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シークレット・ブラッド  作者: うさぎさん⭐︎
【アンコール】 デイダーク・エコー

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42/42

④レクイエム〜ポップコーン蒸発親父の墓参り

 


 ポップコーンの墓の前に、整列する一同。

 カルワリオではなく、地下に狼男がいるほうの墓である。

「とーちゃん。安心して、僕、もっと強くなるから!」

「あなた、安らかに眠ってね……」

「ポップ様、立花が聖魔様をお守りいたしますわ……なんつて」

「《《お父さん、俺、美紅さんを守り抜きます》》!」

「……え」

 美紅と美桜が、双葉を見る。

「どゆこと?」

「あなたは、牙のガールフレンドなんじゃ」


 無地、墓参り終了。

 電車で帰ってきた一行。

 双葉のおすすめのラーメン屋へ。

「いらっしゃい! お、牙くん」

「源さんお久しぶりです!」

「牙くん、若木が最近ちっとも来なくて。何か知らない?」

「さ、さぁ……って、銀次⁈」

 なぜか、店主の後ろに、皿を片したり、洗ったりしている銀次がいる。

 白い帽子に、白いかっぽうぎ姿。源さんとお揃いだ。

「ぎ、ぎんちゃん⁉︎」

 美紅が声を出す。 

 彼は、一生懸命すぎて、こちらに気づかない。

「あー。最近雇ったんだ。なんでも、守りたい人がいるから、働きたいと」

「えぇ⁈ ……ぎんちゃん」

 美紅が瞬間、目をうるめる。

 牙の頬が引きつる。

「銀次、てめー、表に出ろ、決闘だ‼︎」

「え? 赤羽、どうしたんだ?」

 双葉は、何も知らない。


「赤コーナー! 聖なる美青年ハンター、ぎーんじ!

 青コーナー! 我らが聖魔様! 牙様!

 勝つのはどっち⁈

 実況は! このプリティー立花ちゃんがお送りいたします♡」

「り、立花ちゃん、今は静かに見守ってて……」

「きゃわん、ごめんなさい、聖魔様」

「立花ちゃんは、店の中で待っててくれる?」

「は、はい」

 双葉が不思議そう。

「赤羽そなんでそんなデレデレなんだ? ……てか、あれ、誰??」

「じゃあね、立花ちゃん!

 ……さて、と」

 牙が腕を鳴らす。

「死にさらせぇぇぇ!!」

「おっと」

 優雅に避ける、銀次。

「行くぜ! 魔剣包丁! 守れ、鉄壁まな板‼︎」

「まだ持ってたのー⁈

 だが、私の敵ではない!」

 ターンで避ける銀次。

「未来の弟に手荒な真似はしたくないが……」

「誰が、弟だー!!!!!

 仕方ない。修行の成果見せてやる!

 必殺‼︎  チェーンジ、ヴァンプー!!! キッチン装備ヴァ〜ジョン!」

 牙の目が赤黒く輝く。白い牙が口から覗く。

「お? これは、オレ好みの……」


「シルバー・ステイク・ブラッディ・ローズ!」


 牙がぶっ飛んだ。

「悪いな、いま仕事中なんだ」

 銀次は店の中に即消えた。

「あ、赤羽」

「ごめん、若木」

 黒目に戻った牙に駆け寄る、双葉。

「僕、僕……」


「ラーメン伸びるよ〜!」


 その時、店主・源さんの声がした。

「やっべ。ラーメンラーメン♪」

 双葉も、店に消えた。

「わ。若木……」

 手を伸ばして、牙はいつものごとく倒れた。


「牙」

 声がした。

 見上げると、美紅が立っている。 

 メガネにロングスカート。長い髪を、今日は三つ編みにしている。

「弱いくせに、吠えるんだから」

「よ、弱くなんかない!」

 美紅が牙に手を伸ばす。

「若木くんには、感謝してるよ。でも、私」

「……銀次が好きなんだろ」

 牙は、手を取らない。

「わからない」

 かぶりを振る美紅。

「え?」

 無理やり手を取る、姉。

「じゃあ、なんで、指輪なんか」

 抵抗する、弟。

「ただ、ちょっとだけ、嬉しかったの」

「……」

 唇噛んで、瞳逸らす牙。

「若木の何が気に入らない?」

「う、うーん……」


「ラーメン‼︎」

 殺人的な、源さんの声が聞こえた。


 結局、みんなで奇妙なラーメンを食べましたとさ。


 ***


「ありがとな、赤羽」

 帰り道。

 双葉を送っていく牙たち。前のほうを、牙と双葉。

 少し離れた後ろを、美紅たちがついてきている。

 会話はギリ後ろに聞こえない感じだ。

「なんとなく、わかったよ。ラーメン食いながら、二人の視線がパチパチショート……うう”……」

「泣くなよ、若木」

「赤羽が、泣いてんじゃん。俺はこんなとこじゃ泣けねーや。グールになっちまう」

「はは……。泣いてもいいよ。グールになったっていいんだよ、悲しいときは」

恥ずかしそうに、牙は言った。

「僕が隣にいるから」

「……ありがとう。

 なぁ、赤羽。美紅さんと、仲良くしろよ。俺なんか、気にせず」

「……うん」

 双葉は、笑った。

「いいなぁ、牙は」

「え?」

「立花ちゃんと、いいかんじなんだろ?」

「あ、う、うん……て、いま、『牙』って」

「だめか?」

「う、ううん。すごく、嬉しいよ!」

「ははは。照れるぜ」

「僕も」  

  2人の間を温かいものが流れる。

 そのときだった。

「またれぃ!」

 白馬が一頭、前方から勢いよく現れた。

「銀さまを惑わし、堕とす、魔女どもめ! この、ギンジネクストが、お相手いたす!」


『ま、魔女⁈』

『キンジネクスト⁈』


 ツッコミどころは、満載だ。

「あいつ、そんな名前……」

「ま、魔???」


 牙と双葉が目配せする。

「かーちゃんたちは、逃げて!」

「おい、馬野郎! 俺たちが相手だ! ……て?」

 双葉の横を、

 ギンジネクストが駆け抜ける!

「きゃあぁぁ⁈」

 女子たちの悲鳴。

「おい、待てよ!」

「みんな‼︎」

《おーっと。お馬さんの分際で、俺の身内に出を出そうとは、138億年早いよーん》

 ポップが突然現れ、美紅たちの前に立ち塞がる。

「お父さん? なんで」

「とーちゃん、成仏したんじゃ」

《だーかーらー。この姿は、銀次封印の影響……》

「隙あり! 銀河一閃!」

 ギンジネクストが、立花に迫る!

「きゃああ〜〜〜」

「立花ちゃん!」

 慌てて牙が走るが、

《立花、掴まれ》

 ポップが立花の手を取る。

《まったく、おまえは》

「きゃあぁ! ポップ様! 立花、怖かったですわ〜〜♡」

 立花がポップに抱きつく。

 どこかで音がした、

 凍りついた牙と、

 炎燃えたぎる美桜、の音……。

「立花ちゃん⁈ ちょ、とーちゃん‼︎」

「どういうことですか。あなた!」

 いきなり修羅場が始まった。


「美紅さん!」

「……双葉ちゃん?」

 双葉が美紅の前に、盾のように立つ。

(あれ?)

 不思議な既視感を覚える。

 自分を守ろうとする、その姿━━。

「銀さまをたぶらかし堕とす魔女・美紅。

 銀河一閃」

「ざけんなぁ!」

 双葉が左手の手袋に手をやり、外そうとする。

「痛すぎるぅぅグググググググ!!!」

 と、手袋から火花が散り、地に落ちた。

 愛らしい双葉が、グールに変わる。 

 すぐさま、馬の突進から美紅を守る。

「グググ!」

 足を踏ん張り、両手で受めた馬を、蹴り上げる。

「グググ、グググググ!」

 そのまま、ジャンプし、上から地に力強く落とす。

「ぐはあ!」

 馬が横たわる。

 目を回していた。


「そんな……」

「ググググ!」

「そんなぁ、双葉ちゃんが、双葉ちゃんが……」


「美紅さん、愛してます」


 思い出して、顔がほてってくる。

「グググ」

 グールが美紅に手を伸ばす。

 美紅の体が震える。

 その頬にかかった髪を直すと、何も言わず、見つめてくる。

「ふ、ふた……若木くん」

 不意に抱きしめられた。

(ずっと、守ってくれてた。そっか……双葉ちゃんが、若木くん)

 美紅は、自分の唇を押さえた。

「若木くん……」

 美紅は、そっと、グールに口づけた。

「ありがとう、スウィーティ……」


「グググ━━美紅さん……」

 声が、意味をなす。

「え? いま、しゃべって?」

「美紅さん! 俺、感激です!」

 美紅は急に踵を返し、走り出した。

「ちょ、まってくだい、美紅さん!」

(あたしいま、何した?)

 恥ずかしさに逃走する美紅を、グール━━若木は逃がさない。

「美紅さん!」

 後ろから、優しく抱きしめる。

「どうして、キスなんてしたんですか?」

「きゃー! わ、わかんない!」

「美紅さん、俺、そんなことされたら」

 美紅に向き直り、

「歯止め、効かなくなりますよ?」

 若木はキスしようとした。


《待てだよーん!》

 後ろから殴られる。

《うちの美紅に何してる?》

「お、お父さん、痛いぃぃぃ!!」

 蹴られ、

《虫が多すぎるよーん》

 チョップ!

 痛くて涙し、双葉になって倒れた。

《手加減してやったぞ。反省しろ!》


 双葉になった若木は、なぜか左手が治っていた。

 グールの時も、なぜかしゃべれるように……。


「どういうことなの? お父さん、それにお母さんたちは?」

《美桜たちは、牙に送らせてた》

 よく見ると、ポップの体は、たんこぶやアザ、キズだらけだ。

 美桜にやられたのだ。

《認めたくない!》

「はぁ?」

《そいつが、戻るのは、愛の奇跡だけなんだよーん。

 美紅、おまえは一体、誰が好きなんだ?》


 ***


 黎明。

 夜と朝が混ざり合う、青白い静寂の中。

 牙は、ふと、目が覚めた。

 ポケベルがメッセージを受信していた。


 差出人は、若木。


『394649』

(いつもありがとう! これからもよろしく)


 牙は、弾かれたようにパジャマにジェンバーを羽織り、いつもの黒い運動靴で外に出る。

 早朝の空気は、冷え込んでいる。

 一番近い公衆電話へ急ぐ。

 冷たい受話器を耳に当てたまま、若木のベルを呼び出した。

 若木からのメッセージに、返事を打つ。 

 操作を終え、黒いポケベルに目をやった。

 サイドボタンを押すと、バックライトが、緑色に光った。


『524 39』

(こちらこそ、いつもありがとう)


 ポケベルを空に高く掲げて。

 牙は、笑んだ。


                            ⭐︎おしまい⭐︎




   







   







 


 



 

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