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彼と私と宴の後

どうやらビンゴ係の人らしい社員の方が番号を読み上げていて皆それに注目していた。

だからこっそりキッチンからでた私たちに気付いたのは祐樹さんと高松さんくらいだった。

手を繋いだままの私たちを見て二人がにやにやと笑う。

恥ずかしくて解こうとするもそれはがっちりと組まれていて外れなかった。

上を見上げて佐久間さんを見ると彼は口だけ動かしてダメと呟いた。

俯いてそのまま赤くなり唇をかみ締める。


ずるい、こんなやり方、ずるい。

こんな風にされたら周りの公認の仲になってしまうじゃないか。


やがてビンゴが終わり全員に大なり小なり景品が行き渡る。

悔しがる人や意外に喜ぶ人など色々だ。

ざわざわと口々に話しながら視線が中央へと戻るその瞬間に佐久間さんはそっと手を離した。

思わず見上げると私を見ないまま全員に向かって声をかける。


「さて、紹介したい人が居るんだけど」


その声に全員が私たちを見る。

たくさんの目が特に私を見ていて俯く。

佐久間さんが私の肩を押して前へと押し出す。

彼の前に立つ形となってしまった。


「こちらが今日美味しい料理を一人でほとんど用意してくれた我が家の家政婦さんの笹川さん」


えぇっと声が上がる。

いや何人かはキッチンで会ったじゃないか。


「お初にお目にかかります、笹川です」


ぺこりと頭を下げるとおぉっと声が上がる。

それから口々にご馳走さまの言葉と拍手。

意外な反応に顔を上げると皆が笑っていた。

祐樹さんのせーのの掛け声に皆が一斉に言う。


「ありがとうございました」


その言葉にびっくりして一瞬固まったがすぐに頭を下げて言葉を返す。


「お粗末さまでした」


その後高松さんとデザートのゼリーを配りそれを食べ終えるとお開きとなった。

何人かの男手でテーブルと応接セットが元の位置に戻っていく。

キッチンへと戻り食器を引き上げて洗っていると来ていた女性社員と高松さんが手伝いに来てくれた。

お礼を言ってからそれに甘えて布巾を配り洗った食器を拭いて貰う。

すべて流し終えて私もそれに参加した。


「それにしても社長がこんな可愛い人と住んでたなんて意外だよね」

「うんうん」


社員の二人が口々にそう話していて手を止める。

私と高松さんの視線に気付いたのか二人はにこにこしながら言葉を続けた。


「社長は本当に前から女っ気が全く無くて」

「そうそう、もう、女性社員の間では高松さんの前で何ですけど、黒井さんとの噂も合った位で」


黒井とは祐樹さんの苗字だ。


「そう、なんですか」


すこし驚いてそう呟く。

そうか本命は祐樹さんだったのか。

結ばれない恋だったんだと、息を吐く。


「ねぇ、ちょっと、勘違いしてない?」


一緒に料理をしてすっかり仲良くなった高松さんが怪訝な顔を浮かべた。

へ?と顔を上げると彼女は呆れた顔をした。


「私の夫はゲイじゃないわよ?」


え?じゃあ……と驚いて目を見開く。

やだぁと全員が笑い、私も一緒に笑っておく。


彼女が居ないって本当だったんだ。





お開きになり半分くらいは帰っていき女性社員は笹川君を手伝ってくれている。

残った男共は飲み足りないと応接セットに座り持ち込んだ乾き物を開いて飲みなおしだ。

もちろんその中には俺も含まれている。

いや、もう飲めないよと思いながらグラスになみなみと注がれたワインを見つめた。


「社長は笹川さんとは何でも無いんですか」


不意に聞かれて首を振った。

何でもないよと答えると勿体無いとの声。

いや俺だってそう思ってるよ。


「じゃあ俺狙っちゃおうかな」


軽いなーと怒る気にもなれず聞き流す。

それを嗜めたのは祐樹だった。


「お前、上司の家政婦と付き合うの?マジで。俺なら無理だわ」


愚痴とか言ったらダダ漏れじゃんかと言いそれもそうだと一同が笑う。


「でも、可愛いですよね、小さいし。何より料理上手いし」


それは同意すると頷くとテーブルに乗っていた料理を思い出したのかまた来年も彼女に頼んで欲しいと要望された。

来年はもうここには居ないんだよと思いながらそうだなぁと同意する。


「来年には社長の彼女になってたりして」


そうだと良いなぁと思う。

その後も他愛も無い話を聞かされて欠伸が止まらなくなりついにウトウトと眠ってしまった。





「さてそろそろお暇しようぜ」


と、残った人を立たせたのは祐樹さんだった。

高松さんと並び、全員を出してから最後に玄関で振り返る。


「ご苦労様。本当に美味しかったよ」


ありがとうございますと頭を下げて二人が消えるのを待ってからドアに鍵をかけた。

もうすっかり夕方だ。

リビングへ廊下を歩いて戻り。忘れ物が無いか確認する。

みかんのお礼のお菓子もきちんと渡したしとソファで眠っている佐久間さんを横目に残ったグラスとおつまみの袋を片付けた。


皆が手伝ってくれたおかげですっかり綺麗になったキッチンとリビングダイニングを見て頷く。

さて、明日の事もあるし彼を起こして早く寝かさないとと、ソファへ近づき体を揺らす。


「佐久間さん、佐久間さん」


んんっと呻いてから目を開けて起き上がる。

うわ、酒くさっ。


「みんな帰った?」


寝てすこしすっきりしたのか大きな伸びをしてから欠伸交じりに言われて頷く。


「そっか。今日は本当にありがとう」


起き上がった彼と私はあんまり高さが変わらなくてまっすぐ見つめられてそう言われて両手を胸の前で振った。


「いえいえ、たいしたことしてません」





「そんな事ないよ」


ともう一度欠伸をする。

酔っ払っていた時の記憶はあやふやだが確かに俺は彼女を抱きしめた気がする。


「それと悪かったね」


キッチンであんな事してと付け加えると彼女の手が止まり困ったように笑った。

こんな風に出来るのもあと僅かなんだなぁと思う。

それを嫌だと否定する自分と壊すなという自分が入り混じる。


悪いんだけど鞄取ってきてと頼むと彼女は俺の寝室からそれをすぐに取ってきてくれた。

お仕事ですかと尋ねてくる彼女に首を振って中から例のアクセサリーの紙袋から箱を取って差し出した。


「これ、いつものお礼」


嘘をついた。

お礼なんかじゃない。

本当はただ君に贈りたかったんだと思う。

それを彼女が恐る恐る手に取りリボンを外していく。


「これっ」


箱に印字されたブランド名に息を飲む。

あぁ、やっぱり知ってたかと安心する。


「クリスマスプレゼントだよ」


鞄を床に置きそう微笑みかけると箱を俺の手に戻してくる。


「こんな高価なもの頂けません」


中を見る前にそう言われて押し問答が始まった。

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