4 決戦前
奇跡的に、聖気にやられる前に、若木を見つける。
「やりましたね、これで、あの者の持つ<結界封じのポップコーン>の力を使用できますね!」
「うん。わ……」
相変わらずグールの姿で、ポップコーンを宙に浮かせた若木が、
緩慢にこちらを振りかえる。
その肩が気まずげに跳ねる。
「な……」
若木はなぜか、メガネをかけていた。
「なんで、メガ……って、まさかそれ、ねーちゃんの?」
牙は全てを理解した。妙に勘が冴えていた。
まるで、好きな子のリコーダーを舐める小学生のように、若木は美紅のメガネをかけていた。
「あー……僕、昔クラスの《《男子》》に同じようなことされて、トラウマなのに。
若木おまぇなあ!」
若木と合流した牙。
先に進むと、通路が狭くなってきた。
「ここまでですね、聖魔様」
「うん、ありがとう」
グリフォンが去っていく。
「……あ。聖魔ってなにかって、詳しく聞き忘れてた」
奥に進んでいく。
この先に、銀次が……?
と2人が固唾を飲んだ矢先、
「あれ? 牙」
なぜか、白いミニのチャイナ服を着た美紅がいた。ご丁寧に、左右の髪をおだんごにしている。
「グググ〜♡」
若木がうるさい。
「なんだよ、ねーちゃん、その露出路全開な服!
まさか、銀次に変なことされたんじゃ……」
「ググ? グググググ!!!」
やっぱり、うるさい。
「まさか。あんなお子様よ?
暇だから、コスプレ遊びしてたのよ♡」
「はい? てか、なんで、こんな女物の服がたくさん?」
「さ〜? ぎんちゃんの趣味じゃない?」
ハンガーラックに、ところ狭しと、服が掛けられていた。
看護服だったり、警察官の服だったり、セーラー服だったり、ブレザーだだったり、ファミレスの店員の服だったり……。
「本当は脱走したいけど、いま銀次の魔法で聖気ダメージ無効化してるけど、逃げると、モロそれ食らうっていわれて」
「それなら、大丈夫! ねーちゃんもこの<結界破りのポップコーン>っを」
「ハ?! ポップコーン⁈」
美紅の声が固くなる。あからさまに、機嫌が悪い。
「実は親父が……」
「ナニ⁈ ポップコーンの話なんて聞きたくない!」
「?? ねーちゃん、銀次は?」
「ぎんちゃん? 寝てるわよ。本当よく寝る子ね。まだ本調子じゃないとかなんとか」
「ぎんちゃん?? あ、そうだ、かーちゃんから」
「三角巾? なにこれ?」
「わかんない」
美紅は託された三角巾を巻いた。意外に似合っている。
若木からは、メガネを受け取る。
「ぎんちゃんを倒すなら、眠ってる今がチャンスかも!」
とそこに、
「聖魔様〜‼︎」
いきなり壁が外側から破壊され、メスゴリラ━━プリティイエティーが出現する。
「隠し通路の最奥でお待しておりましたのに、全く一向にいらっしゃらない。このままでは、出番の危機と、やってまいりました〜⭐︎」
もふもふに抱きつかれて、牙が身じろぎする。
「な、なに?」
「聖人・銀次との最終決戦、わたくしもお供しますわ!」




