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異世界でも殺し屋さん?  作者: なきもち
20/42

22話

よろしくお願いします。






森の出口付近で甲高い声が響いた。


「この森絶対変だって!どうしてB級とかA級の魔物とこんなにばったり遭遇するのーー!」


それが目が覚めたフレイアの第一声だった。


あの後ホワイトウルフはサキに着いてくることをやめなかった。


まあ肉壁くらいにはなってくれそう。


サキはなにかの役に立つだろうと一緒に行動することを許したが、女神達からは猛反対されていた。


「そもそもそんな危険な魔物と一緒に行動なんて怖すぎます!」


「私もフレイアと同じ意見です………」


頑なに首を縦に降ってくれなかった。


「そう言われても付いてくるものは仕方ないから……」


「でも――――」


その時ホワイトウルフの白い毛並みだフレイアの頬に触れる。

いや、頬に当たるようにホワイトウルフが動いたのだ。

するとフレイアの顔が一瞬緩む。


次第に毛をワサワサされることでフレイアはだらしない顔になっていった。


「わ、私この魔物となら仲良くできる気がする!」


「……………はぁ……」


フレイアの不甲斐なさにため息をつくとアクエルもようやく首を縦に振った。


「分かりました。でも、もし私たちに危害を加えてきそうになったら………その……」


「その時は容赦なく殺すから大丈夫だよ」


「お願いします」


なんとか受け入れてもらうことが出来たホワイトウルフだったが、サキにとっては非常時の肉壁程度の考えだった。

そんなことも知らずにホワイトウルフはサキだけに従順であったため女神達はサキから少し距離を置いて歩くのだった。

しかしフレイアにはホワイトウルフの毛並みの誘惑に負けかけていた。







「A級の魔物の話をしてたけどまさかこの犬がA級の魔物だったなんてねえ」


「今更ですか…………」


あんなに私達が怯えていたのに………。とつぶやくアクエルの目はどこか遠くを見ていた。

それに連れてフレイアは、殆ど毎回怯えてるけどね……。と付け足していた。


「その魔物、ホワイトウルフはA級の魔物で先程のヘルナーガの数十倍は危険な魔物です。自分よりも強い魔物には従うと聞いたことはありますが、それは竜や魔王であって人間に従うなんて聞いたことも…………」


そこまで話していると、サキはホワイトウルフに向かって咄嗟にナイフを突き出した。

ナイフの刃先はホワイトウルフの眼球まで後数ミリというところで止まる。

しかしホワイトウルフが後1歩でも動いていたら容赦なく突き刺すつもりだった。


ホワイトウルフは攻撃を見切り足を止めたとともにサキの意図を組んでいたのだ。


「まあ、ただの雑魚犬じゃないみたいだから………使えなくはないんじゃないかな?」


先程からの犬という単語がホワイトウルフを指していることはわかったが未だに理解出来ない女神達。

A級の魔物に刃物を突き付けるという異常な行動をしているサキとそれを平然と受け入れるホワイトウルフを見てアクエルは考えることをやめた。








森の出口付近にある乱雑な道でも魔物と出くわした。

しかしサキが動く前にホワイトウルフが私を見てくださいと言わんばかりに魔物を全て狩ってくると尻尾をブンブン振っていた。

ふと、途中フレイアがこんなことを言い出した。


「ホワイトウルフって呼ぶのは……。なんだか仲間って感じがしないので何か新しい名前をつけてあげたらどうでしょうか?」


サキはしばらく考える仕草をすると咄嗟に思いついた名前をつぶやこうとする。


「ホットドッ――――――」


「ユキ様なんだか私の本能がその名前はいけないと囁いているので別の名前でお願いします………」


この世界にはないはずの単語なのだが、あっさり却下されたため仕方なく別の名前を考えることにした。


名前を考えるのは苦手なんだけどなぁ………。


今回はあっさりいい名前が思いつけたと思い自信のあったサキだったが、何故かアクエルに却下されてしまったので渋々別の名前を考える。


ホワイト………。シロ。


自分でも安直だと思った。

しかしシロは初めて名前をもらったことにより、とても興奮している様子だった。


「うふふ、シロはユキ様に名前をつけていただけて嬉しいのね」


『ワウン!』


アクエルの言葉に尻尾を大きく振ると、新たな主の為に働かんとより一層忠誠心を高めるシロだった。







順調に森の脇道を進んでいく。

行く先々で出会う魔物は全て白が倒してしまうか、女神達が気づく前にサキが殺していた。

魔物を倒しながら女神達との会話で気になることがいくつかあった。

というのもサキが女神達に質問していたこともあってだが、

Q敵からスキルを奪うスキルは存在するのか?

A直接奪えるわけじゃないが勇者の中でも非常に稀にそのようなスキルを取得しているものがいるらしい。

Qレベルはこれ以上上がらないのか?

A人間の平均レベルは大体10代、兵士は15~20代、冒険者は幅広く弱いものは20前後で強いものは60前後。歴代で最強と言われた冒険者は100前後だそうだ。

Q勇者については?

A最近の事情は分からないが自分が生きている間は召喚されていなかったため、この数百年の間に召喚された可能性は大きい。

Q勇者を召喚するってどれくらい難しいこと?

A大体各国の優秀な宮廷魔術師が数十人でようやく一人を召喚できるためそう簡単にできるものではない。更に世界間の事情から再び召喚するまで結構な年数を要する。


大体こんな感じだった。

その情報を元にサキは考える。


ゲームや小説のテンプレ見たいな世界ってことは、俺と同じ地球から召喚されたり転移した人間の可能性が高い………。もし勇者と会うことがあったら……。いや、確実に会う事になるだろうし更に警戒をしておかないとね………。


二人の話を聞く限り、この世界で一番警戒すべきは勇者という存在だった。

サキの場合はレベルがどんなに高くてもスキルの使い方やチームの連携で強さは全然変わると考えた。

しかし疑問も生じる。



サキはこの世界に来てからスキルや魔法をあまり使っていない。

持ち前のスペくだけでグレムを倒すことも出来た。

つまりレベルとスキル以外にも何か強さに関する秘密があるのではないか。そう睨んでいた。


まあ、わからないことを考えても仕方がないかな。


しばらく考え事をしながら進んでいくと、森入り口と同じく開けた草原に出たサキ達。

草原のむこうには大きな城壁に囲まれた街があった。


「ようやく森を抜けましたね」


「結構楽だったね~!」


「それはユキ様が居たからで………。私達だけだったら死んでたわよ……」


「ねえ」


「「?」」


「二人共死んでたって言うけど、魔物には女神って見えるの?」


「はい、この森に住む魔物や高位の魔物には私たちの姿は見えてるので攻撃されてしまうのです……」


「そっか、あともう一つ」


「「はい?」」


「シロってA級の魔物って言ってたけど、街に入れても大丈夫なの?」


「「あ……………」」


そこまで考えていなかったらしく、森の出口で一旦作戦会議をすることにした。


「確かに商人と言ってもA級の魔物を街に入れたら国家反逆罪か何かの罪に問われて殺されちゃいますね………」


「返り討ちにすれば問題な――――」


「それでは目立ってしまいユキ様の目的から大きく外れてしまいます。街の規模からして結構大きな大国です。シロにはここで留守番していてもらうほうがいいかと」


「冗談だよ、アクエルは真面目でいい子だね」


微笑みかけるサキを見てアクエルは顔を真っ赤にしながら咳払いをする。

仕方なくシロは森の入り口付近に待機させることにした。

その際人間の言葉を理解しているのか分からないがサキはシロに命令してみることにした。


「俺達が帰ってくるまで人間は殺さないこと」


『ワォン』


「もし人間たちに襲われたら殺さずに気絶で済ませるか逃げること」


『ワォン』


「お腹がすいたら好きに動いてもいいけど目立たないようにすること。そしてここに戻ってくること」


『ワォン』


反応を見るからに人間の言葉を理解しているようだ。




「ホワイトウルフが人間の言うことを聞いてるわ………………」


「シロの毛並みから離れるなんてつらいよおおおぉぉぉぉ!」


「ハァ…………」


アクエルはため息をつくことしかできなかった。


「とりあえずシロに関してはこれで大丈夫だと思うしそろそろ街へ行こうか」


「「はい!」」


街へ向かいながらふと女神達に聞く。


「そういえば二人って人間には見えないんだよね?」


「そうですね、私達を視認できるのは勇者や特殊なスキルを持っている人間ですので街では私達はユキ様についていくだけにしますので、いないものとして扱ってください」


「寂しいですけどユキ様が独り言を喋ってるように見えちゃいますからね!」


なるほど、人間達に見えないか………。逆に見える人間は要注意人物だね。


「とりあえず見えないからってあまり人目につくようなことはしないようにね」


「「はい!」」


街の入り口には関所が設けられており、サキはステータスカードを持っていないことから足止めをされた。


「何者だ?」


「はい、海の向こうからやってきた商人のユキと申します!私の故郷ではステータスカードはあまり使われていなかったので持っていないんです………」


まるで垂れた犬耳が見えるような見事な演技に女神達は驚くばかりだった。

関所の男も少し申し訳なさそうな顔をするが仕事に真面目なようで取り乱すことはしなかった。


仕事だから悪いな、と言いながら門番はサキを見ると「やはり」と呟く。


「東の国には勇者様と同じ髪の色の人間が沢山いると聞いていたが、本当だったんだな」


「あはは~、そうなんですよ~」


「いいだろう。街に入ると大通りがある、その道の突き当たりを右に行くと冒険者ギルドがあるからそこへ行ってステータスカードを作ってもらうといいぞ」


丁寧に街のことを教えてくれた門番にお礼を言うとサキは異世界初の街へ入っていった。







深い闇を抱えた街ともしらずに………。






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