第百四話 尾びれどころか背びれも胸びれも腹びれも尻びれも付いてるでしょこれ
·······ギリギリ間に合いませんでした、姫河ハヅキです。
ちょっと仕事と転職活動が忙しくてですね。こっそり入社前に書き溜めていた+入社後にチマチマと執筆した分でどうにか更新できました。
転職早くないかって?
まぁ·······うん、それはそう。実は就職活動である分野&業種に絞って就活してたんですが、落ちまくった結果、いったん就職を優先して勤務地が近いって理由だけである企業に就職したんですよ。
一月弱働いてなんとなく感じた·······しっくりこねぇや、ということ。
工場勤務なんですけど、朝早いしお給料安いしボーナスないしそのくせ夜勤はあるし、で勤務地以外いいことないんですよねぇ。爆速退社はしてませんが、転職活動を始めました。もうweb面接を終えて結果待ちな企業もあったりします。内定もらったら次の人員補充のため一か月は働いてから転職ですかねぇ。そう簡単に内定もらえるとは思ってないですが、ね。
·······正直五月の更新は怪しいでーす。GWで書きまくればどうにか·······?
「師匠、今日はどうして研究区画に?しばらくは《魔術王》を目指して試練や殲滅戦に籠る予定だったんじゃ?」
「んー······気分、かな。戦ってばかりだと気が滅入るし、ミシェルの成長具合も見たかったんだよね。ミシェルはどう?研究区画は学校も兼ねてるから同じ年頃の子と切磋琢磨できるんじゃないかって思ってたんだけど」
「はい、楽しいです!友人もできました!」
「それはよかった」
「あ、ここです。ここが僕が普段いる鍛冶棟です」
「なるほど。お邪魔しまーす」
「ん?ここじゃ見ない顔だな······ってミシェルじゃん。もしかして恋人連れて来たのかお前」
「違うよ!?」
「えっ何!?ミシェルが好きな人連れて自慢しに来たって!?」
「違うから!!」
「ミシェルが婚約者を俺らに自慢しようと連れて来たぞー!」
「だから違うって!!!」
誤解に嘘が付け加えられる速度が尋常じゃない。
尾びれどころか背びれも胸びれも腹びれも尻びれも付いてるでしょこれ。
◇◆◇◆◇◆◇
「こちら、僕の師匠のスノウさんです」
「どうもー」
「ど、どうも。本日はお越し下さり、誠にありがとうございまぁす!」
なにこの対応。王族でも貴族でもないのにこんなにへりくだった態度でこられても困るんだけど。
「えっと······?いつもこんな感じなの?」
「全然違いますね。ここに女性が来ることが少ないのでどう接すればいいか分からないんだと思います」
「そりゃ当たり前だrrrrるぉ!?こんな······こんな色んな意味で刺激的な美少女が来て平常心でいられるわけないだろ!?」
「師匠······本当すいません。めちゃくちゃ騒がしいですが、悪い奴らじゃないんです」
「うん······まぁ、悪い子じゃないんだろうなってのは分かるよ」
初対面の人に会う現実の自分を彷彿とさせるテンパり具合とか、おっぱいに視線が向くのに悪意や欲望を微塵も感じない所とか、女子慣れしてない男子校の生徒感が、「緊張してるんだろうな」感がすごい。
この鍛冶棟に女性がほぼ見当たらない辺り、印象通りなんだろうね。
「つーかミシェル、お前自分だけすましやがってよ!いつもそんな丁寧な口調じゃないだろ!」
「な!?今は僕のことはいいでしょ!」
「いーやよくない!超絶美少女が師匠ってだけでも羨まし過ぎるのに、師匠の前じゃ丁寧な感じを装ってるのが気に食わん!」
「そうだそうだ!仲違いとかはさせる気ないけどせめてお前の荒っぽい所をさらけ出させてやる!」
「そんなことしてもお前らにメリットないだろ!?」
あ、ミシェルの口調が変わった。友達の思惑通りに釣られてるねぇ。
「そうだが?」
「ぶっちゃけ八つ当たりだ」
「ただただ美少女師匠が羨ましいだけだよ」
「いやふざけんな!?······ハッ。し、師匠、違うんです!」
「うんうん、分かってるよー」
「チクショウ効果ねぇ!」
「聖母の如き微笑みで流されてる······!」
「ああああぁあぁあああぁぁぁああ······」
「いやでもミシェルにメンタルダメージいってるな」
「普段隠してるのがバレたらそりゃあな」
「つまり作戦成功」
「お前ら覚えとけよ······!!!」
この後普通にミシェルの鍛冶の腕前を見せてもらった。
◇◆◇◆◇◆◇
「元気にやってそうでよかったー」
『友達もできて楽しく過ごしてるみたいね』
鍛冶を教えることはボクにできたけど、友人として付き合ったり切磋琢磨して共に成長したりはボクにできなかったことだ。
このオリュンピアスにミシェルを連れて来たのは貴族の権力による干渉を防ぐためだったが、ああしてやんややんや言い合える相手ができたのは嬉しい誤算である。
『鍛冶棟の建物や設備、人に何の細工もないことも確認できたしね』
『やけに辺りを眺めてたのはそういうことだったのね』
『欲を言えば他の棟も見たかったんだけどねー』
ボクはオリュンピアスに来てから一度も研究区画に行っていない。それが急に鍛冶棟を訪れたかと思えば他の棟にも行こうものならミシェルには不自然に思われるかもしれない。
あの爺さんが手を出してくる確信があるならともかく、まだ懸念に過ぎないのだからミシェルに必要以上の不安を抱かせる必要はない。
そのため、今日は鍛冶棟を見れたのだから十分だと思い今はコロッセオに向かっている。
「ちょいといいか、そこのお嬢ちゃん」
声のした方向に視線を向けると、ドワーフの男性が三人。
············ふぅん?
「なんでしょう」
「ここら辺に知り合いが住んでいるはずなんだが、似たような建物ばっかで道が分からん。案内してくれないか?」
「ボクもこの街には詳しくないので」
「目的地に印を付けた地図はあるんだがな。細かくて老眼の儂らには見辛いから代わりに見てほしいんだ」
「歳は取りたくないもんだな!」
「まったくだ!で、どうだお嬢ちゃん」
「···いいですよ」
「ありがとうな!どれ、そこの屋台で飲み物でも······」
「···どうも」
······ふむ、ずいぶんと入り組んだ路地の中に目的地か。
まぁそういうことだろうね。
「じゃあ、行きましょうか」
そうして案内を始めて十分ほど、人通りがめっきりなくなり、空き家ばかりになってきた辺りで事態が動く。
ドワーフのうちの一人が突然背負っていた斧をボクに振り下ろし、その動きを察知していたボクは素早く飛びのく。
「······やっぱり」
「無駄だろうがあえて言おう。ミシェル様を、ヴォロレフト家の跡取りを返してもらおうか」
「別に攫っちゃいないんだけどね」
「何を言う!ミシェル様をヴォロベルクから遠く離れたオリュンピアスまで連れて来ておいて!」
「やはり竜人と問答をしても意味などない。手足の一本でも落とせば素直になるかもしれんがな」
「······一応聞いておくけどさ、例のジジイが嫌がるミシェルに無理やり魔導工学を勉強させようとしているってことは知ってるよね」
「ミシェル様には魔導工学への比類なき才がある。鍛冶などより魔導工学を学ぶべきだ」
「『世界中のたくさんの人に自分の武器を振るってほしい』などと世迷い事を言うようになったのも貴様のせいか。あの高慢な竜人に、すまし顔で我らを蔑むエルフに、野蛮な獣人に、欲深き普人に、我らの武器を持たせようなどと!」
わぁお。
この時代にまだ「自分たち以外の種族はカス!」主義者いるんだ······。どの種族にも得意不得意があることぐらい子供でも知ってることなのに、なんでその考えが抜けないのかなぁ。
こういう手合いは自分と違う主張を無視するから話し合う意味ないね。
「場所を変えるぞ」
ドワーフの一人が魔道具を起動すると周囲の景色が一変する。
このために用意した建造物の内部のようで、天井にも壁にも床にもびっしりと魔法陣が刻まれている。通信妨害に転移妨害、防音にまだ色々······ 移動と連絡の妨害が山ほど仕掛けられてるね。よほど外部の情報を遮断したいみたい。
あ、三人の心臓に絶命を条件として発動する術式が仕込まれてるじゃん。しかも内容は近くの人物の束縛······明らかにボクの足止めが目的だな???
「ここまで貴様を連れてこれば、グリムガン様の計画は邪魔されないだろう!」
「覚悟しろ毒婦!ドワーフが世界の頂点に立つべく、その障害となる貴様はここで殺す!」
······あぁ、話し合いは無理だね。外部と遮断されているここなら人目を憚るスキルも遠慮なく使える。一切の遠慮なく殺してしまおう。
「······どの種族が優れてるだとか、世界の頂点だとかはどうでもいいんだ」
狐の半面を付けて種族を変える。
一刻も早くミシェルの元に行きたいなら、同時に三人とも始末してしまえばいい。
「アンタらが正気でこの選択をしたのなら」
―――【狐囃子】―――
―――『光学迷彩』―――
「アンタらがミシェルを取り巻く環境を知ったうえでこんなことをするのなら」
ユリアの幻影で姿を隠した分身たちと共にそれぞれで奥義の準備を行う。
絶命時発動の術式が心臓に刻まれているなら、心臓ごと吹き飛ばすなり切り捨ててしまえばいい。
「アンタらが平気で子供の未来を踏み躙るのなら」
準備は整った。いつでも殺せる。
「生かしておくわけにはいかねぇよ」
「「「貴様ァ!」」」
―――〈仙術異伝:禍津彼岸華〉―――
―――〈秘剣:叢雲〉―――
―――『限定顕現:迦楼羅焔』―――
一切を消し炭へと変える【憤怒】の黒炎が花開き、瞬く一閃が術式も心臓も男の身体ごと真っ二つに叩き斬り、神々しさを感じさせる赫い焔が塵も残さず燃やし尽くした。
······思ったより何も感じないね。
「はい、終了」
んー······扉も窓もないな。壊すか。
「よいしょっと」
天井を破壊し空へと飛びあがる。
「······うっわ、ずいぶん離されてる」
オリュンピアス内ではあるが、研究区画からはかなり遠い場所に転移させられていたようだ。ここからでは鍛冶棟も非常に小さい。
······なんかデカいロボが暴れてるな。やっぱり、今のドワーフ達は陽動か。このまま空路で向かいつつMPポーションを飲みながらミシェルに状況を聞こう。
『ミシェル、そっちの状況は?』
『······っ!師匠!おじい様が、おじい様が······!!!』
『あのでっかいヤツだよね?』
話している間にも翼を全力で稼働させて距離を少しでも詰める。
いざとなれば転移でかけつけるつもりだが、先程の三連ブッパで少なくない量のMPを消費している。ミシェルの祖父と戦う可能性が高いので少しでも節約したい。
『突然工学棟の方から巨大な機械が出現して、辺りを破壊しながら僕の方へ向かってきたんです。加えて大量に小型も引き連れていて······。アルフレッドさんが来てくれたおかげで死人は出てないですが、機械の襲撃に合わせて黒ずくめの集団が研究区画全体を襲撃したせいで鍛冶棟周辺にはアルフレッドさんしかいないんです』
『え、別勢力の襲撃もあるの!?』
『はい。今は鍛冶棟の皆をアルフレッドさん一人で守っている状況です』
『マジか、すぐ行く』
そうなると節約とか言ってられないね。とにかく早く向かおう。
「ユリア、これに転移用のマーキングと、転移の準備をお願い。あとINTバフちょうだい」
『了解よ』
―――『魔槍:紺青呪氷』―――
濃紺色の槍を数本作り出し、その内の一本にマーキングを施してもらいながらMPを追加で投入することであのデカブツに突き刺さるように強度を引き上げる。
アレの装甲に負けて砕けると転移がし辛くなるのだ。
あとは飛距離と精度だね。
『自由の空』『智慧の瞳』同時展開。『自由の空』で超強化した『黒翠凶風』を氷槍に纏わせることで射程と速度を確保、同時に『智慧の瞳』による超精密魔力制御で軌道を設定。
『アルフ、目の前のデカブツから少し離れてー』
『承知』
「ぶっ刺されよー······どっせい!」
·······よし、全弾命中···········あ、最初の二、三発は障壁に防がれてら。硬いな。
とりあえず転移っと。
◇◆◇◆◇◆◇
「おまたせー」
「師匠!」
『遠ざけるまでは成功したはずだが·······!?化け物め!』
「駆け付けただけで化け物呼ばわりは酷いなー?」
『作戦の第一段階が成功したうえで貴様が今の時点でここにいるということは、貴様がBランク冒険者三人を瞬殺したことに他ならん。加えてあの距離から、上位職の奥義を十発以上も防ぐこの障壁を数発で貫通する魔術を放ち命中させる。単純な戦闘力も、魔術の威力も、射程も、精度も全てが化け物だ』
あの三人に関してはリソース消費度外視で初手大火力ブッパしたからこその早期決着なんだよねぇ。真っ向勝負していたらそれなりに時間がかかっていたのではなかろうか。
とりあえず殺人を認めるとヤバいかもだし否定しとこ。非合法な依頼だろうからボクがしらばっくればセフセフ。
「Bランク冒険者?何のこと?」
『見え透いた嘘を·······!しかし、貴様のような化け物も殺せるように私は腕を磨いた!研鑽を、学びを続け、魔導工学を探求し続けた!この魔導機械で貴様を殺す!』
「やれるもんなら、やってみなよ」
金属の塊が相手なら『麒麟』でワンサイドゲームだけど、奥の手警戒で温存した方がいいかな。障壁と装甲を抜けそうな手札はいくつかあるし。
「アルフ、ミシェル達の護衛はよろしく」
「お任せください」
『抜かせ!』
こちらに向けられた砲口に鋼属性の『魔槍』をぶち込んで砲撃を阻害。続けて向けられる銃口には塞ぐほどの口径がないので銃を支えるアームの部分に『魔弾』をぶつけて歪ませる。
振り下ろされるブレードを避けながら背後に回るが、背面装甲の一部が開いたかと思えば魔力砲撃が放たれたので距離を取る。
『背後などという分かりやすい死角に何の対策もしていないと思ったか』
「よくそこまで色々仕込んでるねー」
機体の至る所に銃器や障壁発生装置をはじめとする様々な武装が仕込まれており、それらのエネルギー源として動力炉がいくつも搭載されている。よくその大きさにその数搭載したなぁ。そのくせ機体の装甲が脆いなんてこともない。
やってることはクソだけど技術は本物だね、このジジイ。
『これならどうだぁ!』
うげー、多重同時砲撃&銃撃に範囲魔術とか対処メンドい。ボクなら回避できるんだけどねー。
「『耐火防御結界』『対魔力防御結界』『対物防御結界』」
あ、予定通りアルフに丸投げで大丈夫そう。最近は防御系を重点的に鍛えているとは聞いていたが、この激しい攻撃でも余裕ありそうじゃん。
「よーし·······」
ユリア達からいつものバフを受け魔導機械に接近する。
バフ込みでも障壁と装甲の両方を抜くなら奥義かなー·······!
「『我が知啓は貴方の為に:火炎』」
あっボクにバフる余裕まであったの!?
ありがと!
「〈仙術秘伝:加具土命〉」
『ぐうう·······!?』
ボクの掌中から発生する膨大な熱量が魔導機械に叩き付けられ、障壁を瞬く間に破壊し武装も装甲も融かしていく。
ジジイは上位職の奥義がどうこう言っていたが、最上位職の奥義はそれらとは一線を画す。「上位職の奥義を何発も耐える」なんて尺度は意味を為さないのだ。
「·······ちぇっ、やっぱり本体は別の場所か」
胴体の部分を九割融かしても人の姿やその残骸は見当たらない。
薄々勘付いてはいたが、やはりこの魔導機械は遠隔操縦。本体を探し当て直接叩かなければ次々と魔導機械が送り込まれてくる可能性が高い。
さて、どう動くかなー·······っ!?
アルフからのバフが不自然に解除された!?結界が破壊された様子もないのに!
「··············」
「が·······あっ·······!?」
何事かと振り向いたボクが見たのは、凶刃に腹を貫かれ崩れ落ちるアルフと、それを愕然とした表情で見つめるミシェルたちの姿だった。
「アルフっ!!!」
急いでアルフの元に駆け寄り、アルフを抱き支えながら髪で下手人を引きはがし、地面に押さえつける。
『ユリア!まだ敵がいるかもしれないから姿を隠しながらアルフの治療を!』
『オッケー!』
アルフを優しく地面に置いてから、下手人へと向き直る。
結界が解除される前に刺されたということは、内部にいた奴の犯行。内部に隠れている奴がいないのはボクの眼で確認済みだから、鍛冶棟の人物にスパイがいたということだ。
クソッ、精神操作の魔術や呪術がないからって油断してた。正気のまま、元からのスパイという可能性を失念していた·······!
「やってくれたなおま·······え·······?」
こいつ、表情が虚ろだ·······正気じゃない。
今も精神操作の魔術・呪術の痕跡はないし、何者かがボクに看破できないように精神干渉を行っていたとしても、騎士系統の上位職であるアルフの防御を抜ける程の攻撃力・技巧をただの鍛冶師が持つはずがないからこの下手人は一般人じゃないはず。
どういうこと·······?
『···おかーさん、こいつのナイフ、変』
『え?·······あ!これ小型の魔導機械じゃん!』
魔導機械はステータス補正がない代わりに威力が使用者のステータスに依存しない。戦闘経験の浅い鍛冶師でも騎士たるアルフに刃を突き立てることも可能になるだろう。
ただ、【魔導工学】の保有をはじめとした使用条件が魔導機械には存在するのだ。こいつが正気か正気じゃないかにかかわらず、使用条件を満たしていないと魔導機械は機能しない。
·······うん?頭らへんの魔力の巡りが妙だな?
「·······なんだこれ」
下手人の髪を探っていると、アンテナのような小さな魔導機械を発見した。どうも微弱な電気を発するものみたいだけど·······え、まさかそういうこと?
脳に電気を流して思考を操作してるってこと?
この方法なら精神干渉の魔術や呪術を使わずに他人を操り人形にすることができる。他人の支配はその二つの方法がメジャー過ぎて他の方法は考慮に入ることがまず少ない。ボクだって頭部の魔力が妙な巡りになっていることに気付かなければスルーしていただろうし、それに気付いたのも偶然だ。
魔法があるこの世界でこんな非魔法的なアプローチが存在していることがまず驚きなんだよね。しかもそれを実用レベルまで引き上げているなんて、技術力も知識もとんでもないよ。
引っこ抜くだけでOKなのが幸いだ。
あ、これ鍛冶棟の他の子も·······
「「「「「··············」」」」」
「お、お前らまで!?一体どうしちゃったんだよ·······!?」
でしょうね!
『少しでいいから取り押さえて!ボクが取り除く!』
『『『了解!』』』
ああもう!魔導機械が刺さってる位置が人によって微妙に違うの鬱陶しいなぁ!
ミシェルの知り合いじゃなけりゃ魔術で雑にぶっ壊すけどさすがにねぇ。
「よっこいしょ!」
『スノウ!魔導機械が砲撃を!』
『えっ!?』
〈仙術秘伝〉で胴体ごと心臓部をまとめてぶっ壊したのにまだ動くのぉ?
いや、今は砲撃を防がないとか。ボクは避けたって構わないというか、避けるのが一番手っ取り早いのだが、ミシェルとその知り合いたちが倒れていたり腰が抜けていたりと回避が望めなさそうな状況だ。
んー·······魔力量的にただ防ぐのは割と大変そうだね。
【封術石】並列起動での砲撃である程度相殺、残った分は〈魔法陣:対魔力障壁〉で防御っと。
ん、悪意·······なんか三方向から遠距離攻撃しようとしてる奴らいるな。まだ魔力砲撃続いてるからほぼ動けないんだけど。そもそも防御系の術式は苦手だし、維持はさらに苦手なのだ。
視たところ魔術1、弓術1、投槍1か。魔術は【封術石】で砲撃すればどうとでもなるんだけど、弓と槍はねぇ。物理は防御諦めて回避する心づもりでいつもプレイしてるから、対物理の防御札は全然ないんだよね。
「リル、ヴァルナ、イナバ!片方だけでいいからどうにか防いで!」
『念話』で弓使いと槍使いの座標を三人に送る。
「「「弓!」」」
「おっけ!」
よーし、数歩くらいなら移動しても維持は可能だからどうにか避ける!
一発ならいける!多分!
魔術は相殺完了、弓は三人が防御成功、あとは投げ槍を―――
「『この身は貴方の盾ゆえに』」
―――って、えっ?アルフが転移魔術!?しかも詠唱短くない!?
というか、さっきまで重傷だったのにボクを庇うだなんて無茶して大丈夫!?
「アルフ!」
「お嬢様に並べ立てるように、お嬢様と共に戦えるように、あの方たちに鍛えてもらったのです·······!ここで立たねば男が廃る!」
正直アルフの戦線復帰はめちゃくちゃ助かる。ボクはどう足掻いても誰かを守ることに向いていないのだ。
「防御交代してー」
「承知」
これでボクに攻撃する余裕ができた。追加で狙撃される前にこちらから仕掛けようか。
あーいや、初撃で仕留められなかったから走って逃げてるな。でも殺せそう。
上空から三人を視界に捉えて準備完了。
「ヌル、【ラプラス】でアイツらの移動ルートを予測して。ボクが魔術をブチ当てる」
「了解ですヨ!」
『魔弾・混成複合』で『真紅雷霆』と『紫怨雷霆』の二種を掛け合わせた弾丸を三つ生成し、速度と射程を犠牲にして威力を劇的に引き上げる。
『智慧の瞳』を起動し、ヌルから伝えられた奴らの移動ルートを基に『座標転移』を発動する。
「―――ここ」
三人が反応する間もないタイミングで、触れるくらいの至近距離に『魔弾』が転移する。
三人の胸部で『魔弾』が炸裂し、風穴が開く。走る姿勢のまま、電源が切れたように崩れ落ちる。
「名付けて『独善的☆我流神罰』ですネ!」
「勝手に名付けないでくれる???」
というかその「☆」どうやって発音した?
あ、そうだ。まだ砲撃してる魔導機械を全身きっちり破壊しなきゃ。
『魔弾』『魔槍』大量に撃ち込んでー·······うん、おっけ。
「これで片付い·······増援かー」
工学棟の方向から大量の魔導機械が行進してきてる·······。
工学棟の建物を破壊しちゃダメかな?めちゃくちゃ長引くでしょこれ。
『私は諦めぬ·······!ドワーフがこの世界の覇者となるために!』
「だから·······!自分の欲望に子供を巻き込むなよクソジジイ!」
適当な属性の『魔槍』で小型どもを一掃する。
『···小型で装甲が薄いとはいえ、この数を一度で殲滅するか。やはり軍勢や砲撃では押し切れんな』
ギュチッ ミシミチバキィ
後ろから妙な音·······?
「「―――っ」」
ミシェルを除いた鍛冶棟のメンバー達、彼らの心臓があるはずの場所から魔導機械が這い出てきた。肋骨を押しのけ、肉を千切り、皮膚を突き破り、そのままミシェルを取り囲む。
機械どもを媒介として魔法陣が描かれ······転移魔術か!
『来い』
「な、なにこれ·······!?」
離れ離れにならないようにユリア達を送還し、向こうの総戦力を把握できていないのでアルフも連れて行けるように抱き寄せる。
「視界急に変わるけど酔わないでね!」
「近っ···い、いつでも行けます!」
魔法陣の術式を視て転移の対象がミシェルだけなのを確認。
·······うん、偽装はないね。ヱメロアなら転移先が分からないように術式組むんだけどね。
あ、干渉に対するセキュリティもガバい。術式干渉はまだ慣れてないけど、セキュリティ皆無のものに術式の対象を追加するくらいならいける。
「よし、計画通りにミシェルを·······貴様ら!?」
「ようやく本人か!」
―――『魔弾・混成複合:真紅雷霆×紫怨雷霆 』―――
―――『雷弾連続曲射』―――
「無駄だ」
どこからともなく出現した障壁が、真っすぐ高速で向かったボクの魔術も、防ぎにくいようにと曲線軌道で向かったアルフの魔術もあっさりと防ぐ。
「まぁ、生産職が本拠地で備えてないわけないよね」
弾速重視に調整したとはいえ、最上位職のパッシブバフが乗った混成魔法を真正面から防いで特にヒビが入った様子はなし、と。さっきのゴーレムより強度高いな。
おまけにそれぞれ異なる方向から曲線で向かったのも全弾同時に防ぐあたり、ここの防御システムは演算機能も高そうだ。
「貴様らは死にそうにないが、時間は稼げるだろうな」
「何のはなs―――
瞬間、周辺の景色が一変する。
大量の機械に囲まれている屋内から、煮え立つ溶岩がそこら中に流れている火山へと。
一瞬遅れてうだるような暑さを感じたことで、幻術ではなく現実だということを理解した。
「·······あの御仁、魔導工学だけでなく空間魔法のエキスパートでもあったのか」
「うんにゃ、魔導工学だね」
転移の術式を構築する魔導機械が視界の端にギリ見えた。転移の単機能特化型だろうね。
さっきの鍛冶棟の面々に仕込まれていた魔導機械は偽装・心臓の代替・空間魔法と分かるだけで三つの機能を備えながら転移の術式を10秒足らずで構築していたのだから、搭載する機能を一つだけにすれば構築速度が速くなるのも当然だ。
「ところで·······ここどこ?」
「私も実際に訪れたことがなかったので推測にはなりますが、おそらくはダンジョン〈灼熱の巨釜〉かと」
「え、ダンジョン?ダンジョンは内外どっちも転移は結構ムズいはずだけど·······魔導機械万能すぎない?」
足元に壊れた魔導機械があった。魔力の残滓を視るに空間属性。
これ単機能特化型のを使い捨てにしてさらに出力上げたのか·······?
「ボクの空間魔法の練度だとダンジョン越しの転移は安全保障できないから、普通に脱出するのがいいかなぁ。出口どこだろ」
ダンジョンは基本的に最深部と他数か所に脱出口が存在する。するのだが·······ダンジョンによって脱出口の場所は違い、そもそもダンジョンはそれぞれ独特の構造なため「ここにあるよ」という場所は最深部くらいしかない。
ダンジョンに挑む予定は今の所なかったからリサーチなんてしてないよ。
「·······幸か不幸か、最深部は近いようですよ」
「え?」
「父から『〈灼熱の巨釜〉の最深部では火竜が群れている。周辺環境も相まって死ぬかと思った』と聞いたことがあります」
「·······あぁー·············· 」
·······こっちに火竜の群れが向かってきてるなぁ。上位種も混ざってるなぁ。
「ちなみに最深部の脱出口は群れを討伐してから出現したそうです」
「ですよね『静謐の海』!」
やってやんよ何が竜種じゃオラァ!




