ウォル対冒険者?パーティー
今回から魔法の表記を微妙に変えます。
内容が変わるわけではないので、あまり気にせず読んでください。
「〈ファイアーボール〉」
まずは魔法を一発ぶち込んで様子を見るとする。
「そんなのが効くかよ」
相手のリーダー?と思われる前衛の男が、予想通り突っ込んできた。
彼らのスタイルは前衛の戦士が近接戦をし、盗賊が遊撃として隙を狙い、魔法使いとアーチャーが遠くからサポートするといった陣形だ。
前衛の戦士が攻撃を仕掛けてくる。俺はそれをかわして移動するが、戦士は当然ついてくる。
『キィン』
剣と剣がぶつかった。
「その年にしては悪くないが、俺には全然及ばないな」
「やっぱり剣じゃ難しいか」
こいつの戦いを見て最初から剣では勝てないと思っていたが、向こうもこの短いやり取りの間にそれがわかったようだ。
「シュッ!」
「まずい!」
盗賊がスティレットを俺に向かって突き出してきた。
俺はそれを何とかよけるが、当然目の前にいた相手がそのすきを見逃すわけがない。
「おらあ」
「ぐっ」
その攻撃を何とか防御するが、当然それだけではなくちゃんと連続で攻撃してくる。
一対一の近接戦闘では勝つのが難しい相手に加えて、常に隙を狙っている相手も存在しているのだ。近接戦闘での戦いは分が悪すぎる。
俺は一度戦士から距離をとった。当然追いかけてくると思ったのだが、なぜか追いかけてこない。だが、その理由はすぐにわかることとなる。
「〈ファイアーバレット〉」
敵後方から魔法と矢が飛んでくる。矢も〈ファイアーバレット〉も数が多いので、すべてかわすのは無理そうだ。
もっとも、かわすのが無理だからといって当たるとは言ってないが。
「〈ウィンドウォール〉」
俺は風の壁を発動させた。相手は矢と〈ファイアーバレット〉なので、正面から防御するのではなく、風の壁で軌道を誘導することにした。
これがうまくいって敵の攻撃が外れていったので、ダメージは負わなかった。
「うまい使い方をしますね」
「あいつには遠距離攻撃じゃなく、近接戦闘でガンガン攻めるほうが効果的そうだな」
「そうだな。強化魔法を使うコーラはともかく、弓を使う俺の出番は少なそうだ」
「そうっすね。俺と兄貴で攻めてる時のほうがきつそうでしたもんね」
へぇ、魔法使いの名前はコーラっていうのか。大人気炭酸飲料と同じ名前だな。
って、そんなこと考えてる場合じゃねえ。このままだと確実に負ける。向こうもこちらに作戦が丸聞こえでも何も関係がないといった感じで、ものすごく余裕そうだ。
「私も手伝おう」
少女が少し回復したようだ。自分の持っていた回復ポーションを飲んだことと、俺が戦っている間休めたおかげだろう。
「気持ちは嬉しいけど、その様子じゃ足手まといだ。ローマと一緒にそこで見ていてくれ」
「しかし!」
「大丈夫だ。俺はまだ本気を出していない。勝算は十分にある」
「それならば任せる。しかし、危なくなったら私も戦いに出る」
「了解」
少女がやけにあっさり引いた気がするが、おそらく自分でもまだ本調子どころか、全然動けないとわかっているのだろう。
自分の状態をしっかり把握できる子でよかった。
「おいガキ、本当に一人でいいのか?」
奴らはみんなにやにやしている。おそらく、勝利を確信しているのだろう。
「黙れ雑魚ども。その気持ち悪い顔を二度とできないようにしてやる」
「なんだと!?」
戦士の男は見た目通り挑発に弱いようだ。
もちろん演技の可能性もなくはない。それに、いい加減こいつらをとっとと仕留めたくなったのも事実だ。
「〈ファイアーボール〉」
「またそれか。そんな魔法じゃ、俺たちに勝つことはできないぞ」
そんなことは当然わかっている。しかし、この〈ファイアーボール〉の目的はダメージを与えることではなく、あくまで挑発の一種だ。
「死ねクソガキ」
俺は戦士と後衛のアーチャーが重なるような位置に動いた。
普段なら戦士とアーチャーが一直線に重なるようには動かないだろうが、頭に血が上った戦士はそのことには気づかない。
「〈ライトニング〉」
「くそっ!」
戦士は俺の魔法をかろうじて躱した。
「てめえみたいなガキがそんな魔法を使えるなんて思いもしなかったぜ」
「ぐあ!」
「どうした!?」
戦士が後ろを振り向くと、アーチャーが倒れているのが見えた。
「まさか俺じゃなくて、後ろが狙いだったなんてな」
アーチャーは致命傷をなんとか避けたようだが、ダメージはかなり受けている。戦闘に参加することは難しそうだ。
「〈ウィンドスラッシュ〉」
冒険者たちは予想外の反撃を受けて動揺している。ここは畳みかけるべき場面だ。
「くそっ!」
戦士はこの攻撃を躱すことはできない。躱してしまえば、後ろにいるアーチャーは確実に戦闘不能になる。
当然戦士は〈ウィンドスラッシュ〉を躱さずに受けた。
「〈シールド〉」
盗賊が俺の隙を狙っているのは知っていた。予想通り攻撃が来たので、当然防御したのだ。
「ちっ!」
「来るならこのタイミングだと思っていた」
「おらあ」
盗賊に反撃しようとした俺に対して、戦士が斬りかかってきた。
「あーもー」
戦士は俺に攻撃を防がれるとすぐに距離をとった。
おそらく盗賊を逃がすための時間稼ぎだったのだろう。盗賊も俺から距離をとっている。
今まで多数の魔物とは戦ってきたが、人間との一体多数は経験したことがない。
魔物は全然連携ができていなかったものばかりだったので、複数相手は厄介だったが、たくさんいる以外の脅威はなかった。
しかし、こいつらはしっかり連携ができている。手数が多いために、一人ですべて対応するのは難しい。
「少し目立つがしょうがない。長引かせる前に終わらせてやる。〈サンダーレイン〉」
冒険者パーティーたちに幾多の雷が降り注ぐ。
「あんな子供がこんな高度な魔法を使えるなんて!」
「ふざけんなよくそ!」
これで半分は削れるだろうな。想定外に厄介だったが、人数を減らせれば大丈夫だろう。
「おいお前ら!」
冒険者たちは戦士以外立っていない。戦士がほかのメンバーにポーションを飲ませているので生きているのかもしれないが、立ち上がる気配がまったくないので、おそらく戦闘不能なんだろう。
「〈ウィンドスラッシュ〉」
漫画とかだと戦士が俺に攻撃しようと思えるまで待つのだが、俺はそこまで待つ気はない。
戦闘において敵の隙をつくのは当然だし、何も卑怯なことでは無い。むしろ仲間にポーションを飲ませる時間を与えてあげただけ感謝してほしいくらいだ。
「くそったれが」
残った戦士はかろうじて魔法を防いだ。
「この卑怯者、正々堂々と戦わねえか」
「お前が言うか」
先ほどまでの行動を見返せばどちらのほうが卑怯なのかはわかるはずだ。自分のことを棚に上げてよく言えるものだ。
「うおー、仲間たちの仇だ」
戦士が突撃してきた。頭に血が上っているためか、動きが直線的過ぎる。こうなってしまえば、後はどうとでもできる。
「うおーおおお」
「終わりだ」
俺は剣で男を斬った。死んではいないだろうが、これで戦闘不能になったはずだ。
「さてと、これから色々後始末しないとな。まずは冒険者たちの生存確認と拘束からだ」
俺対冒険者?パーティーの戦いは、俺の勝利で幕を閉じた。




