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シークレット・ブラッド  作者: うさぎさん⭐︎
【第1部】シークレット・ラビリンス(はじまりの物語)/ 第1章 デイタイム・ラビリンス

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5 貧血少年・清涼少年③




 なるとのように回る目。回る回る地球は回る。ずっと見てると、こっちのほうが気持ち悪くなるくらい、なると目を回転させていた牙は、「ハッ?!」といきなり目を覚ました。

 目の前に、無敵に涼しげな顔。

 どっかの童話の冷酷な女王すらミトコンドリアに思えるくらい、すっげぇぇええぇ綺麗なそのお顔!

「双葉さんっっ‼︎」

 直立不動した牙を、綺麗なお顔のその人は、無下にも蹴倒した。

「俺だボケ」

 クールビューティーな声。……若木だった。

 見回すと、まだあの異常なラーメン屋の中だった。

 若木は床に倒れた牙を残して、再びカウンターについた。

 肘をついて頬杖し、牙を見下ろす。

「早く座れよ。延びるだろ?

 それともなにかてめー、俺のおごりじゃ食えねーってか?」

 なぜか若木もおやじも、アラスカ並に、目が冷たい。

 ふと、促されて見ると、薄汚れた張り紙に達者な血文字で、『食いもん残すやつぁ、死あるのみ‼︎』と書かれてある。

「うわあぁぁぁああっ‼︎ ごめんなさいごめんなさい‼︎ ぼ僕、ニンニクとか餃子ダメなんですぅ〜‼︎ 食ったら、それこそ死んじゃいます〜〜〜〜〜〜〜っ‼︎!」

 木目の床にキスするように土下座して、牙はタマネギ切ったみたいに涙した。

「あはははは」

「ははははは」

「━━えっ?」

 おやじの高笑いと、若木のシニカルチックな笑い声。(←でも目が楽しげ)

「見てみ」

 若木が例の張り紙を指差す。

 牙が目細めてよぉぉーーっく見ると、『死あるのみ』の下に、米粒よりも小さな、ポップコーンも弾けちゃうポップな字で、『なんてね。by店長』と書かれてあった……。

「なんだよおまえ、ニンニクアレルギーかよ? 

 好き嫌い多いから。ちっこいんだぜ?

 源蔵げんぞうさん、なんかこいつ、十字架もだめとかいうんだぜー?

 なんか吸血鬼みてー‼︎」

「はははは。赤羽くんだっけ?

 見せたかったぜ、君が倒れたときの、あの、若木くんの顔‼︎

 地球が滅亡しちゃったみたいな顔してさ! こいつ、今はもう平気な顔してるけど、実は君のことすっげー心配して、往復ビンタと百烈キックかましてたんだよ!」

「あぁー‼︎ 源蔵さん‼︎ 言うなよ‼︎」

「照れるな。おまえがここにダチ連れてくんのも初めてだし、おれはうれしーや」

 なんか盛り上がってるおやじと若木。

 しかし、牙は痛む体と、いきなり全力でトライアスロン始めた心臓を押さえ、10割り増し青白い、今にも死にそうな顔をしていた。

「ん? どした、赤羽。俺なんか気に障ること言った?」

「べ、べつに……」

「ほら。ラーメンも餃子も、今、俺が全部食っちまったぜ。安心しな」

 今って、一体いつ⁈ ってくらいの速さで空になった丼と皿を、若木は牙に見せた。

 まだアレな匂いがするが、おやじが手速く食器を洗ってくれたり、若木が緑のリュックから取り出した柑橘類の香り漂うスプレーを使ってくれたりして、ちょっと増しになった。

「ほら、サラダは食えよな」

「は、はい……」

 床に座ったまま、牙は若木がよこしたサラダを犬みたいに平らげた(いや、箸は使ったけど)。

「うおっ⁈」

 ━━1秒後、それを思いっきり吐き出した。

「な、なんか入ってる⁈」

 歯に引っかかって、牙の口から生えてるキャベツ以外の唾液混じりの何かを、若木は何事にも動じない顔で奪い去って、

「あ、ラッキー。見てよ、源さん!」

「大当たりィ〜!  はいこれ、ホップステップあとちょっと餃子1つプレゼント!」

 唾液つき当たりクジと交換に、瞬きできない速さで作られた餃子が、若木の前に出現した。

「ヤリィ!」

 100年間寝ても覚めても好きで好きでたまらなかった異性にプロポーズされたような、幸福絶頂な顔で、若木はそれを噛み締めた。

それからまた例のクールな声で、

「……あ、やべ……。赤羽忘れてた……。また気絶してるよコイツ」

 そう言ったのであった。


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