#6 安堵と一泊と疑問
????泣きながら「ずるいわ。」
「分かりました。」
彼女は自分でも無理をしていると分かっているので、俺の提案を受け入れた。
正直に言うと、自分も大丈夫とは伝えたがまださっきのダメージがだいぶ残っている。このまま森の中を進むのは危険だ。もう夕暮れだ、夜になればより危険が増す。
「なら、今日は私達が身を隠した穴で休みましょう。」
彼女が言った事に俺は同意した。
「急ぎましょう。暗くなる前に。そこまでだったら私も大丈夫ですので。」
彼女は怪我をしている足を庇いながら、歩きだす。
「だから、無理をしないでください。」
俺は彼女の前で屈んで背を向けていう。
「俺の背に乗ってください。」
ところが彼女は、
「いいえ、大丈夫です。そこまで迷惑はかけられません。」
と言って拒否した。
「分かりました。失礼します。」
このままでは、埒が明かない。遅くなるので諦めて強引だが他の方法を取ることにした。
「きゃっ!」
彼女が小さく悲鳴を上げる。
俺は口に人形を咥え、彼女の体に手を回し持ち上げた。つまりお姫様抱っこをした。
「あの、何を?」
彼女が顔を紅くしてはずかしそうに聞いてくる。
「遅くなってしまうので、このまま抱えていきます。」
人形を口に咥えながら何とか返事をする。
彼女は少しうつむき考えて、
「分かりました。お願いします。それからその人形は私がお持ちします。」
恥ずかしそうに言って、口に咥えた人形に手を伸ばす。
「ありがとうございます。」
俺は人形を放しお礼をいう。
「いいえ、こちらこそ。」
彼女が返事をし、
「じゃあ、出発します。」
そう言って歩きだした。
逃げて来た道を戻り、あの穴につく頃には完全に辺りが暗くなっていた。月の明かりで照らされているので真っ暗というわけではない。彼女を降ろし先に穴の中へ入らせる。俺はふと、夜空を見上げてみると、月が二つあった。
「どうしました?入らないんですか?」
「今行きます。」
彼女に言われたので、急いで入る。
穴に入り今はミリアリアさんと一緒、逃げるときに置いてきた布に一緒にくるまっている。
何故かというと彼女に
「これを使ってください。その恰好では身体が冷えてしまいます。」
「いいえ、これは貴女の物ですから貴女が使ってください。それに貴女の服も破れてしまってたじゃないですか。俺は平気ですから。」
「そんな事、お気になさらず使ってください。」
「俺は男だから大丈夫です。」
そんなやり取りをしていると、彼女の方から、
「分かりました。では、二人で使いましょう。」
と強めに言われてこうしている。
初対面の知らない男とこうしているのは、それくらいは信頼してくれたのかもしれない。
俺はその信頼を裏切らないよう彼女から伝わる体温や体の感触、彼女の匂いを意識しないようにした。
「あの、カラクリツクモさん。貴方はどこから来たんですか?」
と彼女が改めて聞いてきた。だから、俺は
「俺は…実は…記憶がないんです。信じてはもらえないかもしれませんが。」
彼女に嘘をついた。
「記憶が…ない?」
「ええ、自分の名前は分かるんですが。ああ、それと、この人形の事も。それ以外の事は何も。」
「そう…ですか。」
と彼女は静かに言った。
しばらく無言の時間が流れ、彼女が言う。
「カラクリツクモさん、明日は早くに森を出ましょう。」
「分かりました。あと、俺の名前は月雲でいいですよ。」
「ツクモ…さん。なら、私の事もミリィと呼んでください。」
「はい、ミリィさん。」
「今日は…もう寝ましょう。あし…た……は…早…い…すぅ、すぅ。」
話終わる前にミリィは眠りについた。
だが、俺はすぐに眠ることができなかった。
俺は今日一日の出来事を思い出していた。
俺はどうしてここにいるのか、どうして自分の家にあるはずの人形がここにあるのか、どうしてあの猪は突然死んだのか、そして夜空にある二つの月、ここは一体どこなのかわからないことが多すぎる。そうして考えてる内にいつの間にか眠りに落ちていた。
そして朝、目が覚める。
「朝か。」
俺の傍らでミリィがまだ眠っていた。少しの間その寝顔を見つめていると
「う~ん、朝。」
彼女が起きた。そしてお互い視線が合い、
「おはようございます。ツクモさん。」
「おはようございます。ミリィさん。」
ぎこちない挨拶を交わした。
寝顔を見られて恥ずかしかったのか少し顔を紅くし無言で穴の中から出ていく。俺は体の状態を確かめる。昨日よりだいぶ良くなっている。これなら大丈夫だろう。
「それでは出発しましょう。」
彼女に言われ歩き出す。
今現在、俺は彼女を背負って歩いている。
猪の死体を越えた辺りでミリィの顔色が悪いことに気付いた。
無理をしていると分かったので、俺は彼女に、
「乗ってください。」
と言った。彼女はまた抱えられるのは恥ずかしかったのか拒否することはなく、
「ありがとうございます。」
と静かに言って身体を預けてきた。
しばらく歩いてやっと森を抜けた。
彼女が指を差して、
「あそこが私の住んでる村です。」
と言った。遠くの方に見える村に向かって再び歩きだした。




