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第29話  採掘

 この日、目覚めると隣にはミルファがいた。初めてかも知れない。

 見慣れないこの光景にオレの口元が緩んでいる。

 ミルファは昨日から月の物がきている為、貧血気味なのかもしれない。

 一応ミルファに毛布を掛け、額にキスをして部屋を出た。


 今日は既に全員起きている。

「おはようございます。オレ最後ですか?すみません。」

「おはよう。ミルファちゃん大丈夫?部屋入ってもいいかな?」

 問題ないと伝えると、マリーはミルファの元へと向かった。

 オレはとりあえず身体でも洗おうか。


「早めにギルドに行くぞ。鉱山行きの護衛は早い時間に募集始めるからな。」

 それを聞きオレは朝食を掻き込むように食べた。


「それじゃあマリーさん、ミルファをお願いします。」

「わかったわ。じゃあエイルをお願いね。」

 マリーとそんなことを言い合い、笑顔で出発した。


 エイルの言う通り、ギルドには鉱山行きの馬車が多数止まっている。

 この時間は護衛任務の争奪戦になってるらしい。

 早速護衛登録をする。すると直ぐ様鉱夫たちが集まってくる。

「やっぱりロードウインズは大人気ですね。」

「俺もここまでとは思ってなかったわ。」

 エイルにとっても予想以上だったらしい。


 但し、今回はオレ達も条件を出している。

〈護衛に入るロードウインズのメンバーも採掘を行い、その採掘品はその者の物とする。〉

 にも関わらず、次々へと逆依頼が舞い込む。


「ふむ、其方たちで鍛冶でもするのかの?ならばその品の買い取りも行いたいのだが。」

 一人の老人が逆に条件をつけてきた。

「練習として作るかもしれませんが、基本は自分達の使う分がメインですよ。

 時間があってそれ以外を作る分はそうしたいですが。」

「うんうん、じゃあ決まりじゃの。儂の依頼受けてくれるかの?」

「エイルさん?」

「いいんじゃねえの?じいさん、よろしく頼むな。」


 鉱山までは馬車で二時間。

 依頼人と交流を図るにはちょっと長い。

「改めて自己紹介をするな。俺がリーダーのエイルだ。よろしくな。」

「ディルだ。」

「レイジです。今回の採掘品で鍛冶もする予定です。よろしくお願いします。」

「ふむ。儂はバルザム。ドワーフじゃ。武器商人兼鍛冶師じゃな。」

「鍛冶師なのに他の人の作った武器を売るんですか?」

「イイ品ならな。というよりもアイデアとでも言うのかの。儂にない発想に惹かれるのじゃよ。」

 この人は根っからの職人だ。そう思った。

 本当の一流は自分より下の者からも吸収する。誰かが言ってたな。


 僅か二時間でもやっぱりこの揺れには慣れない。

 嫌な顔をし必死に揺れに対抗しようとしているオレを見て、バルザムも表情を緩めている。


 予定通り二時間ほどで目的地である鉱山に着くと、そこから鉱山内へは徒歩とトロッコでの移動になる。

 オレの中でトロッコはファンタジーの乗り物ランキング3位の乗り物だけに非常に楽しみにしている。

 因みに1位は飛空艇だ。この世界にはあるのだろうか?

 トロッコに乗った感想としては、兎に角怖い。

 そう、怖いのだ。実際はそこまでスピードは出ていないのかも知れない。

 しかしそれ以上に早く感じてしまうのだ。

 

 驚いたのはその構造だ。

 なんと魔石を使用している。

 下りで出来たその推進力を魔石の力で増幅させ、その後の上りを倍以上進ませているのだ。

 そのおかげで動力がないにも関わらず、一切操作することなく目的地までたどり着いた。


「さて、儂はこれからあっちを掘っていくんじゃが、お前さんらもやるんじゃろ?

 まあ、基本はどこを掘ってもよいが、バリケードの先だけはダメじゃぞ。

 まだ安全かどうかわからんのじゃ。それだけは守っての。」


 

 オレ達も採掘を開始する。

 周囲の岩肌を鑑定する。所々に鉱石がある。

 その場所を二人に伝え、兎に角掘る。掘る。掘る。

 これはかなりの重労働だ。


 そこで魔法を使ってみる。しかし、威力を間違えると鉱山自体が崩れかねない。

 オレが考えたのはウォーターカッターで切り込みを入れることだ。

 切り込みから鶴嘴で壊していく。これは早い。


 ある程度貯まったところで、エイルの出番だ。

 錬成を使い鉱石から鉄や銅を抽出していく。

 これだけで限りなく100%に近い金属が出来上がっている。


 驚いたのはアルミニウムだ。

 これを鉱石の状態から錬成すると、それだけでアルミニウムになっていたのだ。

 詳しい過程は分からないが、本来アルミまでは幾つか過程があったはずだ。

 それを飛ばして一発でアルミニウムが出来るとは、流石異世界というべきか。


 それにしても錬成したら金属の種類が一気に増えた。

 元々鑑定したときは鉱石としか出ていなかったのだが、錬成するとそれが金属ごとに別れた。

 鑑定してみると、鉄、銅、アルミは勿論、チタンやニッケル、タングステンなどさまざまだ。


 元々鉄工所勤務だったオレは多少金属の知識はあるが、扱った事のないものは分からない。

 アイテムボックスに眠らせておこう。


 あとは兎に角掘ることだ。

 どうせ錬成したら纏まるのだから、細かくウォーターカッターを入れていく。

 掘って、掘って、また掘って。

 

 何時間経ったのだろうか。バルザムが帰りを知らせにこちらへやってきた。

「んなっ、な、なんちゅう量じゃこれは!」

 驚きすぎてポックリいきそうだ。

「お前さん、錬成持ちか?ならば、金は払う。儂のもしてくれんかの?」

 エイルは「お安い御用だぜ。」と快く引き受け、余分に付いてた岩が無くなり荷物が軽くなったバルザムは凄い喜びようだった。


 バルザムの前ではマジックバックに扮した鞄に採掘した金属を入れる。

 それを見たバルザムは一緒に入れて欲しいと泣きついてきた。

 

 今回採れたのは、鉄だけで100キロ以上はある。

 練習してからでも十分に新しい武器が作れるだろう。


 帰りもまたトロッコだ。来た時と変わらない空のトロッコに乗り込み、鉱山を後にした。


 鉱山から出ると外はまだ明るい。聞くと本来はこの後錬成士の元へ行かなければならないらしく、この時間に出ないと暗い中帰る羽目になり危険だそうだ。

 今回、ディルのおかげでその必要がなかったので、早めに帰路に就けそうだ。


 

 街へ戻り、依頼完了の報告の為バルザムと共にギルドへ向かう。

 何も問題なく無事に手続きは終わり、あとは帰るだけだった。


「エイルさん、ギルド長がお呼びです。ギルド長の部屋へ向かってください。」

 受付嬢からギルド長からの呼び出しを告げられた。

「エイル、また何かやらかしたのか?」

「いやいや、なんもやってねーよ。」

「パーティメンバーも同席願います。」

 パーティとしての呼び出しだったようだ。

 どことなく不安になりながらギルド長室へ向かう。


「おっさん、来たぞー。」

「エイル、来たか。そこに座ってくれ。」

 言われるままそのソファに座る。

「ロードウインズに指名依頼が来てる。但しゴールドランクのみの依頼だ。」

 瞬間、エイルの顔から笑みが消えた。

「……どんな依頼だ?」

「今回は緊急なんだがな、リック王子が例の我儘でこの街に来たいと言い出したらしい。

 しかも直ぐ準備しろ、なんて言い出し、その日の内に出発したらしいのだ。

 直ぐに早馬を走らせ情報は来たのだが、それでも明後日には到着するらしくてな。

 そこで急遽、この街の精鋭で護衛をしてくれと辺境伯から通達が来てるんだ。」

「辺境伯からか。それじゃ俺も断れねえな。こないだ世話になったばかりだし。

 で、俺ら三人だけか?」

「いや、この街のゴールド残り二人もだ。全部で五人で護衛する。」

「ちっ、パウロの野郎も一緒か……。」


 パウロとは昨日エイルに絡んできたマッドネスサイスのリーダーである。

 昨日の様子を見ても決して仲がいい訳ではなさそうだ。

「まあ、それよりあの女が受けるのか?そっちの方が難しそうだぞ。」

「アイツの所には既に使いをやっている。条件を付けてな。間違いなく受けるだろう。」

「ふーん、明後日からいつまでだ?」

「わからんが三日は押さえておきたい。よろしく頼む。」

「……わかった。レイジ、その間お前らは留守番な。頼むわ。」


 この後家に帰り、マリーとミルファにこの事を話した。

 マリーは心底嫌そうにしていたが、辺境伯からの依頼という事で渋々了承していた。

夜にこの日のミルファストーリーを投稿予定です。

よろしくお願いします。

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