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異世界転生後は自分らしく  作者: zawa
第一章 幼少期
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ミネルバ対ウォル

 今日は王都出発二日前。王都の学校に行かなくて済む方法を考えるのはあきらめたが、今回の戦いの勝利まであきらめていない。


 今日は俺と母さんが一騎打ちする日だ。


 俺はチート能力なんて持っていなかった。この十年ウォルコットとして過ごしてきたが、俺だけの特殊能力とかは見当たらない。才能はあると思う。そこいらの十歳には負けないし、魔法に関しては魔力量も含めて十歳にしてはかなりすごいと思う。


 俺はかなり努力したと思う。なんせ一歳になる前から魔法使いの修業を積んでいたのだ。俺としては修業というより魔法というおもちゃを手に入れた感覚だったし、前世ではありえないような力だったから興味をもって自分からいろいろしてみたといえる。


 それでも約十年修業したのだ。もしも俺がチート野郎なら誰も使えないスキルや魔法が使えたり、この時点で世界最強とか少なくとも王国最強とかになっているはずだが、その気配はない。


 俺はチート野郎ではなかったが、才能はかなりあると思われるので悲観せずにいよう。


 そんなわけ(どんなわけ?)でこれから俺と母さんの一騎打ちだ。


「ウォル、戦う準備はできたかしら?私はもう準備万端よ」


「俺も準備万端さ、といいたいところだけど、母さんの身に着けている装備はなんだよ!そんな装備今まで見たことないんだけど」


 母さんは俺が今まで見たことがないような指輪や杖、ローブなどを身に着けていた。


「これは私の戦闘衣装よ。冒険者を引退した後はマジックバッグにずっと保管しておいたのよ。私が冒険して見つけたものや、高いお金を払って買ったマジックアイテムたちよ。さっきも言ったでしょ、私は準備万端だって」


 つまりこれが母さんの本気というわけか。母さんの身に着けているマジックアイテムには大きな魔力を感じる。これがBランク冒険者にふさわしい装備というやつか。


 ちなみに、マジックアイテムと魔道具はほとんど同じ意味だ。なんとなく戦闘に使うものをマジックアイテム、生活で使うようなものを魔道具と呼ぶが、どちらで呼んでも基本通じる。


「準備万端にしすぎだよ!今まで一度も母さんに勝ったことは無かったのに、いきなりフル装備で来るなんて、俺に勝たせる気がみじんもないじゃないか」


「その通りよ。今日もウォルに敗北の味を与えてあげるわ」


 普通に考えたら今の母さんに勝ちようがないが、俺だってこれまで頑張ってきたんだ、今回は初勝利をいただくとしよう。


「今日こそは勝利してやる!」


「その意気よ!」


「それじゃあいくよ二人とも、レディー・・・ファイト!」


 父さんの合図で俺と母さんは一斉に動き出した。


 《フレイムバースト》


 《フレイムバースト》は母さんの大得意な将級魔法だ。まさに爆炎の魔女の名にふさわしい爆発系統の魔法だ。もしもこれを生身で食らったらふつう死ぬだろう。遠慮がなさすぎる。


 ちなみにここら一帯は結界でおおわれている。この結界によって周りに被害が出ないようにしている。


 父さんと姉ちゃんの時はお互い近接戦闘が得意な者同士であり、両方とも大規模な魔法が使えなかったので家の庭でも十分だったが、俺と母さんはどちらも魔法が得意であり、もしも家の庭で本気で戦いあったときにはどんな被害が出るのかわからない。


 ここは騎士団の練習場であり、大規模な訓練ができるようにされている。本当は私的に借りていい場所ではないのだが、そこは母さんと父さんのコネだ。


 《アクアリング》


 これは水属性の上級防御魔法だ。魔力でできた水を周囲にまとわせて敵の攻撃から身を守る。《フレイムバースト》に対しては相性のいい防御魔法だ。完全に威力を殺しきれているわけではないが、今までもこの魔法で母さんの《フレイムバースト》を耐えてきた。


「ぐはぁ」


 いつもなら少しダメージを負うぐらいであり、すぐに反撃に移っているのだが、今回はいつも以上にダメージを食らってしまった。動けなくなるようなダメージではないのだが、すぐに反撃に移れるような軽いダメージではない。


「私の《フレイムバースト》の威力に驚いているようね。一応言っておくけど、別にいつもよりもたくさんの魔力を込めていたとかではないのよ」


 俺は母さんの魔法の威力がいつもより上がっている原因に心当たりがあった。


「もしかしてマジックアイテム!」


「その通りよ。私の今身に着けているマジックアイテムの中には、魔法の威力や効果範囲を上げたりするものが含まれているの。私の魔法がいつもと同じだとは思わないようにね」


 《ヒール》


 俺は回復魔法を使って回復した。自分に回復魔法を使うので魔力は回復しないが、傷はすぐに治っていく。回復魔法は難易度が高いので、俺の今の実力では一番簡単で効果の低い《ヒール》しか使えないので回復量はそんなに多くはないが、今回の傷なら十分だ。


「回復魔法も使えるようになっているなんてね。でも、これならどうかしら」


 《炎獄(えんごく)


 《炎獄》によって俺の周りが炎によって囲まれていく。


 《フライ》


 俺は炎の牢獄によって完全に囲まれる前に、《フライ》によって空を飛んで逃れた。


 俺は《マジックボックス》から剣を出して近接戦闘に持ち込もうとした。


「やるわね」


 母さんの装備は完全に遠距離魔法使いの格好なので、俺があまり得意ではない近接戦闘でも分があるかもしれない。


 俺は母さんに対して剣をふるったが、杖によって防がれた。杖に強化魔法がかかっているのか、それとも杖自体が硬質な材料でできているのか、それともその両方か、俺の身体強化魔法と剣に強化魔法をかけた一撃が簡単に防がれた。


 母さんの杖術は見たことがない。体術ではかなわないがこれならばいけるかもしれない。


 俺はここぞとばかりに攻め立てているが、母さんには冷静にいなされている。


「魔法はよくなっていて来ているけど、近接戦闘はまだまだね」


 母さんが反撃に移ってきた。俺のあまり得意ではない剣では母さんの攻撃に対応しきれないので、剣を捨てて体術で応戦することにした。一撃の威力では俺の身体能力的に剣のほうが上だが、手数やテクニックでは体術のほうが使える。


「体術ももっと鍛えなくちゃね」


 俺は母さんに何発も食らってしまっていた。このままでは分が悪いので、一度距離をとることにする。


「敵は簡単には逃がしてくれないわよ」


 母さんは距離を取ろうとした俺が十分な距離をとることを防ぐために距離を詰めてきた。


 《テレポーテーション》


 俺はなかなか母さんと十分な距離をとることができないので、俺はしびれを切らして《テレポーテーション》で距離をとった。


「距離をとるだけにしてはぜいたくな魔法ね。魔力量は大丈夫なのかしら?」


 母さんは俺に対して挑発的な笑みを送った。


 今回の戦いではポーションの類を使えない。時間が立てばある程度は魔力も体力も回復するのだが、今回は一対一の戦いなのでそんな隙は無い。勝利するためには魔力と体力の節約は必須なのである。もっとも、魔力を温存した結果負けるなんて間抜けな真似は論外だが。


「距離は短いから、魔力量もそんなにかかってないよ」


 当然のごとく強がりだ。まだ魔力には余裕があるが、先ほどの《テレポーテーション》では結構魔力を使った。《テレポーテーション》は移動する距離で使用する魔力量が変わるが、そもそも《テレポーテーション》を使うことで魔力をかなり消費するのだ。そのことは当然母さんもわかっている。


「それならよかったわ(かわいい強がりね。ウォルもまだまだ子供ね)」


 《ウォーターボール》


 母さんは人間なので水が弱点というわけではないが、水属性の魔法なら母さんの得意とする火や爆発系統の魔法では防ぎずらいだろう。


 《アースウォール》


 俺の放った《ウォーターボール》は母さんの《アースウォール》によって防がれた。


 母さんが攻撃を防ぐのは当然予想していたし、火や爆発系統以外の魔法を使えるのも当然知っている。何の策もなくこの魔法を使ったわけではない。


「水属性の魔法だからって防げないわけじゃないわよ」


 《アースウォール》が解けて俺から母さんの姿が見えた。


 《ライトニング》


 俺は母さんがこちらの姿が見えない間に、魔力を自分ができる最大まで込めて魔法を放った。


 《フレイムバースト》


 俺と母さんの魔法がぶつかり合った。俺の魔法が母さんの魔法を貫くと思っていたが、残念ながら相殺した。いや、逆に母さんの魔法のほうが勢いあり、俺に少しダメージが入った。


「私が自分の魔法でウォルの姿が見えない間に魔力を練るのはいいアイディアだったわ。でも、ウォルが魔力をたくさん込めていることは目で見ていなくてもわかっていたわ。次に同じことをするときは、うまく魔力を隠しながら相手に悟られないようにすることね」


 俺が魔力を込めているのがわかっていたのか。


「もしかして俺が魔力を込めていることがわかっていたから、母さんも魔力を込めて魔法の威力を上げていたの?」


「その通りよ。ウォルは私が魔力を込めていることがわかったかしら」


「全然わからなかった。ていうかそんな発想もなかったよ」


「自分が考えていることは相手も同じことを考えているかもしれないと思うことは大切よ。特に格上相手だと経験や実力が上回られているから、自分ができる以上のことはできると思って戦うことね」


 まさに今回のケースということか。もしかしたらもともと俺よりも強いのにマジックアイテムを装備したのは、このことをわかりやすく教えることなのかもしれない・・・・まあ、単に俺をコテンパンにしたかっただけかもしれないが。


「なるほど。勉強になったよ」


「そう言いながら魔力を練っているのはわかっているんだから」


 うまく隠す練習のつもりでやってみたが、失敗したようだ。


「魔力を込めて魔法を放つのを隠すことはまだまだ上手くいっていないけど、準備は整ったよ」


 《テレポーテーション》


 俺は母さんの後ろに瞬間移動した。


「甘い!」


 母さんはそれを読んでいたようで反撃に出る。しかし、俺に向かって放った母さんの拳は空を切った。


「なんで!」


 俺は母さんが拳を放った反対方向にいた。


 これはあらかじめ魔法を準備しておき、使うときになったら一瞬で使えるようにしておくことで、普段は連続で使えないような魔法を連続で発動したり、あらかじめ用意している分通常よりも早く魔法を発動することに使う技術である。


 この技術にはもちろんデメリットはある。あらかじめ魔法を準備しておくことで、その魔法の発動にかかる魔力はもちろん、ずっと維持したままでいることに対しても魔力が必要になる。そして、あらかじめ用意しておいた魔法を維持するにはかなりの魔力が必要になる。また、維持するのに必要な魔力は魔法によって違う。

 その魔法を維持するのにかかる魔力量×時間であり、今回のような短時間しか維持しない場合でも、結構な量の魔力を消費した。


 燃費がものすごく悪いのであまり使われない戦法だが、だからこそ今使った。もう魔力はほとんど残ってはいないが、使った価値はあった。


「これで勝てる」


 俺は勝利をほぼ確信した。タイミング的に魔法や体術、杖術も間に合わないはずだ。


『ガン!』


 俺の身体強化を使って威力を上げた拳が石の壁に激突した。十中八九母さんの使った魔法だろうが、そんな暇はなかったはずだ。まさか俺の作戦が完全に読まれていて、俺と同じ技術を使って用意しておいたとでもいうのか。


「惜しかったわね。下手したら負けていたわ」


「母さんは俺の作戦を予測していたの?それとも何か仕掛けてくると思って念のため用意しておいたの?」


「どっちも外れよ。正解はこの指輪のおかげよ」


 母さんは俺に灰色の宝石か何かが使われている指輪を見せた。


「これは《ストーンウォール》が発動できる指輪でね、魔力を満タンに込めておけば三回まで《ストーンウォール》が使えるのよ」


 なんか微妙なアイテムだな。


「それってすごいの?」


「確かに使える魔法と回数は地味であまりすごくないんだけど、この指輪のいいところはさっきみたいに早く発動できることよ。詳しくは専門家じゃないから知らないんだけど、さっきウォルがしたみたいなあらかじめ魔法が準備されている状態になっていて、いつでも発動できるようになっているの」


「つまり、普段より早く防御系の魔法が使えるというのがその指輪の特徴なんだね。それじゃあ、魔法の維持はどうするの?」


 これが問題である。魔法の維持に魔力が使われると、魔法を使おうとしたときにストックがないということになりかねない。


「それが大丈夫なのよ。なんかごちゃごちゃした理由があるんだけど、とにかく大丈夫なのよ」


 母さんもよくわかっていないらしいが、母さんの言う通りの指輪ならば便利だ。


「それで、これからどうするの?まだ続ける?」


「完敗だよ。魔力ももうほとんど空だしね」


「勝者、ミネルバ!」


「いい勝負だったわね。特に最後のは惜しかったわ」


「残念だよ。でも、これからまた強くなってリベンジするよ」


「強くなるのもいいけど、道具も大事なのよ。今回の戦いは、戦闘におけるマジックアイテムの有用性を知ってもらう意図もあったんだから」


「十分わかってるよ!今回の結果から見たらそれは大成功だよ」


 今回はマジックアイテムにやられたという思いは強い。母さんのようにマジックアイテムを使いこなせるようになればもっと強くなれるだろう。マジックアイテムにかまけて自己鍛錬を怠るのは論外だが、いいマジックアイテムによる強化も、高いレベルになればなるほど必要になってくるのだろう。


「それじゃあ、明後日に備えておきなさい。一日早いけど、寝坊はしないように」


「わかってるよー」







 その日の夕飯はごちそうだった。



















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