第十二話 激突! となりの晩ごはん
朝から大さわぎで……
「じゃ、行ってくるよ」
「あなた、ちょっと待って」
「えっ、何だい?」
「ねえ、今日の晩ごはん、何がいい?」
「何でもいいよ」
「もう! 何でもいいは、ダメ!」
「うーん、じゃあ、焼き肉かな」
「何言ってんの! 給料日前なのよ」
「ええーっ、それじゃ、アジの開きでいいよ」
「ちょっとー、やめてよ。焼いた後、グリルを洗うの大変なのよ」
「じゃ、刺身でいいよ。最初から切ってるやつで」
「あなた、まさか忘れたの? マサルちゃんは生魚が食べられないでしょ」
「ああ、もう、じゃあ、じゃあ、カレーでいいよ」
「ダメよ。一昨日食べたばっかりじゃない」
「もう、何でもいいよ」
「だから、何でもいいは、ダメ!」
「おいおい、いいかげんにしてくれよ。そろそろ行かないと、遅刻するよ」
「わかってるわよ。何かヒントだけでもちょうだいよ」
「ヒントって、クイズじゃあるまいし。適当でいいよ」
「もう、何よ、その態度! 毎日毎日献立を考えるのがどんなに大変か、あなたにわかる?」
「こっちだって、毎日毎日仕事してるんだ! おまえにその大変さがわかるのか?」
「あーら、何よ。そっちは休みの日があるじゃない。主婦には365日休みがないのよ!」
「ほう。昼ドラ見ながら、ポリポリ菓子を食うのは、休みじゃないのか?」
「言ったわね。あなただって、付き合いだからって、毎週飲みに行ってるじゃない。その金額を考えたら、あたしのお菓子代なんて、微々たるものよ」
「おれは今、金額の多寡を言ってるんじゃない。激務をこなしているおれの休息と、おまえの『亭主元気で留守がいい』みたいな状態を一緒にしないでくれ」
「ふん、さも自分が仕事ができるみたいに。それだけ優秀なら、来年あたり、部長にご昇進あそばされるのかしら」
「何だと。言っていいことと、悪いことがあるぞ!」
「その言葉、そっくりそのまま、お返しするわ」
「もういい! 勝手にしろ!」
「もちろん、勝手にするわよ。でも」
「でも、何だよ」
「何か晩ごはん思いついたら、必ずメールしてよ」
「……」




