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ヒーローを追いかけまわすタイプの悪役令嬢に転生してしまったけどキャラ変したいです  作者: 園内かな
事業の成功

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39/97

1.


 スマホの販売は、専用ショップを作ってもらった。このスマホ専用販売店舗で販売をこなす。サポートや相談は有料で請け負うことに決めた。この世界では、基本的に無料サービスなんて無いし、無料相談なんて永遠に相談され続けそうだからやめておいた。


 宣伝は今のところ、やっていない。

 現状、宣伝をするとしたら新聞広告だが、私と新聞の相性が悪すぎる。新聞社にお金を落としたくない。


 それに、評判が評判を呼んでいて、スマホの噂話は大したものだった。

 詳しくは分からないまま、何かすごい魔道具が販売されるという噂が駆け巡っているのだ。

 発売一週間前、販売店舗に発売日のポスターを貼りつけた。これで、スマホという魔道具の発売日だけは分かったはずだ。


 サンポウ商会とロナルドには、ひっきりなしに予約が出来ないかという問い合わせがあるらしい。実は、王宮からまとまった数の予約はあった。そこはやはり、この王国で一番偉いところに花を持たせる必要があるだろう。

 それ以外の人たちには一切予約を受け付けず、忖度なしの本人確認でしか販売出来ないようにする予定だ。


 すぐに問題は勃発した。

 ロナルドからのメッセージにこう書いてあったのだ。


『店舗前に、もう行列が出来てます。どうしましょう』


 まだ発売一週間前だぞ。すごすぎる。

 そんな、今から待機列を形成したって初日に販売する数は決まっているんだから。無理だ。


『列は散らして。並ぶのは、販売当日の朝七時以降ってことに決めましょう』


 宣伝無しなのに、スマホの人気を舐めてた。

 散らしても散らしても、列は出来てしまう。

 それでも、当日の朝から並ばないと買えないという周知を徹底した。

 人気ぶりに改めて、販売方針の会議をすることにした。

 実際、販売と整列に当たるのはサンポウ紹介の人たちだ。

 およそ初めての販売方法になるだろうから、私は細かくレクチャーすることにした。


「まず、七時以前に並ぶ人は一番後ろの列に並ばせることにしましょう」

「それは、どうやるのですか」

「七時に誰か、社員の人が列に並びます。そして、それより前の人は列移動をさせて動かします。一周回って、最後尾に移動させればいいんです。七時以降に並んだ人は、最前列になる方法です」

「なるほど!」


 私は次に本人確認の方法についてもアドバイスをした。


「七時から列を形成した後、並んでいる人と契約する人が同じか、本人確認書類を見ていきましょう。年齢と性別、名前も。ここには顔写真付きの本人確認証がないので、成りすましが簡単そうで警戒ですが」

「魔道具で確認しましょうか」


 そう聞かれて、その手があったかと思う。


「どんな魔道具で確認するの?」

「書類が本物か確認する魔道具です」


 だったら本人確認出来るな! 助かる。


「では、それでお願い」

「本人確認を持っていない人はどうしますか」

「お売り出来ないから列から離れてもらうわ。店舗にも、改めて当日本人確認書類が必要だと掲示しておいて」

「はい」


 それくらいだろうか。考えていると、質問された。


「貴族の子弟が身分を盾に欲しがったら、どうすれば良いでしょう」

「一律お断りしていますって言って、うちの名前を出して良いわ」

「大丈夫でしょうか」


 平民の販売員にとったら、貴族だぞって凄まれると何も言えなくなるのだろう。


「当日、傭兵を雇うわ」

「混雑で混乱したら」

「では、一時間当たりに何台販売出来て、一日ではどれくらいの数になるか調べて。その数だけを売るように、七時以降に並んで本人確認が済んだ人に整理券を渡しましょうか」

「整理券?」

「何時になったらここに戻ってくださいって書いた紙を配布して、店の前では待たせない。整理券を配り終わったら、当日分は完売しましたって看板を出して人を散らす。翌日の販売はまた七時以降の列待機。これを繰り返しているうちに、人気は収まるはずよ」

「なるほど。分かりました」


 ロナルドを始めとする、商会の人たちは分かってくれたと思う。

 私は続けた。


「それから有料付属品のスマホ活動量計だけれど。あくまで測定するだけの器具であって、これ単体では何も出来ないってことを周知徹底でお願いするわ。お勧めもしなくて良いし、高いスマホを売りつけようとするのも駄目。欲しい機能を聞いて、その場合で一番安価なものを薦めると良いわ」

「分かりました」

「では、後はよろしく」


 販売については、私はもうやれることは無いと思う。

 後は、兼ねてから気になっていたことをセルジュ先生に確認しなければ。




 いつものように、公爵家の応接室に法律家のセルジュ先生を呼び出した。私とマドレーヌとの三人だけの話が始まる。


「セルジュ先生、今日は誹謗中傷について聞きたいの」

「先生はおやめください。誹謗中傷、ですか。個人間の誹謗中傷であれば、言われた証拠があれば裁判所に訴えることが出来ます。しかし、手間がかかる割に罪は軽いので、あまり訴える者がいないのが現状ですな」

「やっぱりそんなものなのね」

「そして、エリザベスさまが聞きたいのは、個人間ではなく新聞記事による事実無根の掲載なのではないですか」

「よく分かったわね」


 やっぱり、セルジュ先生も私を分かって、必要な知恵を授けてくれる。ありがたい。

 彼は続けた。


「あの記事を訴えたところで、勝つことは出来ません。相手は常に疑問形など、断定をする記事を掲載しないからです」

「そうなのよね」


 私は最近の新聞で、自分のことが載っている記事を机の上に置いた。


『お騒がせエリザベス嬢、魔道具実験で心臓発作か』

『金満令嬢、美少年と美少女を奴隷化購入の疑惑』


 最後の『か』と『の疑惑』は小さい文字で書かれている。このフォントの差が腹立つわ~。

 内容も、全部『かもしれない』みたいな話で、事実無根の中傷だとは思うが、裁判所ではなかなか認定されなさそうだ。

 セルジュはその記事を眺め、嫌そうに唇を歪めた。


「下劣な記事ですが、庶民が貴人や有名人をあれこれ言うのは当然という風潮です。もしエリザベスさまが新聞社を訴えたら、言論弾圧だと更に批判されることでしょう」

「なるほどね。まあ、新聞記事に関しては分かったわ。いつか、訴えてやろうとは思うけれど」

「……はい」

「一番聞きたいのは、スマホの中で匿名で中傷した場合よ」

「スマホの、中ですか」


 やっぱりセルジュにはネットの世界の話はまだ早かったようだ。

 私は必死に説明しようとする。


「スマホのメッセージ機能、あるでしょう。誹謗中傷はそこで起こるの」

「個人間のメッセージのやり取りで、他人の悪口を言うだけなら、個人の感想ということで逃れられそうですが」

「うーん、そうじゃなくて。不特定多数に向けて発信するメッセージの場が出来る。この先、必ず。そこで、個人が個人の中傷を、誰にでも見られる場で書き込むの」

「どういった場合でしょうか」

「例えば、セルジュ先生を恨んでいる人がいるとするでしょ。昔、やり込められたとか成績で負けたとか、そんなつまらないことでも恨んでいる。そこに、法律関係の議論をする掲示板……、部屋が出来たとします。匿名で、その恨んでる人物はセルジュ先生の悪口を書くわけ」

「そこには、私が存在していなかったら見えませんが」

「セルジュ先生の家族の悪口も書くかもしれない。セルジュの嫁はブスだ、とか」

「私に妻はいません」


 うーん、例えが難しいのかな。全然響かない。

 っていうか、セルジュ先生三十代半ばに見えるんだけどまだ独身なんだ。独身貴族か、女嫌いなのかな。まあ、今その話はするべきではない。

 私は話を元に戻した。


「だから例えばなんです。でももし奥さまが居て、それが噂になって、貴女ブスって書かれてたわよ、なんて耳にしたら気に病むでしょう。立派な中傷です」

「まあどちらにしても、軽微な罪にしかならないし、訴えても徒労に終わるでしょう」

「あー。じゃあ例えを変えます。私がアランさまと結婚したとします」

「例えの話ですね」


 ちょっと面白そうに唇を歪めてるんだけど。笑ってるの?

 今笑うとこじゃないでしょ!


「結婚すると聞いた、アランさまに懸想していた女が私に激しい誹謗中傷をしたとします。あいつは浮気していた、ろくでもない女だ、死ねばいい。殺害予告まであるかもしれません。私は気に病んで衝動的に首をくくります」

「そんなことが起こるでしょうか」

「悪口を書いた人に、その場にいる人全員が賛同して、中傷を繰り返せば書かれた人は気に病むでしょう。本当に自傷する人だって出ると思います。それを止めさせる為の方法を考えてほしいんです」

「新しい場所では、新しい諍いが起こると予想されているんですね」


 セルジュの言葉に、私は頷く。


「おそらくというか、絶対起こると確信しています。匿名だと思って色々書く者は居ます。先ず、一見匿名に見えていても、個人情報は開示出来るので中傷はバレるというところから周知したいわ」

「殺害予告なら中傷ではなく脅迫なので、簡単に開示出来るし警吏に訴えることも可能かもしれません。その辺りから、スマホの中でも表現は現実のものなのだと知らしめるのはいかがでしょう」

「流石! セルジュ先生、素晴らしいわ。そちらの周知も、法的にどうすれば良いかまとめてちょうだい」

「はい。本当にそんなことが起こるのかは、分かりませんが」


 セルジュの言葉に、私は


「ま、その時になれば備えておいて良かったと思うわよ」

 と予言しておいた。


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