土の章:第3話
刹那、まつの右手に光が集まり、長刀が出てきた。そしてまつはそれを振りかざす、まるで舞を踊るかのように美しく、華麗に。
光秀は刀でそれを弾き返した。
「槍の又左の妻はだてではない様子、ですね」
「……槍の、又…、左?」
"今"の利家にとって聞き慣れない言葉だった。しかし聞き慣れないはずなのになんだか懐かしい。
*
『俺"たち"の通り名だ』
だ、誰ッ!?
『だれでも良いだろ……』
いや、よくないからッ!!
『少し、躰借りるからな』
*
そこには少女はいなかった。
かわりに、1人の男がいた。現代には似つかわしい派手な柄の和服を着流し、長い髪を雑に高い位置に纏めていたその男の瞳は、血のように紅く、まるで幾つもの血に塗られた戦場をそのままその色に仕立てあげたような色だった。
「犬千代さま?」
「まつか?久しいなッ!!」
前田利家が"覚醒"した。
「…まさか、そんな、……覚醒するなんて、………持って帰って、地の力ぶんどりますか」
光秀は不適に笑い、武器を構える。
「地の力?犬千代さま、それは」
まつは、はっとした。
利家の左手には光が凝縮され、殺気の塊のようなものが収まっていた。
「誰がお前なんかに渡すかよばぁかッ!この躰は一応、処女だからな!!信長様とまつ以外には絶対譲んねえ!つーか死ねッ!!」
途端、その光を利家は地につけ、屋上のコンクリートにひびがはいり、岩のように鋭くなった"それ"は光秀の方へと飛ばした。
「くっ!今回はこの対策なしでしたからね…お暇をいただきます」
そういって光秀は逃げ出した。
「ま、待て!!」
「よい、ほっとけ」
そのうち自ら俺の前に現れるだろう。
「……はい」
「まつ、悪いが時間のようだ」
え?と、まつが利家の方を振り返ると、"利家"は全体が白い光に包まれていた。
光は語った、『"俺"は俺と似ていてうつけだ。だから、見守ってくれ』と。
「――ッ!!…はい」




