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悪霊令嬢 あくりょうれいじょう ~とんでもないモノに憑りつかれている私は、そのまま異世界に転生してしまいました~  作者: にわとりぶらま


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第240話 たらい回し

 私達の馬車はジュノー家のタウンハウスというか、会社の敷地に近づき、出入り口である正門が見えてくる。しかし、すんなり入れるのではなく、数多くの馬車が順番待ちをしている。


「これって、そんなにマルティナのお父さんの面会希望者がいるの?」


「いや、荷物の運搬も多いわね…帝都で色々なものを仕入れて、領地内で加工して、それをまた帝都で販売しているのよ。見て、荷物の搬出の馬車も出てくるでしょ?」


 マルティナのいう通りに、敷地に入るための馬車が並んでいるのと同じぐらいに、頻繁に敷地の中から荷物を積み込んだ馬車が出てきている。


「いや、本当にタウンハウスではなく、会社みたいね…」


 そう言う事で、私たちの馬車も、入場の順番待ちの列に並んで停車する。その私たちの馬車の後ろにもすぐに別の順番待ちの馬車が並び始める。


「あー! しまった! 間に合うかな!?」


 後ろの馬車の御者が声を上げている。


「ねぇ、マルティナ、後ろの馬車の人があんな事を言っているけど、かなり待たされるの?」


「わかんない… だって、学園に来てからここに来るのは始めてだから…」


 うーん、私もあまり人の事は言えないが、マルティナも実家にはあまり連絡をとらない方である。


「ねぇ、今まであまり家の事は聞かなかったけど、やはり期待されたり失望されたりがあって、家族仲はよくなかったりするの?」


「うーん…」


 私の質問にマルティナは頭を捻る様に考える。


「どちらかと言うとね、映画やドラマとかで出てくるでしょ? お金持ちの子供がお金だけ与えられていて、いつも家には親がいないとか、関わらないやつ、父親はそんな感じなのよ」


「そ、そうなの…」


 私は短く返す。一見して、憎しみ合っているとか、いがみ合っているより、マシな状況に聞こえるが、私はマザーテレサの言葉を思い出していた。


『愛の反対は憎しみではなく無関心だ』


 これは別の意味でかなり厄介であるかも知れない…興味のない人にいくらものを進めても興味が湧く事がないのと同様に、マルティナの親がマルティナ自身に興味や関心を持たないのであれば、マルティナがいくら訴えかけても暖簾に腕押しの状態になるであろう。


 普通の親なら、婚約破棄に怒りや動揺を見せるかも知れない、しかしマルティナの親はマルティナに無関心で、しかもこの会社のようなタウンハウスを見る限り、かなりビジネスライクな生き方をしている人である。マルティナが婚約破棄して、公爵家との繋がりを持たない存在になれば、簡単に捨てるかも知れないのだ。


 この事を踏まえて、ゲームの中のマルティナのキャラを思い出してみると、構ってちゃんキャラだった事を思い出す。しかし、それは無関心な親の元で育てられたマルティナが、精一杯に自身の存在をアピールする為の行為だったのかも知れない。誰かに自分の存在を認めて欲しかったのであろう…


「マルティナ、私はちゃんとマルティナの事を見ているからね、安心して…」


 私は思わず、マルティナの事が可哀そうになって言葉に出してしまう。


「な、なによ?突然に…でも、ありがとう…ちょっと心細かったのよ…こうして付いてきてくれるだけでも心強いわ」


 マルティナは突然の言葉に戸惑いながらも、少し嬉しさを滲ませる。


「それより、そろそろ私たちの順番ね」


 マルティナがそう言うので、私も窓の外に目をやると、正門の受付の所に差し掛かった所であった。


 同席しているマルティナのメイドのシャンティーが受付に話をする。


「ジュノー家のマルティナお嬢様が、当主様との面会をご希望です」


 シャンティーがそう告げると、受付は馬車の紋章を確認して、馬車の中を覗き見る。


「何よ、私の顔がわからないの?」


 マルティナは少し威圧的に告げる。


「いえ…では、一番受付の方へお進みください」


 受付は少し身じろぎながら答え、馬車は示された一番受付のある建物に向かって進みだす。


「また受付を通さないといけないのね…」


 なんだか役所内をたらい回しされているような状況に、私は言葉を漏らす。


「うちの親は当主といっても、お殿様って感じではなくて、会社の社長みたいな存在だから、何かと忙しいのよ」


 私の推察通り、やはりマルティナの親はビジネスライクな生き方をしているようである。


 そして馬車は、建ち並ぶ倉庫街の方ではなく、事務所がある建物へと向かい、受付に辿り着く。受付と言っても、馬車を降りての受付ではなく、正門と同じようなドライブスルー型の受付である。


「これはこれは、マルティナお嬢様!」


 正門の受付とは異なり、こちらの受付はちゃんとマルティナの顔を覚えていたようで、窓の隙間からマルティナの姿をチラリと見ただけで、向こうから声をかけてくる。


「マルティナお嬢様は、当主様との面会をご希望です」


 シャンティーが先程と同じく、事務的に伝える。


「あぁ、当主様ですね、当主様は現在、こちらの帝都ではなく、ジュノーの方におられます。ジュノー方面の転移魔法陣の方へお進みください」


 ここでもたらい回しにされてしまう。まぁ、確かにいくら娘のマルティナだとしても、当主である父親を呼びつける事は出来ないから、仕方ないだろう。


 馬車はロータリーをくるりと回り、今度はジュノー行きの転移魔法陣のある建物に進んでいく。


 指定された場所は、出入口が大きく開かれた大きなガレージの様な作りになっており、他の馬車も中に入っていく様子が見える。そして、私たちの馬車がその場所に近づくと、係の人が声を掛けてくる。


「先程、転移したばかりなので、中に入って次の時間までお待ちください」


 そう言って、建物の中の馬車の停車位置を指示される。


「すぐに転移と言う訳ではないのね」


 ジュノー家はお金持ちだし、マルティナはジュノー家の御令嬢だから、すぐにでも転移してもらえるものと思っていた。


「はい、何分、転移にもお金が掛かりますので、一度に纏めて転移をしているのですよ」


 シャンティーがそう説明してくれる。


 そこで、この敷地に入る前に、後ろの馬車の御者が間に合うかと言っていたのは、この事かと気付く。


「では、転移希望枠が全て埋まれば転移されるのですか?」


「いえ、向こう側の準備も御座いますので、決まった時間ごとになっていますね」


 シャンティーがそう答える。


「決まった時間って、次に時間はいつですか?」


「二時間後です」


 シャンティーは無表情でそう告げた。



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