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ヒーローを追いかけまわすタイプの悪役令嬢に転生してしまったけどキャラ変したいです  作者: 園内かな
舞台Pオリジナルミュージカル編

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4.


 この後にあったパーティも皆が和やかで、大成功だった。

 こんなに盛り上がったパーティは初めてとのことで、担当者の人も喜んで涙目だった。

 アニーたちキャスト陣も、お化粧を直して汗を拭いてパーティに参加している。皆に囲まれる人気者になっていた。


 私はセリーヌ姫のお側に付いて、彼女の熱のある感想を笑顔で聞いていた。オタクの早口語りみたいになっているお姫さまってちょっと面白い。でも芸術に感心のある、性格の良い子っぽくて良かった。感想を一通り述べてから、セリーヌ姫は私に質問してきた。


「ねえ、エリザベス。もし続きがあるなら、どんなお話になるの」

「はい。今回は、準備が直前になりすぎて、曲数もキャスト数もとても少なかったです。次はどちらも増やしたいですね」

「もう、そうではなくて。どんなお話になるか教えて頂戴」

「ふふ。次は、他のライバルグループも出て来て、競い合う内容にしたいですね」

「ライバルグループ! なるほど、楽しみだわ」


 私は目敏く、近くに居たレイラを呼んで紹介した。


「レイラ、こちらにいらっしゃい。セリーヌさま、この子をライバルグループのリーダーにして好敵手にしようと思っていますの。歌も上手くて、今回は歌唱指導や楽譜制作まで手伝ってくれた才能ある子なんですよ」

「エリザベスさま……! ありがとうございます! 一生懸命、がんばりますっ!」


 セリーヌ姫はニコニコしてレイラを見ている。

 その様子を見た、今回のキャスト陣たちもワッと私に寄って来た。


「エリザベスさまっ! 続きも、あるんですか!」

「私、続きにも出たいですっ!」

「もう、待ってみんな。それより前に、エリザベスさまにお礼のご挨拶でしょっ」


 役柄そのままの、お姉さんっぽいキャロルが皆を諫めて、五人は揃って私にお辞儀をした。

 アニーが代表して言う。


「エリザベスさま、本当にありがとうございました。この舞台に立てて、今こんなパーティに参加出来たのは、全てエリザベスさまのお陰です」

「ふふっ。でも、皆が頑張ったお陰よね。あの酷い状況の時でも、アニーはいつも明るくて真っ先に挨拶してくれたでしょう。私は、こういう子が頑張るストーリーを観たいと思ったのよ。皆も、キラキラしていたわよ。次も頑張りましょう」

「はい! 頑張ります!」


 アニーたちが盛り上がっている時に、今度は王妃殿下とランベールがやって来た。

 皆は一斉に膝を折って淑女の礼をする。

 王妃さまはセリーヌ姫に話し掛けている。


「舞台は如何だったか、セリーヌ姫」

「それはもう、素晴らしゅうございました」

「気に入ってくれて何よりだ。そこのエリザベスは、わらわの姪でありランベールの従姉妹に当たる。親交を深めると良い」

「はい。私たち、もうお友達ですのよ」


 お姫さまと友達になっちゃった! 嬉しい。


「えへへ。セリーナさま、私、次の舞台プロデュースも頑張りますから、観てくださいね!」

「勿論よ。楽しみにしているわ。舞台もだけれど、お茶会に招待するから来てちょうだい」

「はい! 是非に」


 チラッと王妃さまを見る。

 姫さまがこの国を好きになってくれてる感じがビシバシするんですけど。

 王妃パワーで私とアランさまの結婚後押し、ちゃんとしてくれるよね?!

 と思っていたら、ランベールが話しかけてきた。


「今回の舞台の成功は、俺のお陰でもあるからな」

「は? 何をしてくれたって言うの」

「俺が途中で手を振って、盛り上げてやっただろう」


 まあ、それでちょっと盛り上がったのは本当だ。オーケストラを使わせてもらえたのも、このパーティ用の管弦楽団の人たちが演奏してくれたからで、それにはランベールのロイヤルパワーもあったと思う。

 私は渋々認めた。


「ま、ほんのちょっとはね。少~しだけ! だけど」

「もっと有難がって感謝しろ」

「も~、そんなの、ランベールじゃなくてキャストが一番頑張ってくれたからじゃないの。あっ、ランベール。皆を褒めてあげてよ」

「何を言っている」


 戸惑うランベールを無視し、アニーたちキャストに呼びかけた。


「皆、この人は本物の王子さまよ。お褒めの言葉を貰っておきなさい」

「なんという雑な紹介だ。もうちょっと俺に敬意を払えよ」


 そうは言っても、アニーたちはキラキラした期待に満ちた表情でランベールを見つめている。

 ランベールも王子さまの仮面を被り、キラキラに擬態してうむ、と頷いた。


「皆、今日はよく演じてくれた。両国の友好関係にも、そして観客たちの期待にも、十分に応えてくれた」


 なんか良い風なこと言ってるな、と思いながら私はその場を離れた。

 パーティ会場の片隅には、リンゼイ氏とセルジュ先生もやって来ていた。


「二人とも! 今回は本当に助かったわ。二人が調べたり、交渉してくれなかったら、あの最悪な劇をすることになっていたもの」

「そうなったら、今回の劇の熱気は感じられなかったでしょうな」


 セルジュ先生の言葉に、私もリンゼイ氏もうんうんと頷く。

 リンゼイ氏は王宮ご飯をもぐもぐ食べながら言う。


「気にしないでください。簡単な調査でしたし、今日もパーティに参加出来て美味しいご飯を食べられて、役得です」

「リンゼイ、心臓は大丈夫なんでしょうね。あまり食べすぎるのも良くないんでしょう」

「食べるよりは、喫煙とストレスが駄目って聞きましたよ。食べないのもストレスなので」

「また、そんなこと言って~」


 呆れていると、セルジュ先生が真剣な表情で言った。


「ところで、今日の舞台の脚本は、アリーズ先生が書いたのではないですか」

「えっ! まあ、少しはね。大体は、私が書いたんだけれど」

「アニーとブリジットが本音で語り合う台詞、あれはアリーズ先生の文章ではないかと推測しました」


 その通りだった。あそこはストーリー部分で感動させるメインどころなので、私の説明台詞ではなくアリーズ先生による心情描写入り台詞にしたのだ。

 それをしっかり読み取ってくるとは。


「……ちょっと、熱心なファンすぎて怖いんだけど」

「何をおっしゃいますか。それくらい読み取らなければ、真のファンではありません。しかし、突然の舞台脚本にもアリーズ先生のお手を煩わせるとは。ファンとしましては、このようなクローズド舞台よりも万人に読まれるオリジナルストーリーの本の執筆を優先して頂きたいんですがね」

「うっ……」


 これは痛いところを突かれた。

 私もそうしたい。アリーズ先生の新作をみんなが待っている。

 けど、急いで脚本を仕上げなきゃ、って時にアリーズ先生を頼りまくってしまった。

 だって、うちの使用人だもん! 公爵家パワー使って何が悪いの。

 私のその心情を読んで、セルジュ先生は推理を述べる。


「やはり、アリーズ先生は公爵家の使用人なのですね。それでエリザベスさまに良いように使われてしまう」

「ちょっと。語弊がある言い方しないでよ。良いようにって何よ」

「エリザベスさま。私はアリーズ先生のパトロンになりたいです。どうか本人にその旨、お伝え頂けませんか」


 パトロンって! ちょっと、アリーズ先生を囲ってなんかいやらしいこととかしないでしょうね?!

 私はたちまち警戒してセルジュを見返した。


「パトロンって、何をするつもりなの」

「勿論、生活の面倒を全て見ます」

「お手当を渡して何か要求するつもりじゃないでしょうね」

「私が求めるのは、アリーズ先生の作品です。先生が些事に煩わされることなく、執筆に集中出来る環境を差し上げたいのですよ。今の状況では、失礼ながら、先生の才能を潰すことになるのではないですかな」

「ぐぅ……」


 これまた、ぐうの音も出ない。

 シーラは公爵家の侍女頭だった。最近はその仕事を引き継いで、私の担当になってもらって執筆中心の生活だ。

 けれど、公爵家に居るのだから全然仕事をしないわけにはいかない。常に侍女のお仕着せを身に着け、誰かに仕事を言いつけられるスタンバイしながらの執筆だ。後輩に質問されたり私たち公爵家の家族に言いつけられたら、一旦中断して働かなければいけない。


 それらは、確実にシーラの負担になっているだろう。

 シーラに執筆だけの生活をさせてあげる。

 でもそれなら、私にも出来るのでは。


「そうね。シー……、アリーズ先生に聞いてみるわ。ただ、アリーズ先生は顔出しもしないし名前の公開もしないわ。セルジュ先生じゃなくて、私がパトロンになってしまうっていうのも手だろうし」

「そんな! エリザベスさまがパトロンだと、また何かある度にアリーズ先生のお手を煩わせることになるのが目に見えています。私がパトロンになったら、そんなことはさせません」

「だから、アリーズ先生に聞いてみるってば」

「くれぐれも、よろしくお願いいたしますよ! 私と会わなくても、名前も伏せたままで結構ですから」


 そんなに熱心な、お金だけ出すファンってすごいな。神ファンじゃん。


「そこまでなのね。ファンの鑑だわ。でもアリーズ先生を発掘したのも、現時点の主人なのも私だから!」

「くっ……」


 私がマウントを取ると、セルジュ先生は悔しそうにしていた。

 ふふん、と勝ち誇っていると王妃殿下の従者が来て、壇上の王妃さまの所に来てくれと呼ばれる。

 そういえば、そろそろ歓談タイムが終わってダンスが始まる時間だ。

 誰かと踊れって言われるんだろうか。ランベールだったら嫌だな~。でも、セリーヌ姫とランベールをくっつけるなら、その二人を躍らせるかな?

 そんなことを思いながら、壇上に行くと王妃さまが言った。


「今回の大成功、褒めてつかわす」

「ありがたき幸せ、ですわ」

「それに、次回以降も演出担当になるのだろう」


 私は頷いて、そして小声で囁いた。


「次の舞台も構想はありますし、公女さまにお茶会にも誘われました。色々、公女さまのお好みを伺ってきます」


 だから、約束を果たしてくれますか?

 その期待を込めてじっと見つめる。

 すると、王妃さまは「うむ」と頷いて口を開いた。


「期待以上の働きだ。その方に、褒美をやろう」

「……ありがとうございます」


 ご褒美より、婚約の後押ししてくれたらそれでいいんだけど。

 そう思っていると、王妃さまが壇下を顎で指す。

 ふと見ると、人垣が割れてその真ん中を一人の男性が歩いてくる。

 それはなんと、貴族の正装に身を包んだアランさまだった。


「っ!」


 驚いて息を呑む。

 しかも、アランさまは胸に大きなルビーのブローチをしている。

 あの頼んでいた真っ赤な原石は、無事にブローチとなったようだ。

 うわ~、滅茶苦茶麗しいよアランさま!


 しかも、私を見て微笑んでくれている。

 私はもう、一歩も動けずボーっとしたまま棒立ちよ。

 アランさまは私の所までやって来ると、そっと私の手を握って褒めてくれた。


「エリザベス、素晴らしかったよ。貴女は私の誇りだ」

「アランさま……」


 こんなに褒めてもらえるなんて。嬉しくて泣きそう。

 そんな私に、王妃殿下が声を掛けてくれる。


「エリザベス、私のご褒美に感激したか」

「はい! ありがとうございます!」


 王妃さまが、アランさまを呼んでくれたんだ。舞台も観てたなんて、知らなかった。

 教えてくれたら良かったのに~!

 王妃殿下は、次にアランさまに声を掛けた。


「アラン・バーテルス魔術伯、そなたはエリザベスに求婚しているとか」

「はい。何の実績も無い若輩者ゆえ、なかなか認めて頂けませんがお認め頂けるまで励む所存です」


 大広間がザワザワしている。皆、ゴシップ記事しか知らないからびっくりしているんだろう。

 王妃さまは、頷いて請け負った。


「そなたらの後援は、わらわが請け負う。才能溢れる魔術伯と、同じく才媛の令嬢だ。似合いの二人だとも」

「ありがとうございます、パトラ伯母さま!」

「ありがとうございます、王妃殿下」


 二人がそれぞれ礼をすると、それを見計らったようにオーケストラがダンスの曲を奏で始めた。

 王妃さまが頷いて行ってこいと合図をし、私たちはホールの真ん中に移動して踊り出す。


「夢みたい……」

「エリザベスが頑張ったからだ」

「嬉しい、アランさま。アランさまも、これで良かったのよね?」


 まだ、彼が求婚してくれているというのがなかなか信じられなくて、念を押してしまう。

 けれど、アランさまは私に甘い眼差しを注いでくれた。


「ああ。君と結ばれる為ならば、どんな手でも使おう」

「王妃さまに、頭が上がらなくなっちゃったけど」

「どうせ、魔術伯なら王宮には逆らえないんだ。王妃の後ろ盾を得る方が良いのかもしれない」


 権力のバランスとか勢力争いとかは、全然分からない。

 でも、アランさまが結婚してくれるって言うなら、もう何でも良いっていうか。

 嬉しすぎて、舞い上がって、私はフワフワしている。

 ボーっとアランさまのリードに導かれて、ダンスをして、身体中が熱かった。


「エリザベス、顔がずっと赤いぞ」

「のぼせてしまったみたい……」

「バルコニーに出ようか」


 アランさまが広間の外の、バルコニーに導いてくれた。

 そこは夜風が気持ち良く、新鮮な空気が吸えてホッと出来た。


「はーっ、私、ドキドキしっぱなしでもう心臓がもたないかも」

「心拍の警告が出ないようにしなければな」


 アランさまはフフッと笑って言う。

 さっきから、アランさまの雰囲気も表情も甘すぎて、それが余計に私をのぼせさせるというのに。


「はー、アランさまのこと、好きすぎて熱くなっちゃう」

「……エリザベス、あまりそういうことは」

「え?」

「いや、もう構わないだろうか。私も、エリザベスを愛している」

「っ、っ~~~~!」


 言葉にならない。胸がドキドキして、心臓がどんどこ鳴って、顔がカーっと熱くなって。

 さっきからアランさまと寄り添っているだけでのぼせていたのに、彼は私を抱き寄せて抱擁した。

 そのまま、見つめあって彼の顔が近付いてくる。

 唇に柔らかな感触があって、私はもう興奮のあまり、目の前が真っ暗になった。

 そのまま気を失う私に、アランさまの焦った声が聞こえた。


「やっぱりまだ早かったか。エリザベス、気を確かに」


 でも、幸せな気持ちのまま、私は気絶してしまったのだった。


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