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異世界転生後は自分らしく  作者: zawa
第四章 未熟編
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お断り

「なっ、何を言っているのですか陛下!そんな大役、校長はともかく私と彼には荷が重すぎます!!」


 部長さん(そういえば結構絡んでるけど、全然名前知らねえや)は、国王の言った言葉にものすごく驚いた顔をしている。それも当然だ。なんせ、彼だけでなく俺や侯爵、校長だってみんなものすごく驚いているのだから。


「そうですぞ陛下。彼らはまだ学生です。校長なら大丈夫かもしれませんが、他の二人にはさすがにそれほどの高難易度の任務を与えるのは無理がありすぎますぞ」


 侯爵もこう言っているが、本当にそうだ。この意見には激しく同意する。まだ学生なのに、騎士団の包囲網すら破った奴らと戦うなんて無理がある。しかも俺は一年だ。そんな任務できるわけがない。国王相手とはいえ、これは断るしか選択肢がないな。能力的にできないであろう依頼を無理して受けるのは、愚かで早死にするタイプの冒険者の典型的な例だ。冒険者になりたての時はまだ幼かったこともあって、よくギルド長や受付嬢、それに両親にも、耳にたこができるほど言われたことだ。


「そうは言うがな、ガルナダ公の息子の方はこの学校でもトップクラスであり、将来の騎士団入りも決定しており、しかも実力と人柄的には将来の幹部候補だ。今現在でも、最低でも中隊長にはなれるんじゃないかと言われているほどの実力者だ。実力的な問題はあるまい」


「確かに年齢が若いのは気になりますが、実力的には悪くはありますまい。それに悔しいですが、同じく騎士団に内定しているうちの息子よりも実力に人柄、特に人柄は格段に上であることは否定できません」


 部長さんはユリアのお兄さんだったんだな。実力に関しては直接見たことないからわからないが、確かに人柄はクミンよりも格段に上だろうな。

 

 もっとも、実力と人柄は必ずしも比例するというわけではない。いや、むしろ人柄がよくない奴のほうが、エゴが強かったり手段を選ばず強くなったりして、人柄のいい者より強くなったりするのだが。


「校長については言うまでもないだろう。校長はこの国でもトップクラスの実力者である。校長はAランクの実力者であり、世界に名をとどろかせるような高位冒険者たちはともかく、この国に仕えている者の中で彼女に確実に勝てると言えるのは、この国では首席宮廷魔術師であるカリウス様しかおらん。互角の者は騎士団長も含めて何人もおるが、確実に上と言えるのはあの方だけだ。これにはさすがに文句はないだろう?」


「もちろん校長については何も言うことはありません。私が心配しているのは、あくまで学生である二人のことです。特に、私の息子を倒したとはいえ一年生の彼に至ってはさすがに厳しいでしょう」


 何度も言うようだが、侯爵の言う通り俺を使うのはおかしいだろう。というか、校長はただ者ではないとは思っていたが、そこまですごいとは思わなかった。確実に俺よりも強いな。


「確かにそれについては余も心配しておった。クラス対抗戦のパーティー戦で見ることはできたのだが、相手はあくまで一年生だ。騎士団長は褒めておったが、それでもまだ早いだろう。実力が心配なのもそうだが、何より年齢がまだ低すぎる。さすがにこんな子供を連れていくほど人手不足ではないと思ってはいるのだが、彼を強く推薦する方がおってな。さすがにあの方の意見を無下にすることはできん」


「推薦した方ですか?それは一体どなたなのですか?」


「それは儂じゃよ」


 そう言って一人のおじいさんが校長室に入ってきた。一見すると好々爺なのだが、その老人が放つ雰囲気は油断ならない。まさに圧倒的な存在感を持っている。


 周りを見渡してみると、校長と国王以外の二人が著しく緊張しているのがわかる。


「「あっ、あなた様は!?」」


「うむ。お主たち三人と会うのは久しぶりかもしれんな。さすがに三百年以上生きておると、時間の感覚があいまいになっていってしまうのでな」


 三百年以上生きている、その発言だけでこの老人の正体が大体想像できてしまう。


「そこにいる小僧は初めましてじゃな」


 おじいさんがそう言ってこちら向くと、俺の体に強烈な負荷がかかった。何か巨大な圧力に体が潰されそうになるような感覚だ。これだけの圧力は、前世も含めていまだかつて味わったことがない。だが、この圧力の性質にはどこか身に覚えがあった。


「(これは、魔力による圧力か!)」


 以前母さんからも、今のように魔力による圧力を受けたことがある。だが、今回の圧力はその時のものとは全く別物だ。見えない圧力の強さの次元が違いすぎる。

 圧力が強すぎて、体を動かそうにもまったく動かすことができない。指先一つでさえ動かないような感覚だ。それどころか、声を出すこともできない。


「(潰されてたまるか)」


 俺は自分の魔力を使い、俺の体にかかる圧力に対して全力で抵抗する。


「ふっざけんなー!!」


 俺は魔力による圧力を自力で打ち破った。一度打ち破ると、さっきまであった圧力が嘘のように軽くなってなくなった。


「ゼエ、ゼエ、ようやく助かった」


「よくやったではないか。確かに〈鑑定〉が効かなかったので実力の把握が容易にはいかなかったが、経験から裏打ちされる目を欺くことは、よほどの使い手でなければなすことはできんぞ」


 この爺さんは俺に〈鑑定〉を使ったが、母さんからもらったマジックアイテムの指輪のおかげでわからなかったようだが、自身の経験から俺の持つ実力を大体見切っていたようだ。


 あの爺さんが簡単に俺の〈偽装〉を見破ったことも、俺に気づかれずに〈鑑定〉を使ったことにも驚きはない。なんせ、人間とは一線を画すハイヒューマンの爺だ。その上、三百年を超える経験値まである。


 そんな爺さんからしたら、俺の〈偽装〉を見破ることも、俺に気づかれずに〈鑑定〉を使うことも造作もないことだろう。経験に裏打ちされた目というのも、三百年も生きていると言われれば納得しざるを得ない。まあ、まだ十年くらいしか生きていない忍者見習いのアーシャにも少し見破られたがな。


「カリウス様、いったい彼に何をしたのですか?」


「なに、至極簡単なことじゃよ。ただ儂は彼の魔力の量と質を確かめただけですじゃ」


「魔力の量と質ですか?」


「ええ。今彼には、そこいらの魔法使いでは死に至ってもおかしくないような魔力を浴びせました。これに耐えることができるのは優秀な魔法使い。これを受けてもまったく苦にしない魔法使いは、儂にも匹敵するかもしれない超一流の魔法使い。そして苦しみながらもこれを打ち破れた彼は、宮廷魔術師にも匹敵するほどの魔力の量と質を持っているということじゃ!」


「なんと!宮廷魔術師に匹敵するほどですか!?」


「そうじゃ。儂の見込んだとおり、少なくともこの子は魔力の量と質だけなら宮廷魔術師にも匹敵する。これなら経験不足を考慮しても、連れていくことに問題はないじゃろう」


「そうですな。これなら、足手まといになることはありますまい」


 失敗した。いきなり強烈な魔力の圧力が来たから、反射的に抵抗してしまった。そのせいで、今までなんとかかんとか力を隠してきたというのに、今回で国王や校長、それに侯爵や公爵家の子息、そしてこの国最強の魔法使いにまで完全にばれてしまった。これほどの有力者たちにばれるのはまずい。想定していた中で、一番陥りたくなかった状況である。アーシャたちパーティーメンバーにばれるのとは、全然事の大きさが違う。


 これは学校に入学してしまったのが問題か?それとも、パーティー戦に出て国王の目にとまったからか?はたまた、クミンとの決闘騒ぎのせいか?本当に嫌な事態になった。


「ミネルバには宮廷魔術師就任を断られたが、その息子には入ってほしいものだ」


「そうですな。ミネルバは儂の弟子の一人であり、宮廷魔術師にもなってほしかったのじゃが、彼女は故郷に貢献することをとりましたからな」


 母さんがこの人の弟子!?母さんはそんなにすごかったのか?


「母さんと知り合いなのですか?」


「まあの。彼女には素質がありそうじゃったから、一年ほど教えてやったのじゃ。その後宮廷魔術師への誘いには断られたがの。まあ、故郷のことを優先するのもわからんでもない。実際、彼女がロークスにはいったことによってロークス子爵家の影響力は強まったしの」


 カリウスは少し残念そうな顔をした。


「そうですね。できればもっと宮廷魔術師が増えてくれるといいのですが…まあ、貴族を通してとはいえこの国に仕えてくれてはいるので、国王である余からすればその点はよかったのだが」


「俺のことを知っていたのは、母さんの関係のせいですか?」


 今の話を聞いていると、俺の存在が知られていたのは母さんのせいであると考えることができる。


「その通りじゃ。ミネルバから手紙があっての。自分よりも優れた魔法の素質を持つ子供が王都の学校に行くから、できれば修業をつけてほしいと言われての。Aクラスに入ったと聞いたときは少し引っかかったのじゃが、パーティー戦の結果などを聞き改めて調査しての。そこでお主の強さを知ったのじゃ。ミネルバの話ではBランクの力はあると聞いていたが、まさにその通りじゃったな」


「そっ、そうですか」


 母さんめ。無難に過ごして卒業しようとしていた俺の思惑を崩しやがって。学校に行く前にあらかじめ自分のプランを言っておくべきだったか?いや、それを言ったらもっと俺がそうならないように手を打ってくるかもしれない。三か月余り逃れただけでも良かったと考えるしかない。


「まあそういうわけだ。もちろん三人だけに任せるつもりもないし、成功報酬もちゃんと与える。この依頼、受けてもらえぬか?」


「ふん。国王からの頼みじゃ。一応男爵位をもらっておるわしが受けぬわけにはいかんじゃろう。それに、ディアナ殿下はうちの生徒でもある。助けに行くことに異論はない。この学校はわしがおらずとも、副校長がいれば回る。実際、普段からよく奴に仕事を丸投げしておるしの」


 副校長の頭皮が寂しいのはそのせいじゃないのか?なんか一気にあの人がかわいそうになってきた。最初は偉そうにも見えたが、これを知ると同情心から『あまり負担をかけてあげないで!』とも思ってしまう。


「まだまだ学生の身であり未熟者ですが、国のために、そして囚われているディアナ殿下のためにも、謹んでお受けしたいと思います」


 確かに国王からの依頼を断るのは難しい。現に、二人も断ってはいない。国王よりも年上であり、その上恩師でもある校長すらも受けている。普通に考えれば俺も受けざるを得ないだろう。


「お気持ちは嬉しいですが、謹んでお断りさせていただきたく思います」


 俺の国王の要請を断るという発言により、場が一瞬凍り付いた。





 






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