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アマンダはお店のカウンターで頬杖をつき、退屈をしていた。

「ねえねえ、ウォルフ。なんか面白いことやって」

「…退屈なのですか」

「ううん。別に退屈なわけではないの。ただ流れる時間が長く感じて、ちょっと目の前で魔法具整理しているウォルフを見るのにも飽きちゃったなって」

「それを退屈というのです」

ウォルフは一つの大きな瓶をアマンダの目の前に持ってきた。その瓶の中にはアマンダの作った『遠め』が大量に入っていた。『遠め』は舐めている間は遠くにあるものが良く見えるようになる飴玉だ。ただしその見た目は目玉のようなのであまり人気がない。

「この間来たお客様のお子様が、この中に『近め』を落としてしまったようで…」

『近め』とは『遠め』と使う魔法陣は似ているが反対の効果があり、近くが良く見えるようになる飴だ。この二つは見た目がとても良く似ており、その違いはわずか数ミリ『遠め』の方が大きいということだ。

「あ、誰か来たみたい。私接客してくるね」

アマンダは誰かが入店したのをいいことに、その場から逃げ出した。


「いらっしゃいませ」

そこにはピンク色の髪と目をした可愛らしい少女と、緑色の髪と目をした爽やかな少年がいた。

「こんにちは」

少女はきょろきょろとあたりを見回し、少年はじっとアマンダの方を見ている。

「あ、同じ文様だ」

少女は一つの魔法具の魔法陣を見て、そう呟いた。魔法陣にはオーラと属性、その魔法陣を描いた魔法使いの文様が描かれている。これにより魔法陣は個々の選別をし、その者が叶えたい魔法の効果を発揮する。文様は家族内で共有されるものもあり、これを家紋とする家もある。魔法陣の発動は描き方を変えれば、本人でなくとも発動できるようになるため、魔法屋はその方法を用いている。

「あれ、シン君じゃないですか。お久しぶりですね」

その時、瓶をもったままウォルフが店の奥から顔を出した。

「あ、あの時の店員さん」

「あとあなたは聖女…たしかヒカリ様でしたっけ」

ウォルフは無表情に彼女を見た。彼女の人となりは知らないが、知りたいとも思わないくらい、ウォルフは彼女にいい印象を持っていなかった。

「ウォルフ、ちゃんと笑って。お客様だよ」

アマンダは小声で注意し、二人に向きなおり笑顔で挨拶をする。

「失礼しましたお客様。今回はどのような商品をお求めでしょうか。魔法具開発担当のこのアマンダが、お客様のご希望に沿えるようサポートさせて頂きます」

「あなたがこの魔法具たちを開発したんですか?」

するとそれまで黙ってアマンダを見ていた少年が口を開いた。黒髪黒目の魔女を初めてみたのなら、この反応も無理はないだろう。逆にこの少女はすごいな、私のことガン無視か。と心の中で思っていたアマンダは、先ほどと一転してきらきらとした目を向けてくる少年に面食らった。

「…ええ、そうですが」

アマンダがそう答えると、少年はより一層目を輝かせた。

「ほんとですか!!あ、会っちゃった!は、初めまして…僕はシン・アンダーウッドと言います。ええっと…その…好きです!」

今度はアマンダだけでなく、ヒカリとウォルフも面食らった。

「ああっ、間違えました!そうじゃなくて…あなたの魔法具が好きです!!」

うわっ、言っちゃった…と女子のような反応をする少年とは対照に、周りは金縛りにあったように固まっている。

「…そ、そうですか。ありがとうございます…」

最初にその金縛りが解かれたのはアマンダだった。戸惑いながらも笑顔で答える。

「なんかあの時のゆうちゃんを思い出すわ…」

ヒカリはこの世界に来る前の1人の友人を思い出していた。彼女に連れられて何かの物販会にいった時、彼女もこんな反応をしていた気がする。

「…」

ウォルフはシンのことを黙って見ていた。


「あなたの商品は本当にすごいです。この間買わせて頂いたこれも…」

それからはシンの永遠かとも思える演説が続いた。さすがに耐えきれず、ヒカリは口を挟んだ。

「そういえば、その『回復瓶』の効力が切れたから買いに来たんじゃなかったっけ?」

「そういうことであれば、割引しときますね」

アマンダは『回復瓶』をすっとシンから受け取り、奥へと持って行った。

「そういえばウォルフさん、先ほどから何を持っているんですか?」

ヒカリは何やら衝撃的な見た目の瓶を持っているウォルフが気になりそう質問した。

「これは…」

ウォルフは魔法具の説明をした。

「私の世界でもこういうお菓子あったけど…近くで見るとやっぱすごいな…」

「1つ試して見られますか?その飴で見た空の景色は、とてもきれいなんですよ」

先ほど私の魔法具を褒めていただきましたし、サービスです。そう言って、アマンダは飴をつまみヒカリとシンに差し出した。

「ありがとうございます」

2人は外へと出て飴を食べてみた。

「飴を食べたら見たい方向を見て、調節をしてください。舌の上で飴を転がせばより遠くが見えるようになりますので、見たいところにきましたら、舌の上で転がすのをやめてください」

「ほんとだ!空ってこんな風になっているんだ!」

「え?何にも見えないよ?」

空を見て歓声を上げるシンと、首をかしげるヒカリ。

「ちょっと待って、なんか気持ち悪い…ミミズみたいな…うようよ…」

そう言うとヒカリは倒れた。

「もしかして…」

ヒカリの口からポロリと出てきた『遠め』は普通の『遠め』よりだいぶん小さかった。

「あちゃ~」

アマンダは額に手を当てるのだった。


ウォルフがヒカリを抱き上げ店の奥へ連れていき、アマンダが看病をしている時、シンは食べていた飴を吐き出し、アマンダから渡された紙に包んでいた。

「アマンダ様を狙うなら、その時は私のことをお忘れなきように」

店の奥から出てきたウォルフは冷たい声で言った。

「そんな…!あれは言い間違いで!本当にすみません…」

項垂れるシンの姿をウォルフは無表情で見下ろしていた。

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