第34話 オーク
多分今日からは1回の投稿になります。
引き続きよろしくお願いします。
今日はロードウインズとしては休みだ。
エイル達三人は兎に角休みたいと言って朝も起きてこない。
鍛冶でもしようかと思ったのだが、ミルファからギルドで何か受けようと言われ依頼を受けることにした。
そして今はギルドに来ている。
「今日は依頼もイマイチだな。何かあった?」
「うーん、こっちもあまりいいのは……森で適当に狩りますか?」
「そうするか。」
聞くと十日に一回くらいはこのように依頼が集まらない日があるらしい。
朝早くだと護衛依頼があるので問題ないのだが、それが終わったこの時間だと依頼が全くない状態になるという。
オレ達は諦め、森でゴブリン退治に行くことにした。
「あら?貴方たち……レイジと……ミルファ、よね?」
声を掛けてきたのは昨日一緒に王子の護衛を行ったソニアだ。
「エイルは居ないのかしら?丁度いいわ。この後空いてない?勿論ミルファも一緒にね。」
何のお誘いかは分からない。でも行ってみたいと思う自分がいる。
しかし別の自分は警鐘を鳴らしている。何か危ないと。
かなり本気で悩んでると、ミルファが一歩前に出た。
「ソニアさん、申し訳ありません。これから東の森に行くところなんです。また別の日でお願いします。」
ミルファは昨日の事を根に持ってるのだろうか?
ソニアはオレを誘惑するような事をしたので多分それで警戒してるのだろう。
「ミルファは昨日の事で怒ってるのかしら?あれは冗談よ。貴方からレイジを取ったりしないわよ。
でも味見はするかもね。」
ミルファが真っ赤になって怒る寸前だ。
「あ、いました。ソニア姉さま~。」
ソニアを呼びながら走ってくる女の子がいる。
「どうしたの?そんなに慌てて。」
まさか……
「姉さまがいなくて探してたのです。」
間違いない。
「そう。皆いるの?」
犬耳っ娘だ!
「皆姉さまを探してるのです。」
是非ともお近づきになりたい!
「仕方ないわね。じゃあレイジ、ミルファもまた今度ね。」
「あ、えーと、は、はい。」
折角の誘いもあったのだが……ミルファの目の前じゃ流石に無理だ。諦めよう。
「レイジさん?どうしたんですか?」
実はオレはファンタジーの世界の獣人の中でも特に犬耳が大好きで強いこだわりも持っている。
その夢にまで見た犬耳のしかも垂れ耳ではない犬娘が目の前にいたのだ。
別にエロい事をしたいわけじゃない。ただ、ただモフりたいだけなのだ。
「いや、なんでもない。行こうか。」
後ろを振り返るが彼女らはもう居ない。
また会えるだろうか。そう思い森へ向け歩を進めた。
以前ゴブリンの集落を潰したこの森には、それでも尚ゴブリン達が闊歩していた。
この森の最奥には、最高級の肉と言われるオークの集落もあると言われ、高名な冒険者はその肉を求めて森深くまで足を伸ばす。
しかしオークはかなりの強さであり、例え一匹でもブロンズ以上、複数を相手取るならシルバー以上でなければ相手にするのは難しいとされている。
「相変わらずゴブリンが多いですね。」
「集落を潰しても変わらないんだな。」
「この森では今まで何回もゴブリンの討伐隊が編成されてますけど、今も変わらず増え続けてますからね。」
「そうなのか?じゃあ今後もあの時みたいな事を続けなきゃいけないのか。」
あの時の子ゴブリンを思い出し少し嫌な気持ちになった。
「どうしますか?もう少しだけ進みますか?」
「そうだな。前の集落あたりまでは安全だと言われてるしな。その辺まで行ってみるか。」
道中は、やはりゴブリンが見かけられた。
だが単独ばかりでスタンピードの時のような、グループで行動するような動きは見られなかった。
「前回の集落はそこですよね。見た限りだと何匹かゴブリンが居るようですが……。」
「うん、いるな。どうするかな。万が一を考えたら止めといた方がいいんだろうけど……。」
「レイジさんなら万が一なんてないと思いますよ。大丈夫です。」
「いや、ミルファを危険に晒させたくないってのがな。」
自分の顔が熱くなってるのがわかる。恥ずかしい。
「……もう。大丈夫です。行ってみましょう。」
元集落の中には確かにゴブリンが闊歩していたがそれは全て単独であった。
「やっぱり全部単独でしたね。」
「ああ。……待て。静かに。」
北側の小さな家から何か聞こえた。
何となく気になり見に行ってみる事にした。
「多分この家だ。」
本当に小さい物置のような家。しかしその入口は大きく、2メートル以上の魔物でも出入り出来るほどだ。
その家に近づいていく。少しずつ、少しずつ。
家の側面に立った。耳を近づけるが何も聞こえない。
入口から覗こうかと近づく。
グオオオォォォーーーー!
何かの咆哮か低い重低音のような叫びが鳴り響く。
確かにこの家からだ。
これはヤバい。何かが警鐘を鳴らしている。
ミルファに合図をしその場を離れようとした。
グギャギャギャッ
背後からゴブリンが襲ってきている。
すかさずシャムシールで切りつけ、ゴブリンは胴から真っ二つになり倒れる。
しかしその音はこの建物の中まで聞こえていた。
その入口から出てきたのは体長2メートルを超える豚……いや猪か。鑑定ではオークと出ている。
太ってはいないが脂の乗った肉をつけており動きは鈍そうだが、下顎から伸びた牙は全てを噛み砕きそうである。
出てきて直ぐに目が合った。
直後、真っ直ぐに此方に突進してきたのである。
「ミルファ、逃げ……」
出した盾も虚しく吹き飛ばされた。
それでも盾を出してたお陰でダメージは少なく、直ぐに起き上がり攻撃を仕掛ける。
万が一ミルファに向かわれたら……そう思うと耐えられない気持ちになったからだ。
「うおおぉぉ、ファイア!」
顔に向けて放つ。視界を奪い横から切りつける。
横っ腹を切りつけたが、肉が厚いからかダメージになっていない。
オークは見えないながらもそのまま腕を振ってくる。
一旦バックステップで躱すともう一度魔法で責め立てる。
「ファイア!ウインドカッター!」
放つと同時に走り出し逆袈裟に切り上げた。
が、踏み込みが浅かったのか、致命傷にはなっておらず、腕を振り上げた体勢のまま捕まってしまった。
「しまっ、ぐあっ!あ……っそが、うあっ……」
切りかかろうとしても届かない。
マジでヤバい!……!
グオオオオオォォォ
オークの目に矢が刺さっている。
ミルファの放った矢がオークの目に射さり、オレを掴んでる手を離す。
「くそったれが!」
着地と同時に飛び跳ね一閃!
オークは左肩から横隔膜付近まで切り裂かれ、崩れ落ちるように倒れた。
「はっ、はあっ、はあっ、」
目の前に倒れ込んだオークを見ながら、まだ起き上がってくるんじゃないかと、警戒したまま剣を構え続ける。
動かない……本当に死んだのか。
「レイジさん!」
背後からミルファが抱きついてきた。
その瞬間緊張が解け、持っていた剣を下げる。
そのまま剣を置くとミルファと向き合い強く抱きしめた。
「レイジさん、ホントに死んじゃうかと……心配しました。」
ホントに心配をかけたと思う。実際ミルファが目に矢を当ててなければ普通にやばかっただろう。
結局ミルファに助けられた形になったのだ。
「ミルファ、助かった。ありがとう。」
ミルファを抱きしめながら心から感謝した。




