遭遇
「俺の正体か?そんなのは簡単だ。俺はこの山の近くにある村の住人さ」
俺たちに話しかけてきたのは、がっした体型の成人男性だ。
「そうか。つまり、そこにいる奴ら全員コリアト村の住人というわけか?」
「全員?そりゃ一体何のことだ?」
男は一応とぼけてはいるが、にやにやしながら答えている。おそらく本気で騙そうというわけではないのだろう。
「そうか……ならば!」
俺はそう言って男に向かって斬りかかる。
「おっと、やるじゃねえか。おいお前ら、もう出てきていいぞ!」
男は俺の剣を防ぎながら、周囲に隠れている仲間たちを呼んだ。
「やっぱ盗賊団のメンバーだったか」
「ああそうだ。俺たちのアジトの情報が洩れそうなんでな。悪いがここで死んでもらうぞ」
「ちょっと兄貴!何言ってんすか。ガキとはいえ女は残しとかなきゃならんでしょ」
「いや、この小僧のほうも意外と売れるんじゃねえか?」
「ああそうだったな。だが、決してこいつらを逃がすんじゃねえぞ。アジトの場所や結界のことを知られている以上、逃がすくらいなら確実に殺しておかないといけないんだからな」
「ええわかってますよ。ボスへのいい手土産になるかもと思ったんですがね」
どうやらこの場には盗賊団のボスはいないようだ。
「それはそうだが、こいつらの場合は逃がさないことが優先だからな。ガキどもも覚悟しな。命乞いすれば命だけは助けてやるぜ。命だけはな」
「ふん。お前らの命は助けんがな」
「ルナの言う通りだね。僕たちのことをなめすぎじゃないかな?」
「いいからとっとと戦うのです!」
「おもしれえじゃねえか。ならその小さな体で存分に味わってもらおうじゃねえか。野郎ども行くぞ!」
男の後ろにいた盗賊たちが一斉に向かってきた。
「全員やる気ありすぎだろ。今テレポーテーションで逃げるのもなんか違うだろうし、すっかりやる気になっている三人も納得しないだろな。
周りには木もたくさんあるし、山火事になるかもしれない火や雷の魔法は使えない。そうなるとこれを使うのがいいかな?〈ウィンドボム〉」
ウィンドボムは最近覚えた将級の風魔法であり、階級に違わぬ高威力を誇る。効果は文字通り風の爆弾を放つものであり、今回のような敵が密集しているようなときには効果的な魔法だ。
『ドッカーン!』
「「「「「は?」」」」」
俺の放った〈ウィンドボム〉により、盗賊たちは大きな被害を受けた。いや、大きな被害を受けすぎてしまった。
「ちょっとやりすぎたかもな」
「ちょっとどころじゃないよ!これじゃあ僕たちの出番がないじゃないか!?」
「これはさすがにな。それに、周囲の被害も馬鹿にならんだろう」
「ウォルひどいのです!ニニャの出番が全然ないのです」
俺の放った〈ウィンドボム〉により、襲ってきた盗賊たちが全滅してしまった。死体はいくつか残っているが、個人を特定できないような死体もいくつかある。盗賊を殺したことはしょうがないことだが、ここまでするつもりはなかった。
また、周囲にも被害が出ている。木を燃やすような魔法は使ってはいないので山火事にはなっていないが、〈ウィンドボム〉の効果範囲はめちゃくちゃになってしまった。
「これはやりすぎたよな」
「おい!これはいったいどういうことだ!?」
大きな音を聞いて駆け付けたのか、筋肉質の大きな男がやってきた。
「ちょっと待て。おいお前ら!こりゃ一体どうなっているんだ!?おい!頼むから答えてくれよ」
この男は盗賊たちの仲間なのだろうか?盗賊たちと知り合いのようだし、彼らが死んでいることに悲しんでいるようだ。
「そこのガキども、これはお前らがやったのか?」
「ああそうだ。そいつらは俺たちを殺そうとしてきたからな。これはあくまでも正当防衛だ」
「そんなの知ったことじゃねえよ!俺がお前らを殺す理由はそれだけで十分だ」
「盗賊らしい理屈だな」
「お前ら……もしかして村に来たとかいう四人組のガキの冒険者か?」
「だったらどうする?」
「お前らのところには何人か送っていたはずだ。この惨状を見るに、そいつらも倒した来たってことだな」
「ほとんどばれてるような相手にわざわざとぼけるのも面倒だから言うが、俺たちはお前の言う通りここらに出るという盗賊団を討伐しに来た者だ」
「そうかい。おい!お前らも出て来い」
男がそう言うと、おそらく残りすべてであろう盗賊団が七人ほど出てきた。
「お前らが強いのはこれまでの結果で十分にわかった。だが、それでも俺には敵わないだろう。お前ら、陣形を取れ!」
盗賊たちがボスの指示に従って陣形を取り始めた。ボスの周りの盗賊たちは、これまでの盗賊たちと同じようなレベルの武器であるが、ボスの武器だけはそれらとは違い大きくて立派な斧だ。〈鑑定〉で見たところ、かなり強い武器であることは間違いなさそうだ。
「確かにボスはほかの盗賊たちよりも強そうだが、これまた同じパターンで行けるんじゃね?〈ウィンドボム〉」
盗賊たちがおあえつらえむきに密集してくれているので、さっきと同じ手でも行けると踏んで魔法を放った。
「〈飛斬〉」
『ドッカーン!』
俺の放った〈ウィンドボム〉は盗賊たちに届く前に、ボスの放った斬撃に当たり爆発した。
「ちっ、斬撃を飛ばせるのかよ」
「これが俺たちが聞いた大きな音と、こいつらがこんなにやられた原因か。確かに将級魔法を使えるような奴の相手はあいつらには荷が重すぎるか。その年で将級魔法を使いこなせると、さしずめエリートといったところか」
「別にエリートなんかじゃないさ」
「自覚がない奴はそういうのさ。おいお前ら!この生意気なガキは俺一人でやる。そこのガキ三人くらいならお前らでも大丈夫だよな?」
「当然だぜ。これくらいなら俺達でもやれるぜ」
「なんだと!?」
「油断はするなよ。こいつらだってなかなかの力だ。俺はこのガキに専念するから、お前たちに指示はしてやれねえ。いつもの訓練通りにすれば大丈夫だろうが、決して油断するなよ」
「わかってるぜボス。おいてめえら!ボスに心配かけないくらい完膚なきまでにやってやるぞ!?」
「「「「「「わかってるぜ!」」」」」」
盗賊たちは俺達を分断させて戦うつもりのようだ。
「みんな!盗賊どもの狙い通りに動くつもりだがそれでいいか?」
「僕は構わないよ」
「私も大丈夫だ。私たちをなめたことを後悔させてやろう」
「ニニャは向こうで一番強そうな盗賊団のボスと戦ってもみたいのですが、ニニャではまだまだ勝てそうにないので、ウォルに譲るです!」
「それじゃあ頼むぞ!それとローマ!三人の援護をしてやってくれ」
『くま!』
三人でも勝てるかもしれないが、念のためローマも加えておこう。ローマの戦闘訓練にもなるので一石二鳥だ。
「お前らも決まったようだな。それじゃあ行くぞ!」
俺たちと盗賊団の戦いが始まった。




