意しております。どうか、ごゆっくりしてお考え下さい」
騎士と神官に促されながら三人は移動させられる。
ちょっと待て茶髪、俺の手を離せ!
いつの間にか俺の手を取り、一緒に連れ出そうとする茶髪。
「お離し下さい、勇者様」
「良いだろ来いよ」
俺は茶髪に魔法で電流を流す。
「アッツ」
静電気くらいの電流だが、茶髪は目を白黒させ俺を見る。俺は茶髪が手を離した隙に数メートルは離れていた。お辞儀しつつまた後ほどと言って王の方へと向かう。
***
「ステラフィールよ、今回の召喚大儀であった」
「ありがとうございます陛下」
玉座に座った王にカーテシーで応える。
「なんとか三人つつがなく召喚に成功し肩の荷がおりました」
「結構な能力の持ち主だった。儂は感動したぞ」
「ですが、戦いを知らぬ世界から来た方々のように見受けられました。戦場に赴いていただけるように誘導しなければいけません」
「うむ、頼んだぞ」
「………今なんと?」
「頼んだぞステラフィールよ」
「わ、私にやれと?」
「そうだな、お主に褒美をとらせんとな」
「いえ、褒美などいりません、ですので勇者の誘導は…」
「よし、儂の愛妾にしてやろう」
「遠慮致します、何考えてるんですか?私など陛下のひ孫と同じ歳じゃないですか」
「では、儂の息子との婚姻はどうだ?年齢的にも丁度良いのがいるぞ」
「ご遠慮します、わ、私は神に仕える身ですので」
「神職などいつでも辞めさせるわ…そうだな、では勇者の誘導か、儂の愛妾かどちらか選べ」
「なんでそんな二択になるのですか、報酬の話でしたよね」
「儂のものにならないなら、いじめてもいいかなって」
「子供ですか!
良いです、分かりました、勇者の面倒はみます」
俺はそう言って、部屋を出ることにした。
「いつでも待ってるからな〜」
「待たないでください!」
お読みいただき有難う御座います。
少しでも面白いと思っていただけたら、どうか★をお願いいたします。
作者が折れないため是非ご協力ください。




