表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/23

1章 第10話 上級冒険者と捕縛クエストの受注

 翌朝、ルナ・リングハートの逗留する宿に冒険者ギルドの職員が訪れ、クエスト依頼書を届けた。


 内容は「冒険者倫理法その他に違反した犯罪冒険者パーティ『輝ける道』の捕縛への協力」とある。

 

 結局、『輝ける道』が横流しに協力していたのかという思いから、それを否定したく、ルナは無意識に依頼書の不備を探してしまう。


 だが、依頼書に瑕疵は見当たらなかった。

 発注者はアルノーの衛兵団ということになっている。クエスト発注日は前々日、承認日は昨日、その他もろもろの書式にも問題のない、正式なクエスト依頼書であった。


(あれ……?)


 ひとつの違和感がルナの脳裏をかすめた。

 しかし、依頼書に記された集合刻限が迫っていることもあり、ルナは諸々考えたくなるのを押し殺して、依頼を正式に受注。装備を整え集合場所として記されていた衛兵団の詰め所へと向かった。


 衛兵団の詰め所はギルドからそれほど離れていない立地にあった。

多くの人々が訪れる開かれた施設であるギルド支部と異なり、衛兵団の詰め所は拒絶を形にしたかのような在りようをしている。


 高い塀と閉ざされた門はいずれも超硬度素材で作られている。数多ある建築材系のドロップアイテムの中でも流通が制限された国家資源であった。


 固く閉ざされた門扉の横の通用口にルナは赴き、『無弦の鉄弓』を手にした門衛が、ルナの冒険者証とクエスト依頼書を確認して中へと通してくれる。


 赴くように言われた詰め所の中庭では、衛兵たちが待機していた。


 誰もが揃いの装備を身に着けている。物理攻撃に大きな耐性のある『鎮圧の大盾』、そして五連発式の『無弦の鉄弓』。王国の衛兵団での制式採用装備だった。

 

 だが、衛兵に混じり、幾人か異なる装いをした者たちがいた。


「よう来たか」


 そのうちの一人、ムクロ・スパルダが軽く手を上げる。


 ルナはムクロへと近づき、そして彼のそばにいる者たちへと視線をやる。


 全員が、黒い全身鎧に身を包んでいる。


 その光沢にルナは見覚えがあった。

 中層の階層主黒鎧猩(ニグルム・ギガル)や下層のモンスター黒鎧蟻(ニグル・ミルタ)のそれと同一の光沢。

 それはその鎧が物理攻撃・属性攻撃の両方への強い耐性を持った、極めて上等なドロップアイテムであることを示してた。


「ムクロ、この人たちは……」

「お目にかかれて光栄だ。上級冒険者ルナ・リングハート殿」


 ムクロからの紹介を待つこと無く、黒の全身鎧の一行の一人、唯一面当てをつけていない男が話し出す。どうやら、その男が一団の指揮官らしかった。


「私は監査騎士団所属の者だ。今回、ギルド側からの申告に基づいて出撃。また推薦のあった貴殿に対して捕縛クエストを依頼させてもらった。本日はよろしくお願いする」


 慇懃な口調であったが、話しぶりほどにはルナのことを重んじていないことは明らかだった。

 現に、所属は告げれど名乗りはせず、更にルナの返事を待つことも無くそのまま歩き出し、集まった衛兵達の前へと向かう。


「監査騎士団……クエストの依頼元は衛兵団となってけど?」

 

 残されたルナは、同じくその場に残ったムクロへと抗議じみた調子で尋ねる。


「ま、衛兵団は監査騎士団の下部組織……正式には違うがそのような扱いだからな。事務手続きを押し付けたんだろうさ」


 こっちも別にやつらの部下ってわけじゃないが、さんざ『下』の扱いをされたとムクロがぼやく。


 監査騎士団。ムクロが所属しているというギルドの監査局が内部監査を目的とする組織であるとするならば、監査騎士団は外部監査機関であった。


 その所属は冒険者ギルドではなく、ギルドを後援する各国家である。

 ギルド自体の不正や腐敗を監視し、そしてギルド所属の冒険者たちの犯罪への対処を行うのが任務である。


「冒険者ギルドには戦力が無い。クエスト依頼という形で抜け道を作ろうにも、冒険者ギルド自体には自らクエストを発行する権限はない。だからまぁ、監査騎士団に今回の件を報告して、ついでにあんたを捕縛クエストに使うように『助言』したんだがな」


 例えば。ダンジョンが暴走し、大量のモンスターが地上へと湧き出すスタンピードという現象がある。


 昨今はめっきりと起こっていないスタンピードであるが、その際であっても冒険者ギルドは直接冒険者を動員することは出来ない。


 それは戦力の保持と見なされるからだ。


 戦力が必要な事象に対峙したとき。一市民として衛兵団に治安回復を依頼するか、あるいは監査騎士団に冒険者への討伐クエストを出すよう『助言』することでしか冒険者を戦闘運用できないのが冒険者ギルドであった。


「しかし、衛兵団と捕縛クエストを依頼した冒険者だけで済ませるかと思いきや、監査騎士団が直々にお出ましとは予想外だったぜ」

「わたしも監査騎士団は初めて見たわ……」


 ムクロとルナが話している間、衛兵達の前に立った監査騎士団の男が今回の任務概要を説明していた。


「アルノー衛兵団諸君! 今回我々は危険魔具を不正に流出させた犯罪者の捕縛を行う! 対象は不正を行ったギルド職員、流出先の商店、そして不正に協力した冒険者だ! 既に別働隊がそれぞれギルド職員と商店の元に向かっている。我々が向かうのは冒険者の元にだ! これには抵抗が予測されるため、我々監査騎士団および、捕縛クエストを受けた冒険者、ルナ・リングハート氏が同行する!」


 話を向けられ、ルナは軽く会釈する。


 だが、それ以上の紹介などが行われることはなく、監査騎士団の指揮官は任務説明、あるいは演説を続ける。


「監視役によれば目標はアルノー五番街の借家にパーティ全員が滞在中とのことだ! 速やかに借家へ向かい包囲ならびに周辺住民の避難誘導を行う! その後に突入! 抵抗がある場合には戦闘になることも考えられる! その場合は衛兵団諸君は包囲の維持と牽制を担当されたい! 直接戦闘は我々監査騎士団ならびに冒険者ルナ・リングハート氏が行う! 以上! 詳細については各班班長に確認! 行動開始!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ