第44話 ファスエッジダンジョン(3)
ファスエッジダンジョン20階層で一旦休憩しているオレ達は体力の回復をさせる為、ここで眠りについていた。
眠りから覚めると、この先へアタックする為の準備を始めた。
「ここからは本格的な戦闘になっていくからな。しっかり準備をしておけよ。」
そのエイルの言葉に気合を入れ直し、その後に待つ戦闘に備える。
食事を終えると、テントを片付け、出発する事にした。
21階層から魔物の強さが一気に上がったように思う。
ゴブリンリーダーが複数で攻めてくるようになり、既に単独では厳しくなっている。
時には、某国民的RPGに出てくるスライムとは全く似てない青いスライムが一緒に現れ、同時に攻撃してくる事もある。
今まではいなかったのだが、魔物の中には属性を持つ者がいる。
一般的に属性は6種あると言われており、四大元素である火・水・土・風に光と闇を加えた6種がそれに当たる。
この中の四大元素は四すくみ相性があり、火には水、水には土、土には風、風には火と、それぞれに弱点がある。
光と闇は互いが弱点であり、これはまた別で考えられているのでそれは今は置いておこう。
この青いスライムは水属性なので土属性が弱点になる。
このフロアではマリーから相性について教授され、青いスライムをサンドの魔法で倒していった。
22階層目、予想通りこのフロアは小動物の魔物が出てきた。
ハリネズミ。オレの知ってるハリネズミとは全く別物で、針を飛ばしてくる。
一応躱せてはいるが、思うような動きが出来ない。
多分ステータスの敏捷が下がったのが原因だろう。
徐々に上がっていくのは何も感じなかったが、一気に下がるとここまで違和感があるとは思わなかった。
そして良心を傷つける可愛い系の魔物、パッチというリスの魔物だ。
この小動物フロアはこの可愛いのを殺さなければいけないという、精神攻撃をしてくる仕様なのだろうか。
まあ、普通に斬ってるけど。殺らなきゃ殺られる。その通りだ。
23階層の虫フロアでは巨大バッタとダンゴムシが出てきた。
このダンゴムシだが、更に大きくなったらナ○シカに出てくるだろ!と突っ込んでいただろう。
こいつらは体当たりしかせず、此処にいるのが不思議な程弱かった。
24階層目、先が二股に分かれて足になってる大根が土魔法を使ってくる。
この大根ソックリなヤツを昔ネットで見た気がする。
実はコイツは最高品質の食材らしい。おでんにしたら最高だろう。
4階層に出てきたスモールウッドが成長し、大きくなったミドルウッドもこのフロアで出てきた。
ただ大きくなっただけではなく、攻撃速度も上がっている。
たまに躱せずに盾で防ぐのだが、結構威力がありまともに喰らえば結構ヤバそうだ。
25階層目、蝙蝠が素早く攻撃が当たりにくい。
しかもこの蝙蝠は吸血ではなく、噛み付かれたら肉を食い千切ってくるらしい。
それでもディルとミルファが矢で射止めていき、特別問題ではなかった。
鶏の魔物、ワイルドコックは攻撃性が強すぎる。
此方を見つけ次第、全力で走ってきて攻撃を仕掛けてくる。
何より目が怖い。絶対夢に出てくるであろう恐ろしさだ。
こいつも高く売れる素晴らしい魔物だ。
肉もだが、羽までもが使い道が多く、何処かの街では飼育に成功したという噂もある。
26階層はオレの嫌いな死霊エリアだ。
ここではゲームなどでお馴染みのスケルトンが現れる。
実際この死霊エリアはミルファとマリーのホーリーだけで何の問題もなく進んでいく。
スケルトンの持つアイアンソードが、そのまま戦利品になるのはなかなか美味しい。
27階層目、悪そうな顔をして突っ込んでくるマッドヌー。
単純だが当たれば致命傷だろう。
距離をとり魔法と矢で攻撃すればなんてことない相手であった。
ドワーフベアはドワーフ程の大きさの熊で、その大きさからは想像できない程強力な攻撃を繰り出してくる。
特にその爪には注意が必要で、コイツに殺される冒険者も少なくない。
しかしその分遅い。エイルの速さの前ではなす術なく倒れていった。
28階層の悪魔は気持ち悪い触手で攻めてくる。
間違ってもミルファを囚われるわけにはいかない。
そんな事を考えていたら無双していた。
デビルドールはまさにホラー映画に出てくる人形だ。
見た目の恐ろしさに反して強くはない。
いや、今のオレだからそう思うのかもしれない。
そこそこの速さで、そこそこの攻撃をしてくるから注意は必要だ。
29階層まで来た。
こいつも間違いなく爬虫類なのだろう。
レッサードラゴン。体長150センチ程のドラゴンだ。
150センチでもレッサーなのだから通常のドラゴンはどれほどの大きさなのか見当もつかない。
そして口から炎も吐いてくる。
いきなり強くなった気がするが、それはオレの先入観があるからだろう。
ドラゴン種には少し魔法は効き目が薄い。中級以上の氷の魔法なら効果はあるようだが、生憎オレにはまだ無理だ。
それでも単純な物理攻撃でも問題なく倒せたので素材集めもありそこそこの数を狩っていった。
いよいよボスの30階層まで辿り着く。
事前に蜘蛛だと聞かされている為行きたくない。
それでも行かなきゃ進まないので、意を決し扉を開けた。
現れたのは人間程の大きさの巨大蜘蛛、アークスパイダーだ。
「こいつの弱点は火だからな。ファイア中心に攻めてくぞ。」
エイルの指示で全員が動き出す。が、いきなり先制で糸を吐いてきた。
これがマリーの足に当たり身動きがとれなくなった。
「レイジくん、私の足にファイアをお願い!」
マリーは直ぐに判断をし、オレに指示する。
オレは駆け寄り、かなり威力を落としてファイアを唱えた。
糸は一瞬で燃えさり、マリーの足は開放されている。まあ、少しの火傷はあるようだが。
「簡単に燃えるんですね。これなら食らっても問題ないです。」
「調子に乗ったら殺られるからね。気を引き締めていくよ。」
マリーはそう言い全員にシールドの魔法を掛けていく。
その間にディルとエイルの波状攻撃が始まっていた。
「レインアロー!」
「疾風斬!」
次々へと攻撃を当てていき、アークスパイダーを削っていく。
それを見たオレも走っていき攻撃を仕掛ける。
「パワースラッシュ!」
死角になる位置から渾身の一撃を入れた。
直ぐに体勢を整えファイアショットを連続で放っていく。
グォォォォォッ!
アークスパイダーはよろけながら狙いをオレに変え糸を吐いてくるが、ファイアショットを放ち続けているので全て燃えて消えていく。
結局アークスパイダーは何も出来ずに最後はエイルの陰翳殺で崩れるように倒れていった。
「えーと、こいつも持って帰るんですよね。」
「当たり前だろ。こいつ一匹で数十万だぞ。もって帰らないでどうすんだよ。」
これが数十万……とても信じられなかった。
気持ち悪いのを我慢しつつアイテムボックスに入れ、先へ進む扉へと進んでいく。
今回は最長で半日以上掛かっていて、皆の疲労もかなり溜まっていた。
テントを張り、直ぐに食事の準備に取り掛かった。
今回狩ったワイルドコックをその場で解体し、調理していった。
スモールウッドを薪にして、半身揚げや焼き鳥にしていく。
「やべぇぇぇぇっ!これ、美味すぎるわ!」
焼けるのを待たずに」摘み食いをしたエイルがあまりの美味さに悶絶している。
丁度良く火が通り食べると皆が顔を見合わせ綻んでいく。
最高級は伊達ではなかった。
眠りに入る前にジョブを確認すると魔法戦士が選択可能になっていた。
「ちょ、エイルさん!ジョブに魔法戦士が出てます。何時でもジョブ変えれますけど、どうしましょう?」
「マジか!早かったなー。んじゃあ、付けたばかりだけど一旦シーフを外して魔法戦士付けるか。
戦士を外してもいいけど、その場合はパワースラッシュは使えるようにしておけよ。」
そう言われると、今後のジョブを考え戦士を外して魔法戦士をつけた。
多分またステータスは下がってるだろうから最初は苦労するだろう。
しかし、スキルを確認すると魔法剣というスキルを目にし、やる気は最高に上がった。
この後オレは興奮する気持ちを抑え、次の階層に備え眠りについた。




