後始末
「それじゃあ、生きている奴は拘束するか」
俺はさっそく冒険者?たちの生存確認と拘束をすることにした。死んでいる奴は拘束しても意味ないが、生きている奴は念のため拘束しておく必要がある。
「君、今回は本当に助かった。ありがとう」
冒険者?達に襲われていた少女が声をかけてきた。
「別にお前を助けたんじゃない。俺はただ、ローマが心配だっただけだ」
「ふふ、そういうことにしておこう。それと、ローマというのはこの子熊のことか?」
「そうだけど」
「そうか、ローマというのか、いい名前だな」
『くまくまー』
ローマが胸を張っている。どうやら名前をほめられてうれしいようだ。
「そうだ!ぜひ自己紹介をさせてくれ。私の名前はルナ、見ての通りハーフエルフだ」
「見ての通り?俺にはハーフエルフだとわからなかったが」
「何を言っている!この耳が見えないのか」
ルナは怒っているようだ。
ルナに言われたとおり彼女の耳を見ると、普通の人族よりも微妙に耳がとがっているように見える。
しかし、俺からすると「そういう人もいるよね」と言えるくらいである。純血のエルフを見たことは無いが、本でみたところもっと耳がとがっていた。ハーフエルフは知らないが、ルナの耳はエルフよりも人族に近いように思う。
「確かによく見るととがっているけど、人族でもそれくらいなら何人かいるんじゃないか?」
「むっ!そうなのか?」
「俺から見るとそう見えることは確かだ。もしかして、ハーフエルフであることに誇りを持っているとかだったか?」
「生まれた種族に誇りを持つことは当然じゃないか?もちろん、だからといって他種族を見下すなんてことはしないが」
シルフォード王国では、人に近い種族を差別することは基本的に禁止されている。もっと言うならば、シルフォード王国と国交を持っていたり、国交を持っていなくとも強力な力を持つ国の種族は差別しないことになっている。
誰だって、多数の同族が虐げられている国に好意を抱かないだろう。下手したら差別が原因で、国家間の戦争になることもあり得る。
初代国王は他種族への差別を禁止しようと唱えたのだが、他種族というとゴブリンやオークなどの魔物も入ってしまう。さすがにそこまでは無理なので、人に近い種族か国交を持つなどして友好的な種族に限定したのだ。
そのため、シルフォード王国では他種族とのハーフが忌み嫌われてはいない。個人的にハーフが嫌いという人はいるだろうが、国として差別することは無い。
「俺は別にそうは思わないな。人族であることに文句はないけど、それを誇ろうと考えたことは一度も無いな」
「人族とはそういうものなのか?」
「人族がどうとかは知らん。ただ、自分がそう思っているだけだ」
「考え方は人それぞれだしな。それで、君の名前はなんていうんだ?」
「俺の名前はウォルコットだ」
「ウォルコットか・・・年齢は?」
「それにも答えたいところだが、まずはこいつらの後片付けからしてもいいか?」
「すまない。当然私も手伝わせてもらいたいのだが」
「それならこいつらを縛るのに手を貸してくれ。もしも死んでいるなら、縛らなくてもいいから」
「了解した」
俺とルナは冒険者?達を手分けして縛っていった。
四人とも生きてはいたようで、四人とも縛ることになった。
「やっぱり冒険者だったか」
男たちは冒険者カードを持っていた。
「Dランク三枚にCランク一枚。結構強い奴らだったんだな」
「ウォルコットは知らないのか?こいつらは結構有名なパーティーだぞ」
「それだと、こいつらをこんなにしたらめんどくさいことになるかな?」
これが原因でいろんなところから目を付けられるのは面倒だ。
「面倒は怒るかもしれないが、誰かに恨まれることは少ないと思うぞ。こいつらは王都でも素行が悪いことで有名だったしな。調べれば、今回私にしようとしたことを何回か別の人にしていることがわかるんじゃないか」
「冒険者を外で襲ったりということか?」
「そうだ。と言っても、私はこの都市に来てまだ一ヶ月位しかたっていないから、詳細なことまではよくわからないが」
「それだと、調べてから奴隷にされるといった感じか?」
「そうだな。嘘を感知するベルがあるから、それにかかれば彼らは終わりだろうし、私たちの潔白も証明されるだろう」
とりあえず俺の身は危なくならなそうだ。
「それで、取り分はどうする?」
後でもめ事にならないためにも、これはあらかじめ決めておく必要がある。
「それなら大丈夫だ。今回私は助けられて側であるから、取り分なしでいい」
「ファイティングウルフはどうする?」
「それもいらない」
おれはこのファイティングウルフを出したら依頼達成になるだろうか?
微妙なところだが、少なくとも依頼失敗にはならないだろう。
成功報酬をもらえなかったとしても、ファイティングウルフの素材と冒険者たちを犯罪奴隷にして売った時にもらえる金があれば、お釣りがくるかもしれない。
Cランク冒険者一人とDランク冒険者三人だ。いい値段がついてくれるだろう。
「それじゃあ遠慮なく全部もらっていくぞ」
「異論ない。もしウォルコットがいなければ死んでいたからな」
「わかった。俺はこれから王都に向かうが、ルナはどうする?」
「私も王都に一度帰るところだ。今日の依頼はすでに達成済みだからな」
「じゃあ行くか」
俺たちは王都に向かって歩き出した。
「それではこれが成功報酬です」
俺は問題なく成功報酬をもらうことができた。今回の場合は問題なくもらえるそうだ。
「なるほど、ファイティングウルフの討伐を受けていたのか。それでファイティングウルフを欲しがったのだな」
「そうだ」
「なあ、これから一緒にご飯を食べに行かないか?お礼がしたいんだ」
フィーネには遅くなるかもしれないから、夜ご飯は用意しなくていいと言ってある。ルナと一緒に行くことに問題はない。
「時間はあるから大丈夫だ。ただ、未成年なので酒場は遠慮したい」
シルフォード王国では未成年の飲酒は禁止である。
「私も未成年だから酒は飲めない。酒場みたいなところに行く気はないぞ」
「それならよかった」
俺たちは冒険者ギルドから出た。
「それにしても、ものすごくスムーズだったな」
俺たちは店に行くまでの道中、冒険者たちの引き渡しがものすごく簡単だったことを話していた。
「確かに、衛兵やそれと一緒に来た検察官も、完全に罪人だと疑ってなかったからな」
門番に冒険者たちのことを話すと、すぐに検察官を呼んでくれたのだ。
彼らは回復してから今日明日と取り調べを受けるだろう。そこで罪になった場合にはおそらく犯罪奴隷となるので、その時に俺は彼らの奴隷としての価値に応じた金を受け取ることができる。
この国では重罪を犯すと犯罪奴隷にされることが多いので、あいつらも十中八九犯罪奴隷になるだろう。
「俺はどれくらいもらえるんだろうな?」
「どうだろうな?私もこんなケースは初めてなんだけど、彼らは結構高いランクの冒険者だから、上手くいけば百万R以上になるんじゃないか?」
「あいつらの私財はどうなるんだ?」
「国に入るはずだ。さすがに私財まではもらえないぞ」
「そんなにうまい話しはないか。盗賊なら別だったんだがな」
「そうだな。でも、百万R以上もらえるかもしれないんだからそれでいいじゃないか」
「それもそうだな」
「着いたぞ、ここが私のお気に入りの店だ」
レストランというよりは定食屋といった感じだ。だが、こういう店は嫌いではない。
人はけっこう入っているが満員ではなく、席はちゃんと空いている。
「なあ、ここのおすすめってなんだ?」
この店がお気に入りという以上、おすすめくらい知っているだろう。
「ここのおすすめは日替わり定食だ。安心しろ、今まではずれは一度も無い」
ルナが自分の胸をたたいて自信満々に言う
「ルナはまだ王都に来て一ヶ月なんだろ。それだと、自信を持って言えないんじゃないか?」
「とっ、とにかくおいしいのだ」
常に堂々としているからか、慌てる姿は何ともかわいらしい。
「さてと、王都に来て一ヶ月のルナを信じて、日替わり定食にするか」
「かっ、からかうな」
このままからかっていたい気分だったが、しつこすぎると嫌われるので、とりあえず注文した。
「すいません!日替わり定食二つ!」
「はいよ!」
俺とルナはどちらも日替わり定食を頼んだ。
結果、日替わり定食は外れではなく、彼女がこの店を好むことがわかるほどおいしかった。




