第29話sideミルファ
初めての裏ストーリーです。
朝起きたけど、とても気持ち悪くて起きるのが辛い。
私は昨日から月経が来ていて体調が良くない。
少し目を開けると、そこにはレイジさんの姿がある。
体調が悪くてもその顔を見ると心が安らぐ。
また目を閉じ、もう少し寝てようかと思った。
隣にいるレイジさんが動いてるのが分かり、目を開け挨拶をしようとした時、そっと毛布が掛けられた。
少し驚き、そのままでいるとオデコにキスをされた。
不意をつかれ、嬉しさと恥ずかしさで頭も働かない。
そうしているとレイジさんは部屋を出て行ってしまい、早く起きればよかったと後悔した。
ゆっくり呼吸をし何とか気持ちを落ち着かせる。
今の出来事でどういう訳か吐き気も治まっているんだ。
何とか起きれそうかな。と思っていると部屋の扉が開き誰かが入ってきた。
「ミルファちゃん、大丈夫?」
マリーさんだ。心配して来てくれたんだ。
嬉しさで顔が綻んでいる。
「ちょっと気持ち悪いですが大丈夫です。動けないほどじゃないですから。」
今までももっと酷い時はあった。そのときも孤児院の皆も心配してくれてたな。
「トイレ行く?」
マリーさんに聞かれた。出血はそこまで酷くはないけど、行ったほうがいいかな?
トイレから出てダイニングを見ると、レイジさんはもの凄い勢いで食べている。
お腹痛くなっちゃうよ。もう。
レイジさんは食べ終わると直ぐに準備を始め、依頼を受けにギルドへ向かう。
「それじゃあマリーさん、ミルファをお願いします。」
「わかったわ。じゃあエイルをお願いね。」
レイジさんとマリーさんがそんなやり取りをしていた。
皆が出て行ったあと、マリーさんとゆっくり朝食をとっている。
「ねえ、ミルファちゃん。ここに来てよかった?」
え?なんでそんな事聞くんだろう。私はここに来れたから今幸せを感じる事が出来てるんだ。
「勿論です。どうしてですか?」
「うん。昨日のパウロのトコの子を考えてね。ケントくんって言ったっけ?
多分あの子の扱い相当酷いと思うのよ。あれを見てウチはどうなんだろう。って考えちゃってね。」
マリーさんは本当に私達の事を考えてくれてるんだ。嬉しいな。
でも、やっぱりケントの事は心配だ。
同じ孤児院でずっと一緒に育ってきた幼馴染だ。
出来ることなら何とかしてあげたい。でもそうしたらケントも怒るだろう。
だから私は出来ることは見守る事くらいだろう。それで十分だ。
「そろそろ行く?」
ある程度家の片付けも終わったのでギルドに向かうことにした。
ギルドに着くと、いつもの受付ではなく相談室へと入っていく。
その中でも更に仕切られた一角、そこが今回の目的である避妊魔法受付になる。
女性冒険者は、対盗賊においての失敗や人間を苗床にする魔物に襲われたときを想定して、この避妊魔法を受ける。
但しそれは月経と共に効果を失うのでそのタイミングで受け直さなければいけない。
気をつけなければいけないのが、既に妊娠中の場合その胎児をも消滅させる事である。
第一子を出産後、第二子の妊娠に気づかずこれを受け、胎児を消滅させる事例が相次いだ時期もあったらしい。
その為、一時はこの魔法そのものの見直しも検討されたが、若い冒険者を中心に「是非継続を」という声を上げ続けた結果、ギルド内限定で全て自己責任の元継続されている。
「すみません。初めての更新で……よろしくお願いします。」
「はい。わかりました。今は生理中ですか?」
職員はエルフの女性だ。レイジさんもこういう人が好きだったりするのかな?
職員から幾つか質問をされ、その後避妊魔法を掛けてもらった。
質問が結構プライベートな事まで聞かれたので、結構恥ずかしかった。
マリーさんから、ギルド内で少し休んでいこうと言われ、そこで軽く食事をすることにした。
実はここは初めてレイジさんに会った場所なんだ。
その前にも合ってるらしいけどそれは覚えてない。ごめんなさい。
「この後どうする?帰って休む?」
「いや、えーと、孤児院に行きたくて……。」
「何かあったの?」
「いえ、私育ててもらった孤児院に少しでも恩返しがしたくて、それで冒険者になったんです。
それで、結構お金貯まったので一度渡しに行こうかなって。」
「そっか。私も付いてっていい?」
「も、勿論です。皆に紹介させてください。」
「えー、それならレイジくんでしょ。私の彼氏ですーって。」
「いや、その……出来たらしたいですけど……。」
「いや、冗談だよ?」
少しそんな会話を楽しみ、孤児院へ向かった。
ギルドからは結構離れていて、馬車を使うことにした。
住宅街の一番隅に位置するこの孤児院は、この街の普通の平民の子が多数を占めている。
親との死別、虐待、育児放棄或いは生活苦。それぞれ事情は違えど、その殆どが親の事情でこの孤児院に預けられている。
私もその一人だった。
物心が付いたときには既にこの孤児院にいて、隣にはいつもケントの姿があった。
そんなケントを特別に感じたのは8歳の時だった。
10歳の時に思い切って気持ちを伝えたけど、シスターのメイさんが好きだからって振られた。
それから少し気まずかったけど、直ぐに元通りになった。
あれから6年経って冒険者としてこの家を出た。
「まだ数日なのに懐かしいです。」
「それだけ毎日が充実してるって事だよ。」
「そうですね。」
「こんにちはー。誰かいますかー?」
「はーい。すみません。お待たせし……ミルファちゃん?」
来たのはマザーのサリサだ。
「こんにちは、マザー。顔見に来ちゃいました。」
マザーは大変喜び、直ぐに子供たちを集め大いに楽しんだ。
「マザー、これ少ないですけど冒険者として自分で稼いだお金です。
今まで育てていただいたお礼じゃないですけど、経営の足しにしてください。」
そう言い、袋をマザーに渡した。
それはかなりズッシリしていて重量がある。
マザーは思わず中を確認した。
中には銀貨で50枚以上、つまり50万G以上入っている。
「こんな……ダメです!頂けません。」
「いえ、ホントに自分で稼いで既に自分の必要な分はとってあるので……受け取ってください。」
私もマザーも一歩も引かない。二人の間を袋が行ったり来たりしている。
「……マザー、差し出がましいようですが、このお金はこの子が孤児院のためと必死で稼いだお金です。
それこそ本当に命懸けで。この子の気持ちを汲んで受け取ってあげるのも、親としての勤めじゃありませんか?」
「そう……ですね。ミルファ、本当にありがとう。大事に使わせてもらうわね。」
そう言い私を抱き寄せてくれた。私はここで育てていただいて本当に幸せです。
「ミルファは本当に良き師に巡り会えたようですね。マリーさん、これからもあの子の事、よろしくお願いします。」
マリーさんは満面の笑みで、「任せてください。」そう言ってマザーと握手をした。
「そういえばメイさんは?」
ケントの想い人の事だ。聞いてみた。
「んー、最近たまにいなくなるのよ。夕方には戻ってくるけどね。」
いないのか。ケントの事話そうかと思ったけど、いないのは仕方ない。
そのあとも子供達と遊び、少しだけ勉強を教えたりした。
「ではまた来ますね。ありがとうございました。」
「今度は手ぶらで来なさい。あなたは此処の子なんだから気を使っちゃダメ。わかった?」
そう言いマザーは笑ってる。
もうすぐ陽が沈む。皆が帰ってくる前に先に帰らなきゃ。
女性視線って難しい。
これからも頑張ります。




