12話13話
2話分投稿です。よろしくお願いします。
私は神々に想像され力を与えられたその時から人間のために尽くしてきた。
気づけば人間も私のことを崇めていた。
何故自分が女神なのか、じぶんの役目はなんなのか、それは無意識に考えてしまう疑問だった。
女神は死んでもまた蘇る。そして記憶も徐々に引き継いていく。
自分がいれば人間たちは喜んでくれる。しかし私は徐々にそれに不安を覚えた。
人間たちから向けられる視線がいつの間にか別のものへと変わっていたからだ。
しかし、それでも最初は人間たちの暮らしのために魔法を使えるように努力していた。
しかし私の不安は的中した。
ある日女神を祀る祭殿に降り立ち人間たちが祈りの儀式をしていたのだが、いつもであれば踊ったり女神の魔法への感謝で奉納をしたりするのだがその日そこにあったのは綺麗なクリスタルだった。
「女神様!火の女神様!いつも私達の生活を支えてくださってまことにありがたく存じます!今日はいつもと違った思考を凝らしてみました!そこにおられるのであれば、クリスタルに触れてみてくだされ!」
普通の人間には女神の姿は視認することは不可能だ。
だからこうして語りかける。
しかしその村の中で唯一フレイアのことを視認することができる男がいた。
その男は村の中では変な存在と孤立させられやがて女神が見えるのは嘘だとして一般の村人を装っていた。
そんな男とフレイアはどんどん仲が良くなっていった。フレイアは単に自分が見える人間に興味がわいたからだったが、男は違った。
男はフレイアのことが好きになっていたがフレイアにその気持ちを伝えられずにいた。
しばらく二人でいる時間が長くなればなるほど男とフレイアの距離も縮んでいった。
男は願った。
これからもフレイアと共に居たいと。しかし人間の寿命なんてたかがしれていた。
フレイアは神々に禁止されている禁忌を犯し男の寿命を伸ばした。
これで一緒にいられる。人間を好きになることは普通ではない。しかしフレイアは構わず男とともにいた。
しかしいつからか男の態度がどんどん冷たいものになっていくのを感じた。最近村の人間の視線が気になり始めたのも同じ時期だ。
そして今回の儀式の進行がその男だった。
普段から見えていないふりをしていたため男は仰々しい喋り方でフレイアに語りかけた。
もちろん警戒はしていたが男と人間たちが考えてくれたプレゼントのような催し。
私はそのまま綺麗なクリスタルに触れた。とっても綺麗だったし何が起こるのかワクワクもしていたからだ。
人間たちの新しい思考。
気になってしまった。自分と違って人間たちは常に進化をする。
自分のために何を用意してくれたのか。
しかし、それが間違っていた。
クリスタルに触れた瞬間自分んという存在がすごい力に引き込まれる感覚がした。
え?
自分の存在がこの世界、神としての存在から引き落とされるような感覚。
そのまま私の意識はなくなり気づいたときにはいつもと違う視界だった。
封印される感覚?・・・・・。やだ!どうして?封印?
「やめっ―――――」
一瞬自分の体と精神が乖離する感覚とともにフレイアの視界が一気に切り替わった。
何か遠いところから声が聞こえる。
「これで我々は戦争にも負けず生活には苦労しない。安泰だ!これまで騙しながら裏で動くのは大変だったぜ」
え?騙してた?………。
フレイアは呆然とその景色を眺めることしかでいない。
何を言っているの?戦争はいけないことって神々が言ってたし生活はみんなで力を合わせるんだからサボるなんてダメだよ……。
伝えたい。いつもであれば怒りながら人間の周りを飛び回るのだが体が動かない。
あれ?どうして私動けないの?
フレイアはようやく気づいた。
自分が先程のクリスタルの中に居ることに。
徐々に意識が混沌としてくる。クリスタルに封印された影響か自我が保てない。
「それにしても本当に封印しちまっても魔法が使えるのか?いつもみたく契約を通して魔法を使わせてもらうんじゃ?」
「それがこの方法で女神捕まえたやつが知り合いにいてな。そいつが言うにはこのクリスタルを持っているだけで女神の司る属性魔法を行使することができるみたいだぜ」
そういう男たちは下卑た笑みを浮かべフレイアの封印されているクリスタルを見ていた。
フレイアは人間たちへの評価を改めた。
”何があっても信じてはいけない。人間はすぐ裏切る゛
どうして今まで大人しくしていたのかが不思議に思えてきた。
しかし封印されてしまい自分からは何もすることはできない。次に封印から目覚めた時は絶対に復讐してやる。
そう心に決めた。
そしてようやく封印から目覚めたと思ったが最初は記憶が混濁していたのかいつの間にか女神にふさわしい行動をとっていた。
やっぱり私って馬鹿……。
人間を助けてあげたのにすぐ命の危機。
更に同じ女神であるアクエルが隣で捕まえられており状況は最悪だった。
自分は復讐しなければならないのだ。最悪アクエルを見捨ててでも………。
そんなこと私にできるのかしら……。
そう思っていたのだが、その人間は異質だった。
容姿端麗な男の子のようで女の子のようでもある綺麗な顔立ち。
自分たちの封印を解いたのも異世界人だからという。
その男から助かるには何とか隙を見て逃げるしかない。アクエルも同じ考えのようだったので何とか知恵を絞る。
すると男はいった。
「ねえ、この世界の人間じゃなくても魔法って使えるの?」
チャンスだと思った。
この男はきっと魔法を使いたいのだろう。
私達の封印を解かなくても魔法は使える。でもそのことを知らないのなら何とか騙せるはず。
本来女神とは契約をし女神が許可をすれば魔法が使えるようになるシステムなのだが、契約にも様々な種類があった。
今回フレイアが男に提案したのは仮契約魔法だ。
仮契約で魔法を使わせると女神側からいつでも契約が解除可能でその人間は魔力を消費ししばらく動けなくなる。
それをうまく利用して逃げようと思った。
説明もうまくいった!これで逃げられる隙もできたはず!
そう思ったのも束の間だった。
男は優しい笑顔で語りかける。なんでも許せてしまう笑顔のまま。
「でも、フレイアさん嘘ついてるよね?」
絶望しかなかった。
サキはフレイアの喋り方、雰囲気から違和感を感じ取った。
しばらく観察しているとどうもやましいことを考えているのだ。
人を騙そうとする時の雰囲気。異世界という未知の場所。何も知らない自分を騙すのはさぞ簡単だろう。
更に相手は神に等しい存在。尚更信用できない。
その証拠に先程からフレイアの表情は真っ青だ。
「な、う、う、嘘なんてついてませんよ!?」
あからさまに動揺している。
「もう一人の女神さんは残ってるから一人くらいいいかな?あまり気の長いほうじゃなくってね~」
片腕に持っていたないうをフレイアにつきつけるようにしたとき今まで黙っていたアクエルが口を開いた。
「待ってください!」
「アクエル?………」
フレイアの首すれすれのところでナイフが止まる。
そしてサキはないうはそのままにアクエルの方を向く。
「何?」
「本当のことを話します。だから私達の命だけは助けてください………。なんでもしますから」
なんでも……ねえ。
嘘はついていなかった。多少後ろめたさはあったが気にする程度ではない。
本心で助けを求めている。
まあ逃げそうになったら殺せばいいか。
「うん、いいよ」
先程とは打って変わってあっけなく開放される。
2人の女神はその場にへたり込む生きてることを実感する。
神なのに死ぬのが怖いとかこの程度でへたり込むとか………。この世界ってどうなってるんだろう?
サキは決して油断出来ないと改めて思った。
「本当に死ぬかと思ったわ………」
アクエルがそういうと不思議そうにサキは答える。
「うん?本当に殺そうとしたからね」
「「……………」」
2人の女神はサキという異質な存在に恐怖していた。
しかし今は自分が助かったことに満足するほかない。高望みすれば自分が死んでしまうのだから。
しばらくして落ちつついた女神達は改めて自己紹介を始めた。
「改めまして水の女神アクエルと申します。先程のご無礼どうかお許し下さい」
誠心誠意深々と頭を下げる。
フレイアは本心からの誠意ではないが一応自己紹介をする。
未だに人間への憎しみは消えていなかったからだ。
「同じく火の女神フレイアです」
「うん?無理してお辞儀しなくてもいいよ」
「?」
フレイアは疑問で頭がいっぱいになる。
「だってフレイアさんは俺のこと………。というより人間そのものが憎いんでしょ?」
的確な指摘にフレイアは黙るしかなかった。
異世界から来た人間が何故。しかも今日あったばかりの人間に。
フレイアは思考は混乱する。
「何故わかるんですか?」
やっと絞り出せた質問。
その一言に全てが詰まっていた。
今度こそ殺される。アクエルのおかげで開放してもらったのにそれを自らが台無しにしたのだ。
しかし自分の気持ちに気づいたサキのことが気になって仕方なかった。
この世界に人の心を読む魔法なんて存在しない。
「ん~、そんなに憎しみを顕にしておいてどうしてわかるって聞かれても、涙を流しているのになんで泣いているのが分かったんですかって聞いているようなものだよ」
理解できなかった。
自分の感情を完璧に隠していたし、それを表情にだすなんてへまもしていなかったはずだ。
納得しきれないうレイアは更に続けようとする。
「私は完璧に隠して――――」
「そろそろ本題に入ってもいいかな?時間も有限だからね~」
困ったように問いかけてくるサキは笑っていたが目は笑っていなかった。
落ち着いてきたはずの恐怖が再び2人を襲いだす。
しかしサキは怯えられては面倒だと言わんばかりに雰囲気を帰ることにした。
「「え?」」
2人の女神は驚きを声に出してしまった。
目の前にいた異質な存在。恐怖の対象が突然暖かい存在になったのだ。
まるで目の前に親しい身内がいるような安心感。
驚かずにはいられなかった。
「じゃあ、ひとつひとつ疑問を解決していこう。まずはこの世界の女神さんについて」
先程も本人達に説明されたが今までの常識が通用しない分念入りに聞く必要があった為サキは小さいところから全て確認することにした。
女神達は自分がどのような存在か、ぎこちなかったがサキの雰囲気が変わったことでまた落ち着き話し始めた。
「私達女神はもう一つの神のような存在です」
「私とフレイアは別の神の元から生まれたと記憶にあります。役割は特に決まっておらず、人間たちに魔法を使い文明を発達させるために作られたようです。他にも神々は世界の管理に疲れ魂の永眠を望み私達女神に力を全て渡し消えました」
アクエルの話しによると、女神は髪が人間の文明発達の為と自分たちが死ぬために作り出された存在らしい。
自分の仕事を放り出してしまう神様か…………。俺の世界にはいたのかな?
「神々は人間たちにどうして発展して欲しいの?」
その質問に2人の女神は暗い表情になる。
黙り込んだアクエルの代わりにフレイアが説明を始める。
「神々はこの世界では光の存在です。光が存在すれば闇も存在します」
「なるほどね」
その後フレイアはこう言った。
神々は世界を創造し人間達の成長を見守っていた。たまには少し干渉したりもした。
だがそれまで平和だった世界に突然闇が現れた。
それは魔族と呼ばれる存在。
魔族たちは特別優れた個体を魔王と称して筆頭に人間たちを滅ぼし始めた。
見かねた神々は文明の発展と魔族たちへの抑止力の為女神を生み出し世界に放った。
すると人間たちは強力し魔法を使って文明を発展させなんとか体制を立て直すことに成功した。
魔王は何代にも渡って出現しており人間たちの手に負いきれなくなったとき、人間たちは強力することでひとつの大魔法を完成させた。
それが召喚魔法である。
召喚魔法は別世界から強い人間を呼び出し魔王を倒すことに強力してもらうというものだ。
勇者として召喚された人間は成長すると魔王に匹敵する力をつけ見事魔王討伐をなしてみせた。
しかし闇は魔族たちだけでなく人間の心にも現れ始めた。
人間たちとの戦争はお互いの犠牲が増えるだけだと判断した魔族。そして魔族は人間に停戦を申し込んだ。
もちろん人間側は突然戦争を挑んでおいて虫がいいと猛反対。
しかし当時の魔王は責任を感じ自らの命を対価に提案を持ちかけたのだ。
すると人間側は魔族を倒したときにドロップする魔石。魔道具や武器の材料に使えるアイテムに目がくらんだ。
魔王ともなればその大きさはそれなりのものだ。
人間側は承諾した。そこからは魔族と人間の共存が進んでいたかのように見えた。しかし人間たちの中には今まで持っていなかった特別な力。”魔法”に目覚めたことで魔族を倒したときの快感が忘れられず密かに魔族を狩りにでるものが続出した。
魔族側は人間たちに講義した。突然身内の数が減ってきたのだ。
その代わりに人間たちの装備は充実し始めた。しかし人間側は何も知らないと言ってきた。
そこからは亀裂が深まるばかりで共存という言葉は意味を成さなくなった。
女神も止めに入ろうとしたが、到底人間たちの感情までコントロール出来るはずもなく状況は悪化する一方だった。
なんとか人間たちを落ち着かせるために女神達は世界各地に散った。
人間は一度魔法を使ってしまうと魔法がない生活に戻るのはなかなか苦だった。
世界中に散った女神達に強力を求めるために人間たちもまた世界中に住処を作ったのだ。
「魔族と人間の関係はまあ理解したけど、すごいテンプレだね」
「てんぷれ……?とはなんでしょうか?」
「うん、なんでもないよ」
そしてサキはもう一つ気になっていたことを聞いた。
「じゃあどうして人間と共存していたはずの君たちが封印されることになったの?しかも呪術とか平和的じゃない方法で」
「「それは………」」
2人は黙り込む。
しばらく考え込むように俯いていたがフレイアが意を決したのか話し始めた。
それは自分の過去。人間と仲良くしていた頃の話し。
そしてその人間に騙され裏切られたこと。全て話した。
話している途中のフレイアは涙を流しながらアクエルに背中をさすられていた。
「そっか。さっきの恨みは俺じゃなくて”人間゛という種族に向けてのものだったんだね」
「ごめんなさい…………」
「どうして謝るの?」
「え?」
フレイアと同じくアクエルも首をかしげる。
憎悪を向けられたのならば不快な思いをしたはず。だからこそ謝ったはずが何故謝るのかと逆に返されたのだ。
「それは当然の感情なんだから俺に謝る必要はないよ」
「それは………」
フレイアはまた静かに涙を流す。
それにつられるかのようにアクエルもまた自分の中で思うところがあるのか涙を流し始めた。
よほど悔しかったのだろう。サキはその感情が理論上分かっていても自分の感情として理解することはできなかった。
知りたいとも思わなかったが今までの経験上無理だと悟った。
自分のホシを殺す瞬間そのホシに聞いたことがあった。
「死を悟った時ってどんな気持ち?」
しかし相手には煽りとしてしか受け取られず悔し涙を流しながら死んだ者。叫びながら抵抗して死んだ者。意味が分からないと言われそのまま死んだ者と様々だった。
だから今回もきっと答えが帰ってこないとわかっていた。
昔の事を思い出していたサキに、今度はフレイアが質問をする。
「あなたはこの世界の人間じゃないと仰っていましたがどういうことですか?この世界の人間であれば女神がいなくても初級程度の魔法は使えるはずなのですが……それに女神のクリスタルが近くにいれば尚更です」
初級程度の魔法―――――――。
脳裏にジーアスの火球がよぎった。
あれ初級なのか。あれならチャッカ○ン使ったほうが早そうだったけど。
サキは自分がどういう経緯でこの世界に飛ばされたか説明する。
すると女神達は驚愕の表情だった。
「神器ですか………。それはお気の毒です」
「まあいいんだけど。戻る方法とか知ってる?」
神々であれば何か知っていたかもしれませんが、私には何もわかりません」
「私にも……ごめんなさい」
続けてアクエルも申し訳なさそうに言う。
しかしサキは気にした様子もなく「そうなんだ」というだけでその話題は終わった。
女神は思う。
この人間はどこかがおかしいと。しかしそれを言ったとしても相手にされないだろう。
サキは魔法について女神に問う。
「そういえば魔法って俺じゃ使えないって言ってたけど、君たちの話を聞くと不イン解かなくても使えたんだね~」
「「それは……」」
「まあ、そんなにしおらしくならないでよ。最初に飛び出てきたときは煩かったくらいなのに」
思い出したのか二人は顔を赤くする。
「契約すれば使えるって言ってたし俺も契約すれば使えるのかな?」
異世界人と契約したことなどなかった。
「私は勇者や異世界人と契約したことがないのでわかりません。勇者は元々中級までの魔法が使えると聞いていますし………」
「私もないです」
このまま何の役にも立たず殺さず見逃すのも面倒の種。であれば………。
「さっきできるみたいなこと言ってたしやってみようか」
唐突だった。
サキの提案に二人は驚いてはいたものの殺されないのであればと承諾した。
二人は準備する前に魔法陣の確認をすると言って少し離れたところに移動する。そこで小さな話し声が聞こえた。
「ねえ、さっきフレイアがやろうとした契約のやり方でいいの?」
「うん、今は優しそうな雰囲気になったけどやばすぎることに変わりはないし……」
「おっけ」
何やらまたやましいことを考えているようだった。
とりあえず逃げるなら逃げるでそのときは殺せばいいことだし………。
女神達が準備を終わらせるまでしばらく待つことにした。
一人で考えて行動するって難しいよ……。サカキ―――。




