第24話
箱はもうリリアの腕の中ではなく、急ごしらえの運搬枠の中に固定されていた。
厚い革紐と衝撃吸収用の羊毛、エリンが重ねた仮の封印式が幾重にも巻かれた小さな枠だった。
見た目は簡素だったが、近づくと青い線が呼吸のようにごく微かに上下していた。
エリンは片手で運搬枠を支え、もう片方の手で封印陣の震えを見続けていた。
リリアはその隣にぴったりくっついて歩いた。
兎耳はマントの中に伏せていたが、耳先が緊張を隠せないように何度もぴくついた。
彼女は唇をきゅっと結んだまま歩いていた。
昨日までは誰かに守られる側のように見えていたのに、今は自分で崩れまいと必死に耐える人の顔だった。
そしてそのすぐ後ろにレオンがいた。
包帯で肩を巻き、脇腹にも布をきつく巻いていたが、歩き方がとてもまともだとは言えなかった。
最初の五歩は大丈夫で、六歩目あたりから少し引きずり、七歩目には本人が先につぶやいた。
「いいですね」
「痛いです」
「実に痛いです」
エリンがすぐ噛みついた。
「うるさい」
「静かにして」
「言葉にすると少し痛みが減る気がするんです」
「気がするだけでしょ」
「はい」
「骨身に染みて同意します」
それでも彼はついてきた。
無理に耐えていることを悟られまいとして、わざと少し口数が増えている顔だった。
マヤは本隊とは別に動いた。
彼女は屋根の上を伝い、前後に行き来しながら追跡者の流れを探った。
狐耳は夜明けの風を裂くように細かく動き、尻尾は均衡と気分を同時に表していた。
彼女はすでに三度、合図を変えて飛ばしていた。
東門の囮はうまく食いつかれ、北門側にも影が付いた。
問題は、まだ本隊側が静かすぎる点だった。
静かであることは、時にもっと悪い。
「見えなさすぎる」
マヤが低くつぶやいた。
その言葉はすぐ現実になった。
橋の下は古い石の匂いがした。
水はほとんど流れていなかった。
床に溜まった黒い水が腐った鏡のように天井のアーチを映し、壁面には湿った苔が誰かの古い傷のように広がっていた。
上にはまだ眠る都市の重みがのしかかり、下では人間が捨てた水と記憶が一緒に腐っていた。
セラが急に手を上げた。
全員が止まった。
レオンも止まった。
正確には、慌てて止まりすぎて足が引っかかった。
「あ」
彼は少し前のめりになり、その瞬間、セラの手が胸元を押さえてかろうじて立たせた。
静寂。
レオンがごく小さく言った。
「ありがとうございます」
「やはり私は緊張感のある瞬間にも安定していますね」
セラは手を離し、低く言った。
「黙れ」
その言葉が落ちた、まさに次の瞬間だった。
ざしゅっ。
黒い水溜まりの中から鉄線が三方向へ飛び出した。
あらかじめ隠しておいた仕掛けだった。
一つはセラの腰を、一つは運搬枠を、最後の一つはレオンの足首を狙った。
セラの剣が最初に動いた。
金属音とともに一本目の鉄線が切られた。
エリンは本能的に運搬枠を後ろへ引き、リリアは悲鳴を飲み込んだ。
問題はレオンだった。
彼は避けようとして、濡れた石に足を滑らせた。
ばしゃっ。
実に見事に転んだ。
鉄線はもともと彼の足首を巻くはずだったが、彼が急に低くなったせいで空を切った。
【転倒判定】 【奇襲回避成功】 【次の行動成功率上昇】
レオンは床にうつ伏せになったまま、すぐ叫んだ。
「いいですね!」
「最初から私らしいです!」
その闇の中から、黒いマントが四人なだれ込んできた。
隠れていた者たちだ。
天井のアーチの上、水溜まりの中、壁のくぼみ。
この水路の下そのものが一つの罠だった。
セラが最前の男とぶつかった。
剣と短い曲刀が噛み合い、火花が散った。
相手は昨夜の広場の雑兵よりずっとましだった。
刃を受ける角度は正確で、後ろから入ってくる二人目がその隙に針のような短剣を突き込んだ。
だがセラは後ろへ退かなかった。
むしろ一歩、さらに入った。
彼女の剣が最初の男の肘の内側を斬り、そのまま体をひねって二人目の短剣を握る手首を打った。
動きは短かった。
短いのに、残酷なほど効率的だった。
相手二人は悲鳴を上げる暇もなく均衡を崩した。
エリンは運搬枠を一度床に下ろし、指を弾いた。
青い光が黒い水の上に広がり、床が一瞬で凍りついた。
水溜まりの中から飛び出していた三人目が、そのまま膝まで氷に埋まった。
「そこに立って」
「誰が立てと言われて立つか!」
男が罵りながらもがいた。
エリンが無表情で言った。
「もう立ってるじゃない」
その時、四人目がリリアに向かって突進した。
リリアはびくりとした。
だが逃げなかった。
彼女は運搬枠の前を塞ぐように体をひねって立った。
両手は震えていたが、足は下がらなかった。
レオンがそれを見た。
そして体が先に動いた。
彼はまだ床にほとんどうつ伏せの状態だった。
だから選択肢もあまりなかった。
彼はただ濡れた石床を押し、滑った。
人が走るというより、雑巾のように滑った。
その姿があまりにも格好悪くて、突進していた男でさえ一瞬眉をひそめた。
「なんだこれは」
【『取るに足りない』判定感知】 【補正上昇】
レオンが相手のすねに抱きつくようにぶつかった。
どん。
男は体勢を崩し、レオンはそのまま床を転がって膝裏を蹴った。




