第16話 勧誘
「八雲ちゃん、コーヒーと緑茶どっちがいい?」
「えっとぉ……では、緑茶でお願いします……」
台所でコーヒーと緑茶を淹れて、八雲ちゃんの待つちゃぶ台へ持っていく。
「どうぞ」
「ありがとうございます……」
八雲ちゃんの向かい側に座り、コーヒーを一口。
「それでね、八雲ちゃん。さっきの話の続きなんだけど……」
「あの! ……私、やっぱりギルドに入るのはちょっと……」
「うん、わかるわかる。ブロンズランクの人間が作るギルドなんて、入りたくないよね」
わたしが八雲ちゃんの立場でも100%断る。
「そういうわけでも……無いのですが。私には入りたいギルドが……」
「聞いて八雲ちゃん。わたしには強いスポンサーがついてるんだよ」
「スポンサー?」
「うん」
ごめん水鏡さん。お名前使わせていただきます。
「ギルドを立ち上げるにはステラランク以上のシーカーの推薦が必要、それは知ってるよね?」
「はい。講義で習いました」
「わたしは、マスターランクの水鏡天花さんから推薦を受けるんだ」
「水鏡……天花!?」
八雲ちゃんは目を見開いて驚いた。
当然当然。水鏡さんはたった4人しか居ない最上位ランクのシーカーだ。そんな人が無名のブロンズランクシーカーの後ろ盾についているなんて、驚いて当たり前。
「入ります」
「え……」
水鏡さんがバックに居ることは、ストロングポイントだとは思っていた。
しかし、こんな即意見を変えるとは思わなかった。
八雲ちゃんは俯き、表情を隠す。
「……氷室さんは、水鏡さんと仲がいいのですか?」
うーん、別に仲良くないけど、ここはひとまず。
「うん、友達だよ」
友達は盛り過ぎか? まぁいいか。
「そうですか……わかりました」
八雲ちゃんは顔を上げる。その表情はさっきまでと違い、力強いものだった。
「私も、ギルドの立ち上げ……手伝います!」
ふんす。と鼻を鳴らす八雲ちゃん。
ありがたいけど、やる気になった理由が曖昧でちょっと怖いな。
「それで! いまはどういう状況なのですか!?」
「お、落ち着いて……えっとね」
メンバーがあと1人必要なことと、お金が1800万円必要なことを伝える。すると、
「お金については何も思い浮かばないですけど、メンバーについてなら1人心当たりがあります」
「ホント? その人について教えてもらっていいかな」
「はい。名前は不知火燈ちゃん。同じ中学の同級生で、私と同じで中学を卒業してすぐにシーカーになった子です。ランクはゴールドです」
「え、16歳でゴールドランク? 凄いね……」
「凄い子なんですけど……喧嘩っ早くて、ギルドに入ってもすぐ揉め事起こして脱退しちゃって……いまはソロで活動しています」
性格に難ありって感じか。
それでもゴールドランクは戦力としても頼もしい。是非ともゲットしたい人材だ。
「根はやさしい子なんです! ……中学で孤立していた私に唯一話しかけてくれたし……」
「うん。とりあえず会ってみようか。仲介お願いしてもいいかな?」
「はい!」
八雲ちゃんはすぐにその不知火という子に連絡してくれた。
「あ、燈ちゃん。あのさ、いまちょっと困っててね……」
八雲ちゃんはこっちの事情を説明する。
「うん、うん。わかった。じゃあ明日の10時にトレーニングエリアの第3習義場で」
通話が終わる。
八雲ちゃんはわたしを見て、
「えっと、明日の……」
「聞いてた。10時に第3習義場だね」
「はい。そこでトレーニングをしているそうです」
「了解。じゃあわたしと八雲ちゃんはトレーニングエリア前のコンビニに集合しようか。9時半でいい?」
「大丈夫です!」
打ち合わせが済んだところで今日は解散した。
八雲ちゃんを帰した後、わたしはカップ麺(肉うどん)を啜りながら不知火燈ちゃんについてネットで検索してみた。問題児かつ有望ルーキーならば何か情報があるかも、と思ったわけだけど。
「あった」
記事が1つあった。タイトルは『3人目のテレポーター現る!』。
ページに入ると、まず写真が1番上にあった。茶髪で、細長い編み髪ポニーテールを1本後ろに垂らした女の子。瞳の色は鮮やかなグリーン。身長はわたしと同じくらい……160cmぐらいだろう。雰囲気はボーイッシュな感じで、不機嫌そうな表情でカメラを睨んでいる。頭には帽子を被り、鼻には白いテープ(キズテープ?)を貼り、肩とへその出た青いトップスと動きやすそうな白の長ズボン(柔道着のズボンみたいなやつ)を着用。両拳には白い包帯を巻いている。装いから察するに格闘家タイプかな。
写真の下、記事を見ていく。
「……ユニークスキルの名前は『ナックル・テレポート』。まだ練度は低いものの、希少な瞬間移動能力者である。すでに高ランクギルドは彼女に目をつけ、争奪戦が始まっている。はたしてどのギルドが彼女を獲得するのか……」
瞬間移動能力者……しかも現状ですでにゴールドランク。やばい。ここまでの有望株がわたし達の仲間になるビジョンが見えない。




