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悪霊令嬢 あくりょうれいじょう ~とんでもないモノに憑りつかれている私は、そのまま異世界に転生してしまいました~  作者: にわとりぶらま


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第090話 エマとお買い物

 私は今、エマと二人で帝都の商店街に買出しに出ている。先日、ミーシャと約束したお菓子の材料の買出しをする為である。といっても、私は帝都の街並みについては、診療所との行き帰りの道筋しか知らないので、エマにお願いして案内をしてもらっている訳である。


 日本人転生者が何人もこの世界に来て、日本の技術を広めているといってもその技術は偏っていて、この世界には電気やガスなどのインフラはまだ整っていない。なので、商店街は日本のスーパーマーケットやコンビニのように洗練されたものではなく、やはり文明レベルにそった露天商の様な物が多い。店舗を構える店であっても、テレビなどで出てくる昭和初期の梱包も冷蔵もしていない品がただ並べられているだけである。


 私自身も日本の買い物感覚で手ぶらで出ようとしたときに、エマから忠告されて初めて気が付いたことがあった。


「レイチェル様、食材を買いに行くのですよね?」


「そうよ、どうかしたの?」


「ちょっとお待ちください、買い物かごを持ってきます」


 そう言って部屋から出たばかりであるが、エマが部屋に引き返して買い物かごになる手提げ袋を持ってくる。


 日本では手ぶらで買い物に行って、店でビニール袋を貰って運ぶのが当たり前になっていたせいで、私はその感覚で買い物に出かけようとしていたのだ。きっとエマからすれば世間知らずのお嬢様に見えたに違いない。少し恥ずかしい。


 そんな出だしではあったが、私たちは商店街に辿り着き、お菓子作りの買い物に励む。書店には一度行ったことがあるが、食料品を取り扱っている店を見るのは初めてである。私は異世界の食材にどんな物があるのかと好奇心を抱きながら、店舗を巡っていたのではあるが、これぞ異世界の食材!といった派手なものはなく、どれもこれも前世の世界と似たり寄ったりの物ばかりであった。


 ただ、先にも述べたとおりに、この世界には電気などのインフラが整っておらず、冷蔵や冷凍技術も魔法だよりになるので、そんな品は貴族向けの高級食材だけになるそうだ。なので、一般人向けの商店では常温での販売が常であり、少し痛んだものが売られていたりする。特に肉などはその日に捌いたものでなければ臭くなるそうだ。そして、鳥などの小さな生き物に関しては、注文を受けてから〆て解体するらしい。


「レイチェル様、あの鶏、丸々太って美味しそうですよ」


 エマがそう言って指差すのは、生きた鶏である。私の目には生きている動物としか見えないが、エマの目には食材として映るようだ。


 こうして前世の自分を考えると、私はしがない日本の一般市民のように考えていたが、その生活も異世界からみると、貴族レベルの生活をしていたように思える。


「エマ、ごめんない…私は生き物を〆る所を見たり、血を見るのが苦手なの…」


「はい、わかりました。それより今日は豆と砂糖を買いに来たのですよね、その場所に行きましょうか」


 年上の私が、年下のエマに手を引かれて、精肉店から離れるという構図は少し恥ずかしい状況であるが、苦手なものは仕方がない。


 そうして、私は穀物類が売られている店舗に向かう。ここにある店舗の中では比較的大きな店舗で、店の隣には直接荷馬車で積み下ろし出来る場所まで用意されている。店舗の内も奥の袋詰めされた物から、店頭に大きな籠に詰められた量り売りするものまで用意されている。


「それで、レイチェル様、どの様な豆をお探しですか?」


 エマにそう尋ねられるのであるが、店頭で量り売りされている豆もかなり種類がある。一つ一つ確認しながら捜すのも時間が掛かるだろう。


「ちょっと、店員さんに声を掛けようかしら」


 私は店頭で店番をしている店員に声を掛ける。


「あの、すみません」


「はい!なんでしょう!お嬢さん!」


 威勢のいいおじさんが私の声に反応してくれる。


「お菓子に使う豆を捜しているのですが、その白い豆で白いんげんか白花豆と言うものはありますか?」


「お菓子作りに使うかどうかは分からないけど、白い豆ならあるよ! こっちの豆だね!」


 そういっておじさん店員に案内してもらうと、白い豆のコーナーに案内される。


「いっぱい白い豆がありますね、どれがいいだろ…」


 そう思いながら、チラリと豆の値札を見る。どの豆も書店での本の値段を考えればかなり安いものである。


「とりあえず、この五種類を頂けますか?」


「はい!ありがとうございます!この五種類ですね? 量はどれぐらいにしましょうか?」


 私はエマに振り向くと買い物袋の中から、いくつかの小袋を取り出してくれる。


「この袋に入る分量で」


「では、升一杯分ぐらいですね!」


 おじさん店員が袋詰めをしてくれている間に私は店内を見回すと、この店は穀物類だけではなく、塩や砂糖、油なども取り扱っている様で、量り売りをしているものや既に瓶詰されたものまで並んでいる。


 餡を作るには砂糖も必要である。自室に戻ればいくらかの砂糖はあるが、それはお茶に使うものなので餡を作るには分量が足りない。折角なので砂糖も買っていこうと思う。


「すいません、砂糖も貰えますか?」


「どの砂糖ですか?あと量り売り?瓶詰?」


 種類を問われたので瓶詰の容器を見ると白、小麦色、黒の三種類がある。こちらは日本と比べてかなりお高い。


「では、三種類一本づつもらえますか?」


「あいよ! ありがとう」


「エマ、買い物袋はもう一つある?」


「えぇ、ありますよ、どれだけ買うか分からなかったのでもう一つ袋の中に入れてきました」


 エマはそう言ってもう一つの買い物袋を買い物袋の中から取り出す。このあたりはこの世界では常識なのであろう。逆にもとの日本が便利過ぎるのだ。


「では、砂糖の方は私が持つから、エマは豆をお願いね」


「よろしいのですか?」


「いいのよ、小さなエマに全部持たせることはできないわ」


 この世界の貴族としてはエマに全てを持たせるのが正解であるが、それでは私の良心が痛む。


「ありがとうございます!レイチェル様!」


 エマから感謝の言葉が送られるが、私の良心の呵責の為に行っているので少し心苦しい。


「エマ、買い物も終わった事だし、この後、少し書店に寄って見ない?」


「書店ですか?」


 エマの口角が少し上がっている。恐らくマルティナの漫画を読んで他の作品も見たくなったのだろう。


「じゃあ行きましょうか」


「はい! レイチェル様!」


 こうして、二人で荷物を抱えながらも軽い足取りで書店へと向かった。




連絡先 ツイッター にわとりぶらま @silky_ukokkei


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同一世界観の作品

異世界転生100(セクレタさんが出てくる話)

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もご愛読頂ければ幸いです。

※はらついの次回は現在プロット作成中です。


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