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異世界でも殺し屋さん?  作者: なきもち
26/42

28話前半

今回は前半と後半に分かれています。




二人に連れられて外に出ると演習場があった。

結構な広さがあり演習場の中には様々な的が用意されているエリアやランダムに動く的、突っ立ったまま動かない的もあったりと様々な訓練設備が整っているようだった。

周りを見渡し誰もいないことを確認したロイズは嬉しそうにサキに声をかける。


「今から君にはここで試験を受けてもらう。試験内容は初めに身体能力、動体視力、魔法技能の三つだ。自分の持っている能力を使い言われた的に攻撃を当てるだけ。簡単だろう?」


「頑張ります!」


「おうおうがんばれ!その後は俺とみっちり剣術の修行だぞ」


ギルも応援してくれているようだ。


「ではまず、あそこに立っている的まで走って行き的に攻撃してここまで戻ってきてくれ」


ロイズが指定したのは、先ほど見かけた棒立ちのかかしだ。


これは平均タイムを聞いてから挑戦したほうが良さそうかな?


一般の人間のレベルを聞いてはいたがそれが実際どの程度か分からず考えていた。


「どうした?遠慮なくやってもいいんだぞ!ちなみに今までの最高記録は20秒だ!別に遅くても問題はない」


20秒?…………。300mしかないのにそんなにかかるのは……。そもそもそれが最高ってことはそれ以上に遅くしないといけないってことか。


サキはゆっくりと歩き出す。もちろん周りから見れば走っているように見えるが、幼い頃から人体改造を繰り返され鍛えに鍛え抜かれた身体。そんな体で走ってしまっては目にも止まらぬ速さになってしまうのだ。

150mの時点でタイムは20秒に調節する。更に20秒かけ300m時点に向かい、最大限に手加減したデコピンで的を攻撃。そこから約40秒をかけて戻ってくる。


「よし!終了だ!」


タイムは86秒だった。トイズの反応を伺うといたって普通の顔をしている。サキは目の前でわざと息切れをしてみせると心配そうな顔を向けてくる。


「まあ商人にしてはなかなか頑張ったほうじゃないか?若干遅いがそのレベルならまだ早い方だろう!」


「そ…………そうで………ハァ……ハァ………ですか……」


「おいおい、ゆっくり休めよ?次は魔法だ」


「はい………」


できるだけ疲れているように見せ、休んでから次の魔法の試験へ移る。

その間もロイズは何やらメモを取りつつサキを観察しまたメモを書いていた。流石にペンの動きから何を書いているか、覚えたての言語では見抜くことは出来なかったが試験に必要な情報を書き込んでいるのだろうと思うことにした。


早くこの世界の言語にも慣れないとね。


「魔法の試験だが、魔法の発動はどこまで出来る?一応杖はこちらで用意できるが………」


そうか、この世界での魔法は杖が必要ってアクエルが言ってたっけ。必要ない人間も居るみたいだけど今の俺には必要かな。


「杖……。旅の途中に魔物に襲われてしまって……。ちょうどお借りできればと思っていたので是非お願いします」


するとロイズは快く杖を貸出してくれた。魔法は普通詠唱が必要だと言っていた。女神達は自由時間で出かけているので聞くに聞けない。サキは何かないかと思い出すと心当たりが一つあった。

過去に出会った女。自分がここへ来る原因となったジーアスの事を思い出す。


彼女も一般的な魔法使いってことでいいのかな………。まあ今はそれしかないか。


「では始めてもらおう。的は50m先にあるあの人形だ。大丈夫最初はゆっくりでも――――」


「我、古の女神の力の一端をお借りしたもう、我のマナを糧とし顕界せよ!火球ファイアボルト!」


あたかも杖を使っているように見せながら的に向かって最小限の威力をイメージした火球を打つ。

すると魔法はそのまままっすぐ飛び的にヒットした。


「ま、魔法は誰かに教わっていたのかい?」


トイズの表情からは少し疑いの感情が読み取れた。


ちょっと簡単に当てすぎたかな?でも魔法に関してはまだコントロールが難しいからなんとも言えないか。


「はい!僕の母は魔法使いだったので色々とコツを教えてもらっていたんです!」


嬉しそうに母を自慢するユキを見てトイズは先程と同じく温和な笑みを浮かべる。

どうやらロイズは結構なお人好しの性格のようだ。


この人本当にギルドマスターなのかな?


サキはそう思うが実際はサキの演技が入り混じったせいでもあっただけでロイズはSランク冒険者と同等の力を持っていた。

しかしサキがそれを知るのはまだ先の話しである。


「では最後に動体視力を見せてもらう」


その間のギルはというと暇になったのか途中から昼寝をしていた。

応援してから走り始める頃には既に眠っていたのだ。


「本当はギルに手伝ってもらいたかったが、後から訓練するみたいだし体力は残してやらんとな!」


「あの、動体視力っていうのはどういった試験なのでしょうか?」


サキはこの世界での試験はまだこれが初めてで何もわからなかった。

何も知らない商人であればいくら質問しても怪しまれないだろうと思い色々質問し始める。


「そうだったな。この試験はズバリ!俺の攻撃をどこまで捉えられるか!その目で捉えることができるのかを見せてもらうぞ!」


イマイチわからないが動体視力というくらいだ相手の動きを見切って終わりだろう。


「はい、ルールをお願いします」


「うむ!聞いみにも冒険者がなんたるかが少しづつ身についてきたようだね!!」


ロイズは身につけていた腰巻を取り外し軽く準備体操をする。

外した腰巻からは見た目だけでも数十キロはある鎧だ。


ずっとつけているってことはそれなりの筋力もあるのか……。

どこの世界でも運動前に準備運動はするんだね。


どうでもいいことを考えているとロイズの準備が終わったようだ。


「じゃあこれから君に何回か攻撃を寸止めで数回繰り返す。君はその回数を当ててくれ!」


「が、頑張ります!」


一瞬。

ロイズの雰囲気が一気に変わった。そこにいるのは先程までの温和な男ではなく『歴戦の戦士』そのものだった。


そうか、普段の顔を作り騙しているのは彼も同じか。


ロイズはサキの返事を合図に一気にサキとの間合いを詰める。だが速度ではホワイトウルフと同じくらいの速さだろう。

この世界の平均で言えばホワイトウルフと同じ早さといえば十分に化け物である。

そしてロイズから素早い剣突きが二回寸止めで顔の前に出される。

実力がなければ一回の攻撃にしか見えないかギリギリぶれて見えるくらいの速度だ。

更にそこから足の膝めがけて1回。

その後突き攻撃のフェイントを1回した後また元いた場所に戻る。

その間サキは何もできずずっと突っ立っている状態だった。


「ふう、どうかね?何回攻撃したかわかったかい」


これは正確に答えていいのだろうか。逡巡するがまあどうにかなるだろうと性格な答えを出す。


「えっと……正直早すぎて自信がないのですが。3回の突き攻撃と1回のフェイント……であってますか?」


ロイズの表情が一瞬固まる。


「あ…………あぁ」


やはりまずかっただろうか。そう考えたとき脇で寝ていたギルが歩いてくる。


「ふあ~~~~~~あ、よく寝たぜ。試験は終わったか?」


「ああ、ちょうど今終わったところだ。ユキ君の冒険者としての実力は十分だ。多少体力が足りないと思われるがそこは技術でなんとか賄えるだろう。今日からはD級冒険者として頑張ってもらっても大丈夫だろうと思う」


「おいおい、いきなり飛びすぎじゃないか?俺が寝てる間に何があったんだよ……」


流石に判断基準が理解できない………。


サキはわからないことを考えるのはやめ二人をじっと観察する。

丁度ギルがこちらへ来て説明を求めてきたが代わりにロイズが説明をする。

こちらに聞こえないように小声で話し始めたがサキはそちらに意識を集中させる。


「何があったんだ?」


「いや、私の攻撃回数を当ててもらうテストをしていたんだが………」


「お前それ好きだよな~。んでそれと飛び級に何の関係があるんだ?」


「まあ話は最後まで聞いてくれ。久しぶりに動いたためか力加減を間違ってしまってね」


「まさかお前手抜きでやったのか?……」


「いや、その逆だ」


「?」


「本気で動いてしまったのだよ。彼は見事に回数を当ててみせた。そして攻撃直後もずっと私の剣先を捉えているようにも見えた。それにフェイントの攻撃までしっかりとね」


「マジかよ……。俺は身体能力の試験はうっすらと見ていたがそこまで速い動きじゃなかったよな?」


「わからん、しかし少なくとも彼の『目』はとてもいいことがわかった。今後は少し彼を見ている必要があるかもしれんな………。もしかしたら『彼ら』に目をつけられるかもしれん」


「そうか………。だが俺の恩人みたいな奴だからそこまで悪く扱わないでくれよ?」


「もちろんだ。そんな扱いするなんてとんでもない。むしろ逆だよ」


「ありがとうな」



やはりまずい状況になりかけているようだった。

しかし気になるキーワードもあった。


『彼ら』


その存在が後にサキにとっての障害となることをサキはまだ知らない。








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