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異世界転生後は自分らしく  作者: zawa
第一章 幼少期
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出発

 今日は姉ちゃんたちが王都に向けて出発する日だ。町にとってはそこまで大事というわけではないので見送りの人はそんなにいないが、姉ちゃんの知り合いは何人か見送りに来ている。


「シオンねえもソラさんもいってらっしゃい」


「シオンさんソラさん頑張ってください。後、お姉ちゃんのこともよろしくお願いします」


「二人ともいってらっしゃい」


 最初がフィーネで次がファナ、最後は俺だ。フィーネは姉ちゃんのことをシオンねえと呼ぶ。いつからそう呼んでいたのかは覚えていないが、気づいたらそう呼んでいた。本当の姉妹ではなかったとしても、近所の年上の女の子を姉と呼ぶのは特におかしいことではないので、特に気になっていなかったのだろう。


 ファナの姉のニーナは、去年王都の学校に入学している。二人の親は商人なのだが、その商会はなかなかに規模が大きいらしい。ファナとニーナの曾祖父が開いた商会で、二人の父親が三代目の会頭らしい。

 ロークスで開かれた商会であり、本店もロークスにある。商会員も何十人かいて、ロークス以外にも支店があるらしく、王都にも店が出ている。この国の商人にとって、王都で店を出すというのは一種のステータスである。王都に店を出せるというのはそれだけ大きい商会であるということになる。


 ファナの両親はロークスに住んでいる。ロークスに本店があるというのもあるが、それだけでなく彼らの商会がロークス家の御用商会であるからだ。

 そのため、フィーネとファナは何度か会う機会があり、お互い顔見知りで一緒に遊ぶこともあるらしい。俺が一緒の時もあるが、二人は結構仲がいい。女同士というのもあるのかもしれない。


「三人ともありがとう。行ってくるよ」


「頑張ってくるわ。本当はウォル君と一緒に行きたいけど、どうせだめよね。ウォル君!お姉ちゃん王都の学校に行ってくるわ。だから三年後ウォル君が王都の学校に入学したら、お姉ちゃんがしっかりと案内してあげるから楽しみにしててね」


 三年後に王都の学校になんて行きたくない。なんで異世界転生してまで学校で六年間がっつり勉強しないとならないのだ。クラスメイトにはどうせいけ好かない貴族の子弟なんかがいるんだろう。


「あ~、いってらっしゃい姉ちゃん」


 せめてもの抵抗で返事はしないでおいた。まあ、なんの意味もない抵抗ではあるが。


「頑張るんだぞー」


「しっかり勉強してくるんだぞー」


「いつでも帰ってきていいんだぞ」


 姉ちゃんたちの知り合いから口々と応援する声が聞こえてくる。

 姉ちゃんたちはそれらに向かって手を振りながら馬車に乗った。


「「行ってきます!」」


 俺たちは姉ちゃんたちの乗っている馬車が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けていた。







 姉ちゃんたちがこの町を出て、王都の学校に向かってから数日が過ぎた。


「ウォル!今日から町の外に出るわよ」


 今日は母さんと一緒に町の外に出る約束をしている。

 もしかしたら町の外に出るだけなのに、ずいぶん大げさだなと思うかもしれないが、この世界ではひとたび町を出ると、いつ死んでもおかしくないといっても過言ではない。これは、病気になったときに医者が近くにいないとかいうのではない。ここでのいつ死んでもおかしくないというのは、魔物や盗賊などに殺されることを言う。

 

 魔物はテイムされているもの以外は基本的に街の中にはいないので、野良の魔物と会うのは大抵町の外になる。町の外に出るには、魔物や盗賊に負けない力、もしくは逃げ切れる足を持つか、それらに勝てる人を雇うかしかない。


 そのため、以前までは町の外に出ることは禁じられていた。


「今日はとりあえず魔物を何体か倒してみましょう。一応私がついてるし最初には手本を見せるけど、くれぐれも油断しないようにね」


 ん!?聞き間違いか?いきなり魔物を殺せといわれた気がしたんだが。


「何間の抜けた顔をしているの。魔物を殺せといっているのよ」


「えっ!いきなり魔物を殺すの?」


「当然じゃない。もしも冒険者になるなら、なおさらよ」


 聞き間違いではなかったようだ。


 俺はこの世界に来て何年かたった後に、人を殺す覚悟をした。もちろん、実際に殺したわけでもその現場を見たわけでもない。ただ、この世界は基本的に自己防衛をしなくてはならない。騎士団や衛兵なども守ってはくれるが、前世ほど守ってはくれないし、権力の問題もありそれらを完全に信頼するわけにはいかない。場合によっては自分の手を汚す必要がある。この世界にも当然正当防衛があるが、前世ではそれをすることが一度もなかった(本当に命の危険を感じたときの正当防衛)が、この世界では起こる可能性が高い。

 前世の世界ほど人の命が重くはない。魔物だけでなく人にも襲われる可能性はあるので、その時には殺さなければいけないこともある。


 覚悟はしていたが、まさか外に出ていきなりとは思わなかった。母さんには人を殺せとは言われなかったし、言えなかったのだろう。さすがにそれほど人の命は軽くない。もっとも、貴族などには人を殺す経験とか言って罪人を殺させたり、人を殺すのが趣味で罪人などを殺している奴はいるかもしれないが。


「今回は魔物をちゃんと殺せるか見るわ。シオンの時にも言ったのだけど、別に殺せなかったからといって攻めたりしないわ。徐々に慣れていけばいいのよ」


 姉ちゃんも初めて町の外に出たときに、魔物を殺せといわれたらしい。


「かわいそうと思うかもしれないけど、これはこの世界で生きていくためには大事なことなの」


 母さんが珍しく諭すように言ってきた。

 俺だってこれが重要なことなのはわかっている。俺はただいきなりすぎて驚いていただけなのだ。


「大丈夫だよ母さん。いきなりで驚いただけだから。それに、町の外に出るのは初めてだから少し楽しみなんだ」


「それなら安心ね。それじゃあ今から一緒に門まで行きましょうか」


「うん!」


 




 俺は別に生き物を殺すことに喜びを感じるわけではないので、魔物を殺すことに対しては嬉しいとは微塵も思っていないが、町の外に出ることは楽しみなので思わずスキップしてしまっていた。


「あらウォル、そんなに町の外が楽しみなの?」


「そうだよ。だって、今まで身近にはあったのに一度も見たことがない世界だからね」


「そんなにたいそうなものじゃないのよ。ただ草原や川があるだけで、特に何もないのよ」


「それでもだよ。それに、たしかロークスの町の近くには森がなかったけ?」


「あるわよ。よく知ってるわね」


「そこには行くの?」


「そこには行かないわ。というかウォル、勝手に森に入っちゃだめよ」


「たしかEランクがどうとかだっけ?」


ロークスの町近郊にある森、通称ロークスの森にはEランク以上の冒険者しか入ってはいけないという決まりがあったはずだ。


「それは違うわ。Eランク以上とかはあくまで冒険者の決まりであって、私たちのような冒険者ではない人たちには関係ないわ。私だって元Bランク冒険者とはいえ、今は引退しているからランクも何もないけれど、森にはたまに入っているわ」


「それじゃあ何でダメなの?」


「危険だからよ。森は何が起きるかわからないからね。もう少し経験を積んでからじゃないと安心できないわ」


「わかった」


 森には入ってみたかったのだがしょうがない。


「そんなに残念そうな顔をしないでもいいわ。焦らなくても来年には許可を出す予定だから」


 それならば待てるかもしれない。冒険者になれるのは十歳からなので、今の俺にはどうやってもなれないから、冒険者のルールなどは今のところ関係ないのだ。


 





 そうこうしているうちに門までやってきた。普段は門の近くには用がないので、この間姉ちゃんを見送るときに来たくらいだ。それならば意外と最近なのだが、それ以外には来たことがなかったので、門まで来るのはまだ二回目である。


「へー、ここが東門か。北門とあまり変わらないね」


 この町には門が四つある。それぞれ東西南北に設置されていて、姉ちゃんたちが出て行ったのは北門からだ。


「当たり前でしょ。特に違うデザインにする理由もないんだから、製作者が遊び心を出さない限り同じデザインになるにきまってるわ」


 俺たちが門について話していると、俺たちに声をかけてくる人がいた。


「おーいミネルバ、久しぶりだな」


「そうかしら?シオンが以前外に出るときにもこの門を使ったから、そんなに久しぶりじゃないでしょ」」


 母さんに話しかけてきたのは、母さん達よりも一回りくらい年上だと思われる男性だった。


「確かにそうだったが、最初以外はあの子一人だったりあの子の友達と来たりしていて、お前は最初以降一回も来ていなかったのだから、一年ぶりぐらいだろう」


「そういえばそうだったわね」


「まあそのことはいい。それよりも、この坊主もお前の息子か?お前たちに似ているような似ていないような微妙な感じだな。」


 失礼な!確かにうちの両親や姉は俺よりも美形ではあるが、初対面でそこを突いてくるなんて。容姿には微妙にコンプレックスを抱えているのだ。俺だってどちらかといえばいいほうだとは思うのだが、三人にはかなわない。


「似てるか似てないかはともかく、この子は間違いなく私たちと血がつながっている子よ。私がおなかを痛めてまで生んだのだから間違いないわ」


 あれ?今あまり似てないことを否定しなかったよね。


「そりゃそうだ、悪かったな。それでお前たちはこれから外に出るのか?」


「そうよ。この子にもそろそろ外に出る練習をさせないとね」


 やはり否定はされない。このままうやむやになってしまいそうだ。


「だがちょっと早くないか?その子はシオンの弟だよな。今何歳だ?」


「今は七歳、もう少ししたら八歳になるわ」


「要するにシオンよりも三歳下の、今年八歳ってことか」


「そうなるわね」


 何か問題があるのだろうか?


「やっぱり早くねえか?シオンが初めて外に出たのは今から一年前だ。つまり、今の坊主よりも二歳上の時からだ。お前たちの教育方針に対して口を出すのはあまり褒められたことじゃないが、その坊主は大丈夫なのか?」


「あなた、シオンの時も同じようなことを言ってたじゃない。「まだ九歳の女の子が外に出るなんて危ないんじゃないか」なんて」


 この門番は心配性?もしくはお人好し?なのだろうか。


「そうだったが、シオンはあの年にしては結構強かっただろ。その坊主はどうなんだ?見た感じ普通の七歳の男の子にしか見えないぞ」


 見た感じ?俺の見た目が強くはなさそうってことか?


「ああ、そういうことね。ウォル、偽装魔法を解くのよ」


「わかったよ母さん」


 俺は外に出るときは常に偽装魔法か隠ぺい魔法を使うようにしている。これは魔法の訓練のためでもあり、戦闘の時の基本でもある。


 戦闘時に相手にこちらの強さを知られないためには、偽装魔法か隠ぺい魔法を使わなくてはならない。この二つの魔法の違いは、偽装魔法は相手に偽の情報を与えることができ、隠ぺい魔法は相手に情報を一切与えないことができる。どちらも《鑑定》によって見破られる可能性があるが、それは両者の実力次第である。


 戦闘においては相手に虚偽の情報を与えたり、逆に相手に何の情報も与えないといったことが大事になってくる。近接戦闘に優れたものなら、体の使い方である程度相手の近接戦闘における力が魔法を使わないでもわかるかもしれないが、そんなことができるのは極一部である。それに、仮にそんな者がいたとしても、魔力とかまではさすがにわからないので、この二つの魔法の習得は大切なのである。


 ちなみに偽装魔法のほうが隠ぺい魔法よりも難易度が高いうえに見破られやすいのである。上級者になると隠ぺい魔法の上に偽装魔法をかけ、仮に偽装魔法が見破られても相手に情報がいかないようにしている。もっとも、そんなことをしても見破られるときは見破られるが。


 俺はまだそこまではできないので、今は偽装魔法だけをかけている状態だ。


「偽装魔法を解けばいいのんだね」


 俺はそう言って、自分にかけていた偽装魔法を解いた。


「なっ!ミネルバ、この子は本当に七歳なのか?Dランク、下手したらCランクまでいくんじゃないか?」


 どうやらこのおじさんは俺に対して《鑑定》を使っていたようだ。他人に無断で《鑑定》を使うのは無礼なのだが、門番なら許されるのだろうか?もしかしたら、町に変な輩を入れないようにするためなのかもしれない。


「これでいいかしら?この子も力だけは一人前なのよ」


「わかった。ただし坊主、これだけは覚えておいてくれ。力だけではダメなんだ。経験や技術がないと上手く使いこなせないということは心にとどめておいてくれ」


 それは当然だ。前世のスポーツとかもそんな感じだった。俺よりも身体能力が低い相手でも、そいつの得意スポーツではまったく勝てなかったことと同じだ。


「ウォルなら大丈夫よ。そういうことは口酸っぱく言っているわ。なにより、普段からしごきまくっているからね」


「そうか・・・・坊主も大変なんだな」


「そうなんです」

 

 このおじさんとは分かり合えるかもしれない。


「これで話は終わりね。ウォル、早速行きましょう」


「おじさん、行ってきます!」


「おう!二人とも気をつけてな」


「大丈夫よ!この子はともかく、今日は私がついているんだから」


「そうだったな。じゃあ坊主、気を付けるんだぞ」


「はい!」


 こうして俺は初めて町の外に出た。









外への出発、王都への出発です。

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