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異世界転生後は自分らしく  作者: zawa
第二章 学園入学編
31/106

王都までの道のり

 フィーネサイド



「なんでそのことを了承したのよ!」


 私は今、ものすごく怒っている。


「あなたたちは騎士団の一員なんでしょ!それだったら、ウォルじゃなくて、あなたたちが残るべきだったんじゃないの!?なんで護衛対象でもあるはずのウォルが、殿を務めることになるのよ」


 ウォルが強いのは知っている。昔から魔法が得意だったし、私と同い年ですでにDランク冒険者になる実力がある。もしかしたらこの中で強いのはウォルかもしれない。もしそうだとしても、ウォルがあの場に残るのは、やっぱりおかしいと思う。


「すいませんフィーネ様!しかし、全員生き残るには魔法が得意のウォルコットに時間稼ぎしてもらうことが一番でしたし、彼なら自分一人で逃げ切ることも可能だと判断しました」


 頭ではそんなことわかっている。それでも、感情的に許せないこともあるのだ。


「ウォル君はまだ十歳ですよ!それなのに、何で置いてくるんですか!?」


 ファナも私と同じ意見のようだ。


「力の前に年齢など関係ありません。もちろん、護衛対象でもあるウォルコットを置いてきたのは褒められた行為ではありません。しかし、全員生き残るためにはこれが最善だったのです。

 もしも彼に何かあったら、護衛隊長である私が責任をとります」


「どうやって責任をとるのよ!あなたが何をしたって、ウォルは帰ってこないのよ」


「それは・・・私の除隊とかで」


「そんなことをしても、何の意味はないわ。もしもウォルが帰ってこなかったら、あなたには一生騎士団で、ロークス領のために働いてもらうわ。それがあなたへの罰よ。もっとも、ウォルの両親がなんていうかわからないし、そもそもウォルが帰ってこないとは限らないけど」


「フィーネ様・・・ありがとうございます」


 きっとこれでいいんだ。責任をとって騎士団をやめられても、何の意味もないもの。


「ほらあなたたちも、オークはまいたかもしれないけど、ウォルが持っていたマジックバッグがないんだから、食料調達をしなくちゃ!」


「「「「「はい!!」」」」」


「フィーネ様、ご立派になられた」


「フィーネちゃんはなんでそんなに立派にふるまえるの?ウォル君が心配じゃないの?」


「ファナの言いたいことはわかるよ。でも、私にはウォルが簡単に死ぬなんて思えないもの。それに、もしもウォルが帰ってきたときに私たちが全滅してたら、それこそ最悪じゃない。だから、私たちはウォルのことを信じて、自分のするべきことをすればいいのよ」


「フィーネちゃんはすごいね」


 ファナにはああ言ったけど、そんなわけない。私だって悲しいし、泣きたいけど、私はロークス家の娘なんだ。騎士たちを不安にさせないためにも、今はこうしておかないといけないんだ。


 護衛隊長辺りは私の心情を察していそうだけど、それでも強く見せなきゃいけない。お父さんがいつも言っていたのは、「民が弱っている時こそ強く見せなければならない。そうすれば、民の不安を和らげることができるのだから」だ。そして、今がそれを実行するときなんだ。


「フィーネ、私たちはどうすればいいかしら?」


 私たちに声をかけてきたのはユリアだ。ユリアとは知り合いであり、仲はそんなに悪くない。親同士が同じ派閥ではないが、今のところ敵対もしていないので、どちらかといえば仲がいい部類に入るだろう。


「できれば食糧調達に加わってほしいけれど、お願いできるかしら?」


 ユリアには期待できないかもしれないが、レーミアとかいう女騎士にはぜひとも参加してほしい。


「レーミア、任せてもいいかしら?」


 ユリアもわかっているようで、真っ先にレーミアにお願いしている。


「は!お任せください」


 レーミアはウォルに対してはひどい態度だったようだけど、ここでは今のところそんな態度は見せていない。


 今の彼女たちは私たちに混ぜてもらっている身であり、レーミアはともかくユリアのほうは、私たちに護衛されているといっても過言ではない。実際にユリアは王都に着き次第報酬を払うことを約束している。


 また、彼女たちがオークたちを多数引き連れて逃げてきたことも確かなので、大きく出られないのだろう。それに、ウォルと会ったときは彼女にも余裕がなかったということもあるのだと思う。人は極限において本性を出すという。あれ?それだと、レーミアの本性は傲慢なやつということになってしまう。


「フィーネ、私は狩りの経験はないけど、料理の経験はあるから、食料調達じゃなくて、調理のほうに行きたいのだけど、それでいいかしら?」


「それでいいわ。それじゃあ調理班に加わってもらうわ」


 その日食べた料理はそんなにおいしくはなかった。それも当然で、騎士たちはオークとの戦闘に加えて、ここまで全速力で逃げてきたのだ。相当疲労がたまっているし、けが人だって何人も出ている。回復魔法を使えるものはいないがポーションはある。でもそんなに数はないので、全員の体力が戻るわけではないし、ポーションでは精神的疲労は抜けない。よって、まともな獲物は狩れなかったのだ。


 全員が疲れているうえに、料理もおいしくはなかった。私たちの一団の雰囲気が悪い。


「早く王都につかないかな」


 王都につけば雰囲気がどうこうとはならない。予定では明日か明後日につくはずなので、私はできるだけ早く着くように祈りながら寝た。









「おはようございます」


 今日も私たちの一団は雰囲気が悪い。でも、それも今日か明日までの辛抱だ。ウォルがこのタイミングで来てくれさえすればいいが、そんなことは難しいだろう。ウォルと再会するのは王都になると思う。だから一刻も早く王都について、ウォルを出迎えてやりたい。


 私たちは朝ご飯を食べてから出発した。人数的にはウォルが減ってユリアとレーミアが増えただけなので、実質的には女性が一人増えただけだ。馬車が狭いということは無い。


「早く王都に着くといいですね」


 ファナも私と同じことを考えているようだ。この雰囲気が悪い旅が、早く終わることを祈っているのだろう。


「私もそう思います。今度は魔物が襲ってこないといいですね」


 ユリアも気丈に見せてはいるが、魔物が少し怖いのだろう。


 無理もない。彼女の護衛たちはオークの群れに蹂躙されたのだ。ユリアとレーミア以外は死んでしまったのだろうし、二人は命からがら逃げてきたんだ。魔物、特にオークに対する恐怖心が全くないというほうがおかしいのだ。


 この馬車の中には私とファナ、それにユリアしかいない。同年代の女の子しかいないので、弱音が出てしまってもおかしくない。


「そうね。騎士たちの疲労は完全には抜けていないから、今強い魔物や盗賊に襲われたら危ないわね」


「そう・・・ですよね」


「ですね」


 しまった!私の一言で、この場の雰囲気が悪くなってしまった。私も弱気になっているのかもしれない。


「でっ、でも、王都から近いし、万が一襲われても王都の騎士団や通りがかったほかの馬車に助けてもらえるかもしれないわ」


「そうです!もう少しで王都なのですから、大丈夫なはずです!」


「ユリアさん、フィーネちゃん、私も、そう思うことにします」


 何とか軌道修正できたようね。ユリアは自分に言い聞かせているようだけど、それで雰囲気が良くなるなら、それに越したことは無いわ。


「王都が見えたぞー」


 王都が見えるところまで来たようだ。当初の予定よりも少し早いのは、移動速度をかなり上げたからだろう。責任者である護衛隊長も、多少無理してでもできるだけ早く王都に着くことを優先したようだ。


「よかったー」


「やっと休める」


 騎士たちもつらかったのだろう。当然帰りの道もあるのだが、今は王都に着いてゆっくり休めることがうれしいのだろう。


「お前ら!まだ屋敷についてはいないんだぞ!最後まで気を緩めるな!」


「「「「「はい!!」」」」」


 王都は見えたことで騎士たちの士気も上がった。さすがにベテランなだけあって、締めるところは締めてくれる。








 王都の門まで来た。門番のチェックも無事にパスして王都の中に入った。


「みなさんありがとうございました。落ち着いたら、フィーネといっしょに何人かで王都のガルナダ家の屋敷まで来てください。フィーネにお礼をしてもらえるように、お父様に話をしっかり通しておきます」


 彼らはロークスの騎士団だ。よって、ガルナダ家から直接報酬をもらうのは体裁上よくない。なので、名目上は私にお礼をして、そのお礼を私が騎士団に報酬として大半を渡すことになる。


「わかったわ。入学試験があるのが五日後だから、それまでには取りに行くようにするわ」


「それと・・・ウォル様が王都まで来たら、ガルナダ家まで来てくれるように言っておいてください」


 ウォル様?ウォルに様付けしていることは少し気になるけど、貴族令嬢としては正しいのかもしれない。


「ウォルが帰ってきたら伝えておくわ。それじゃあ、今度はガルナダ家で会いましょう」


「わかりましたわ。フィーネ、ファナ、また会いましょう」


「まっ、また今度会いましょう」


 いろいろあったけど、ようやく王都に着くことができた。


 これでウォルが戻ってくれば完璧だ。だからウォル、早く帰ってきなさいよね!








ウォルサイド



「ふあーよく寝た」


 野営でこんなにがっつり寝るとは思わなかった。それだけ昨日の戦闘で疲れていたのだろう。いくらゴーレムに見張りをさせていたとはいえ、こんなにがっつり寝たのは失態だった。運よく何にも襲われなくてよかった。


『くまー』


 隣ではローマが添い寝している。昨日は久しぶりに外で思いっきり羽を伸ばしたのだろう。遊び疲れて眠っちゃったんだな。


 俺は風呂に入ることにした。野営で風呂に入ることはなかなかできないが、そこは《マジックボックス》だ。俺はドラム缶を取り出して、その中に魔法でお湯を張った。


「気持ち~」


 昨日の戦闘で結構汗をかいていたのだが、昨日は疲れて寝てしまったために、汗でべとべとする上に疲れもたまっていて、結構つらかったのだ。なので、ここらで一旦汗を流して疲れをとってから、王都に向けて歩き出そう。


 このままゆっくり過ごして入学試験に間に合わなかったとか、王都に向かわずに別のところで冒険者活動をしようとかも考えたのだが、前者の場合は入学試験はあくまで力を見るためのものであるため、入学だけならできてしまう。後者の場合はいろいろな人に心配をかけそうなので却下だ。


 入学試験まであと五日ある。普通に歩くならともかく、身体強化魔法があるので、五日あれば十分間に合うだろう。


「それじゃあ準備するか」


 俺は荷物のかたずけ(《マジックボックス》の中にぶち込むだけだが)をして、出発した。


「行くかー」


『くまー』


 王都まで行くことにテンションは上がらないが、ローマはやる気になっている。なんだかその様子がかわいくて、和んでしまった。








 王都までの道を歩いていると、フィーネたちと馬車で進んでいた道から少し離れた道に、いろいろな装備が落ちていた。


「あれはもしかして、ユリア・ガルナダと一緒に行動していた騎士たちの装備か?」


 俺はそこに近づいていった。なんかハイエナみたいだが、いい装備があればもらうことにする。遺体を運んであげたい気持ちもあるが、何をしていたのかなどいろいろと突っ込みが入りそうなので、金になりそうなものだけもらっていこう。


 やっぱり、ハイエナみたいなことしてるなー。


 俺が装備品たちに近づくと、突然ゾンビが襲ってきた。


『わっ!』


 襲ってきたゾンビの攻撃から間一髪でよけた。


「これは騎士たちがアンデット化してゾンビになったんだろうな。ゾンビになったのはかわいそうだが、ここは容赦なく倒させてもらおう」


 《ファイアーボール》


 アンデット系は火属性と聖属性に弱いとされている。このゾンビたちは強くはなさそうなので、これで十分だろう。


 俺は火属性の魔法を使ってゾンビたちを殺しつくした。いきなり襲ってきたことには驚いたが、それ以外は特筆すべきところがないような戦闘だった。


「殺されて一日でゾンビ化するとは、びっくりしたな。どれくらいの時間がたったらゾンビ化するかというのは、環境によってだいぶ違うが、てっきりまだゾンビ化はしていないと思っていたから驚いたな。本当に予想外だ」


 騎士たちのゾンビ化は予想外だったが、騎士たちの金目の装備が残っていることは予想通りだった。


「騎士のゾンビにも、こいつらの元主人にも迷惑をかけられたんだから、金目のものをもっていってもいいよな。もっとも、騎士たちがゾンビ化して襲ってこなくても、金目のものはもらっていったのだがな」


 公爵家の騎士なだけあって、なかなか高級そうな装備だ。しかし、残念ながら公爵家の紋章が刻まれている。公爵家の紋章が刻まれた装備を売ることはできない。それを売ってしまったら、「これをどこで手に入れたんだ!」ということになってしまう。


 悪事には使えそうだが、今のところそんな悪事を起こすことは考えていない。


「公爵家の紋章が入っている装備はどうしようかな。売れないから放っておいてもいいんだけど、そうなると誰かが公爵家の騎士の身ぐるみをはいだことになってしまうな。まあ、今俺がしている行為なんだけど」


 公爵家の騎士の身ぐるみはいでいるのは今考えると相当やばい行為だ。事情を知らないものからすれば、俺が殺したみたいになってしまう。


「よし!こいつらの持ち物を全部持って行って、俺が欲しくないものだけ公爵に売ろう。ユリア・ガルナダが無事王都に着いていれば、誤解されることもないだろう。もしもそんなことができない雰囲気だったら、これらは《マジックボックス》に死蔵させておけばいいな」


 これはハイエナ的行為ではなく、あくまでガルナダ公爵家への善意ということにしておくことにした。


「そうだ!もしも紋章入りの装備が悪用されたら大変だからな。あくまでこれは欲に目がくらんだのではなく、ガルナダ家のためだからな」


 言い訳くさいが、これならば別に悪いことをしているとは思わずに済むかな?


「俺が使えそうなのは、ポーションの類と騎士たちの持ち金くらいしかないな。レアなマジックアイテムがあるとよかったのだが、残念ながら俺が欲しいと思えるようなものはなかったな」


 いいマジックアイテムがなかったので、いらないものは公爵か商人にでも売ろう。公爵家の紋章がないものなら、公爵以外にも売れるだろう。


「それじゃあ行くかローマ」


 ローマは俺から離れたところにいた。


「ローマどうした?こっちに来ないのか?」


 今まで俺にくっついてきただけに、くっついてこなくなると寂しいものがある。


『くまくまー』


 ローマが大きく首を横に振っている。


「もしかして、この死臭が嫌なのか?」


『くまー』


 ローマは人間の何倍も鼻が利く。この場に漂う死臭が嫌だったのだろう。


 俺にしてもいいものではなくむしろ嫌だが、何とか我慢できる。嗅覚がすぐれているローマにしたら我慢できなかったのだろう。


「ローマ!やることは終わったから、とっとと王都に向かおうか」


『くまくまー』


 ローマが近寄ってきてくれたが、俺についたにおいが嫌だったらしく、しばらく俺に近づこうとはしなかったので、少し寂しかったが、ローマは《マジックボックス》に入れて移動した。






 それから何度か野営を繰り返して、なんとか入学試験前には王都に到着した。











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