外法、虎視眈々
「見ろ! 魔王城が現れたぞ!」
外法の男、ユーゲンが言った。
ユーゲンは空を飛んでいた。
浮遊魔法ではない。
ドラゴンに乗っていた。
ダークドラゴン、ニスフィラム。
だが、その容姿はあまりにもかけ離れていた。
巨大な翼は小さくなり、四肢は鱗に覆われているが、その大部分は成人男性のそれだった。
融合術、キメラ。
ユーゲンは己の駒として扱っていた護衛の男と、死体となり朽ち果てかけていたニスフィラムを融合させたのだった。
人に翼が生えたような男に乗って、ユーゲンは今、突如として平原に現れた魔王城を見て笑みを浮かべていた。
それは、子どもが新たなオモチャを与えられたときのような笑顔だった。
「ゆくぞ、エルフィルド! もはやお前に勝てない相手はいない。たとえ魔王だとしても、お前なら倒せるはずだ。そして倒した魔王とお前を融合させれば世界最強の生物が出来上がる!」
ユーゲンは陶酔したようにうっとりとして、風を浴びながら様々な魔法陣が記された書物を握る。
「私たちの神が出来上がる。お前と、魔王の素体。そうすれば、この世界は私たちの、私のものだ! この愚かな世界を作り直す! 我々のような素晴らしきものが支配する世界へ!」
世界は、もっと美しくなくてはならない。
そのためには、美しさと美しい景色、情勢、世界のビジョンを持つものが頂点に立ち、民衆を導かなくてはならない。
争いも、優劣も、頂点以外には必要ない。
そのために必要なのは神だ。
神とその言葉を伝えるもの。
そして、従うべきものたち。
従わず、抗うものはすべて殺す。
すべて無に帰す。
それで美しい世界は作られる。
完成する。
誰もが平和に暮らし、誰もが喜びに満ちた世界。
外法の男ユーゲンが、神の代理人として頂点に立ち、愚民を正しく導く世界。
「我々は神の代理人なり! はは! はーはっはっはっは!」
ユーゲン。
恐ろしく自分勝手な思想を持ちながら、その実力は神に近い男である。
魔王城はどんどん近づいていく。
世界が変わるまで、あとほんの少しだ。




