#1相討ち、そして目覚め
「はぁ、はぁ、はぁ、さすがに、これは、ダメか?」
彼は自分に突き刺さる刀を見て、自分の最後を悟った。
「アイツもこれで終わりだ。」
そう言って、自分と同じように、胸の辺りにナイフが突き刺さり倒れている男に視線を向ける。
「俺も、これで、終わりか。」
そう言って、彼の意識は暗闇に落ちた。
「・・・・・・」
「・・よ、・・か・・・・・・よ。」
声が聞こえる。
「え・、・た・・・の・・・・つ・・・・・わ・・」
その声によって、彼の意識が少しだけ戻る。
「か・・・い・・」
朦朧とする意識の中、彼の耳に再び声が聞こえてきた。
「・・し・、か・・・・わ」
聞こえてきた声は、女性のもの。しかも、一人ではなく複数の。
「誰だ?」
彼は声の相手の姿を確認しようとするが、身体に力が入らない。視界もぼやけている。辛うじて、声から何か揉めているのは分かる。
「そ・、・・、・れ・・・わ。」
声の主の一人が自分に近づいてきて、
「また、逢いましょう。」
と自分に言った。
「貴女・・は、いっ・・たい?」
そう問いかけ、返事を聞くことなく、彼の意識は落ちた。
「うぅ」
少し拓けた森の中に一人の男が倒れている。
「うぅぅ、あぁ、どうしたんだ一体?」
男が起き上がりながら言う。
「ここは?一体どこだ?」
辺りを見回しながら言う。
「何が起きたんだ?どうしてこんな所に倒れてたんだ?」
頭が混乱する。
「確か俺は、うぅぅ。」
何も思い出せない。
思い出そうとするが頭が痛い、ズキズキする。
思い出そうとするのを頭が拒否している。
少しすると痛みが引いていった。
他に異常がないか身体を調べる。
「怪我はなし。痛みも頭痛以外他にはなし。」
それから自分の服装を見てみる。
「これは、俺の服だよな?、ボロボロだけど。」
見た限りボロボロだった。
よく調べると、ちょうど胸の心臓辺りに穴が開いている。
「これは?」
その時、頭の中に記憶が甦る。
「そうだ!俺は致命傷を受けて、それから、死んだんだよな?」
致命傷を受けたことは思い出した。だが、
今の状況を考えると、死んだのかは分からない。
周りは見る限り、森である。天国とも地獄とも思えない。
「あー、他には、う~ん。」
思い出そうと考えるが、さっきのように頭痛はしない。
しかし、何も思い出せない。
「えっ!どうして何も思い出せないんだ?」
自分が死んだ?こと、その時の光景は思い出せるが、
それ以外のことが思い出せない。
自分の名前さえも。
「これが、もしかして、記憶喪失っていうやつ?」
自分の名前さえ思い出せないのだから、
もしかしなくても、記憶喪失だった。
「参ったな~、自分の名前さえわからないなんて。」
頭を抱える。どうしてここで倒れていたのか、
ここがどこなのか分からず、
さらには自分の名前すら思い出せない。
これから、どうすればいいのか頭を悩ます。
「ここに居てもしょうがないから、移動するか。」
ここに居れば助けがくるかもしれないが、
いつになるか分からない。そもそも助けが来るかも分からない。
周りは森、自分は食料も何も持っていないし、
周りにも、食料になりそうな物は見つからない。
加えて、自分の服はボロボロ。
ここに居ては雨風を凌げず、その内、餓死か凍え死ぬ。
「移動するにしても、どっちに行く?」
どっちに行けばいいかも分からない、その時、
「・・・・」
「うん、何だ?」
呼ばれたような気がした。
「・・・・」
気のせいかと思ったがそうでもないようだ。
明確に自分が忘れている名前を呼ばれたわけではないが。
「行ってみるか。」
怪しい気もするが、他に行く当てもないし行ってみる。
呼ばれた気がする方向へと歩きだす。
しばらく森の中を歩き続ける。
歩いても、歩いても、森。道中、人どころか獣一匹見かけない。
「何処まで行けばいいんだよ?」
いまだに何も見つからない。嫌になってくる。
「ハァ~、疲れた。」
そろそろ何かあってもいいんじゃないか?
そう、思っていると、
「お?」
少し先、森が開けた場所を見つける。
そしてそこには大きな切り株とその上にある何かを発見する。
「あれは?」
走り出して、確認しに行く。
「これは・・・、人形。どうしてこんな所に人形があるんだ?
しかも、日本人形が。」
切り株の上にあったのは、日本人形だった。
日本人形と言ってもいくつか種類があり、ここにあったのは、
市松人形といわれる種類である。
「う~ん、誰かがここに置いていったのか?」
誰かが置いて行ったなら、近くに人がいるかもしれない。
「でも、この人形、なんだか見覚えがあるような?」
そう思い、日本人形をくまなく調べてみると、足の裏に文字が刻んである。
「これは?華羅繰?」
そうしてその文字を見た瞬間、再び記憶が蘇る。
「そうだ、俺の名は・・・・」
その時、
「プギィィーー!」
後ろの森からとても大きな咆哮が聞こえてきた。
「!!。何だ?!」
後ろを振り返ると、とても大きな猪がいた。




